審査員会見
TOKYO FILMeX ( 2014年11月29日 16:20)
11月29日、有楽町朝日ホールスクエアで第15回東京フィルメックスの審査員会見が行われ「タレンツ・トーキョー2014」の受賞作を除く各賞が発表された。
はじめに、市山尚三東京フィルメックス・プログラムディレクターより、学生審査員の清水俊平さん・大河原恵さん・千葉花桜里さんが紹介され、清水さんより学生審査員賞が発表された。受賞したのは『彼女のそばで』(アサフ・コルマン監督/イスラエル/2014)。「ハンディによる姉妹の強烈なクロースアップと突き放すような俯瞰のロングショットは、互いに献身し合うようにして二人の息苦しいまでに愛おしい距離感を描き出し、両者のかけがえのない関係性を見事に炙りだした」と授賞理由が述べられた。コルマン監督は残念ながら帰国されていたが、会場からは大きな拍手が送られた。
続いて、市山PDより観客賞が発表され『プレジデント』(モフセン・マフマルバフ監督/グルジア、フランス、UK、ドイツ/2014)が受賞した。マフマルバフ監督は来日が叶わなかったが、この受賞は監督の元へ伝えられた。
次に、柳島克己審査員よりスペシャル・メンションが発表された。受賞したのは、『シャドウデイズ』(チャオ・ダーヨン監督/中国/2014)。柳島審査員は「監督が映画と社会との緊密な関係を描くことに全力を傾けていることに深く感銘を受けた」と讃えた。チャオ監督は「このような形で認めていただき、今後も映画を撮り続けていく自信が持てた。良い映画を皆さんに届けることは私が人生に求めるものだし、目標でもある」と喜びを語った。
最優秀作品賞の発表へ向け会場の期待感が徐々に高まる中、柳島審査員より審査員特別賞が発表された。『彼女のそばで』(アサフ・コルマン監督/イスラエル/2014)が学生審査員賞に続き受賞し、副賞として賞金30万円が授与された。柳島審査員は「力強く感動的な作品」と称し「全編にわたって保たれた"適切な距離感"に、その素晴らしい手腕が発揮され、親密な姉妹の間に見られる興味深い関係を見せてくれた」と、初監督作品にも関わらず監督の熟練味あふれる行き届いた演出力を高く評価した。
最後に、リチャード・ローマンド審査員より最優秀作品賞が発表され、ワニに襲われた娘の遺体を探す母親の姿を通し、フィリピン南部の湿地帯に暮らす人々の生活とその直面する問題点を描き出した『クロコダイル』(フランシス・セイビヤー・パション監督/フィリピン/2014)が受賞した。副賞は賞金70万円。ローマンド審査員は「この作品は時を超越した場所へ私たちを誘い、そこで私たちは心温かい人々の生活に遭遇した」と述懐し「この作品の強さは、実直で一貫性をもった監督のスタイルと、キャストの生き生きとした表現力にある」と称賛した。驚きと興奮を抑えきれない様子でマイクを手にしたパション監督は「本作は実話に基づいた物語。皆さんにマノボ族やこの地域について知っていただく機会になったのではないか。この地の環境・文化・美しさを守りたいという意識を共有できたと思う。賞金の一部は、モデルとなった家族、そしてアグサンのコミュニティに送りたい」と喜びを語ると、会場からは大きな拍手が送られた。
ジャ・ジャンクー審査員長は「コンペティションに参加した9本の作品はとてもレベルが高く、どの作品からも啓発された。これらの作品を観ることで、社会状況や人と人との関係性などをより深く知ることができた。若い監督たちのモノの見方、映画の新しいスタイルを知ることができた」と総評した。また、東京フィルメックスについては「とても有意義な時間を過ごすことができた。映画制作者や観客が出会い、語り合い、気持ちを通わせ、お互いを理解する場として非常に大きな役割を果たしている。これからもアジアの新しい才能のために、より良い功績を果たすことを願います」と、本映画祭に対する感謝と期待を述べた。
質疑応答では、まずスペシャル・メンションを選出した理由について問われると「アジア地域で映画を撮り続けている若い監督への激励の意味を込めた」と、ジャ審査員長。私たちが直面している社会と映画が、今後離れていってしまうのではないかと危機感をもっているという。これからも社会との関係性を緊密に保ちながら映画制作を続けていってほしい、という願いを込めたと語った。
審査方法については、審査会議まで作品の意見交換は行わず、会議が始まった段階で各審査員が2・3作品を選出して意見を出し合ったという。それを基礎にして、議論を進め、最終的に全員一致で意見をまとめたそうだ。ローマンド審査員は「ふたを開けてみたら、多くの意見が共通していて非常に平和的に議論が進んだ」と振り返った。
最後に受賞者と審査員の記念写真を撮影し、第15回東京フィルメックスの審査員会見が終了した。
(取材・文:小嶋彩葉、撮影:穴田香織、関戸あゆみ)
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