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『この映画を観れば世界がわかる』刊行記念トークイベント


TOKYO FILMeX (2014年11月21日 19:00)

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今年、第15回を迎える東京フィルメックスは、初の単行本『この映画を観れば世界がわかる~現在を刺激する監督たちのワールドワイドな見取り図』を刊行した。刊行を記念して、11月19日(水)、ゲストに市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターを迎え、今年の東京フィルメックスの見どころなどを紹介するトークイベントがMARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店にて開催された。聞き手は、共同通信社編集委員の立花珠樹さん。


まず、立花さんが市山PDの経歴について触れ、市山PDが東京フィルメックスを創設する前の話を聞くことに。市山PDは1987年に松竹に入社。大学時代に蓮實重彦さんの映画ゼミを受講し、作る人の目線から作品を分析するかのような授業に感銘を受け、それが映画にのめりこむきっかけになったという。80年代後半から日本映画界は厳しい状況におかれ、外部プロダクションとの連携なくしての映画製作は困難だった時期。市山PDが本格的に製作に関わるようになったのは、そうした外部プロダクションとの連携部署に配属されてから。ただ、当時の松竹では、奥山和由プロデューサーのもと、他社出身の監督を積極的に起用したさまざまな試みが行われ、新しい気運も生まれていた。そんな中で、市山PDにとって転換点となった作品が、北野武監督の初監督作『その男、凶暴につき』(89)だという。


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「(現場を見ながら)こんなすごいことがあるのか。映画を作っている間に、監督が独自の映画スタイルを確立してゆく。こういうことがあるなら、この世界は面白いと思いました」と市山PD。それに対して立花さんも、「映画の現場を取材していると、現場には魔法のようなものがあって、いい映画ができるときは錬金術のようなことが起こる」と応じ、ともに制作現場の底知れない魅力を称えた。


市山PDが最初にプロデューサーとして手がけた作品は、竹中直人監督の『無能の人』(91)。この作品で特記すべきことは、当時、川喜多記念文化財団に在籍していた林 加奈子(現・東京フィルメックスディレクター)を通じて、ヴェネチア国際映画祭の批評家週間に選ばれたことだとか。今でこそ、多くの日本映画が当たり前のように海外の映画祭で上映されているが、映画祭に対する意識が低かった当時、いざ映画祭へ出品しようとすると宣材費など経費の捻出に頭を悩ませたという。結果的に、『無能の人』は、国際批評家連盟賞を受賞し、興行的にも成功した作品になったそうだ。この後、市山PDは東京国際映画祭へ出向。アジア映画部門の選定を担当し、そこで映画祭に深く関わることになり、2000年には東京フィルメックスを立ち上げる。


立花さんから東京フィルメックスという映画祭名称の由来を尋ねられると、「マルコ・ミューラー氏(現・ローマ国際映画祭ディレクター)、モフセン・マフマルバフ監督(今年の東京フィルメックスにて『プレジデント』を上映)とともに3人でカンヌのレバノン料理店で食事していた時に決めました」という秘話を明かしてくれた市山プロデューサー。ミューラー氏の発案であるが、"ex" を含む "exhibition"、"extraordinary" 、"excellent" などの単語には、ポジティブで、広がっていくイメージがあるため、"film" に "ex" を付けたそうだ。


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東京フィルメックスを立ち上げるにあたっては、コンペティション部門を設けることは最初から決めていた。コンペティションの結果には注目が集まりやすく、映画記者にすべての作品を観てもらうことができる。賞金は多くは出せないが、たとえ少額であっても受賞は若手映画作家の励みになる。また、対象をアジアの若手監督に限定したのも、東京国際映画祭での経験を踏まえて、アジアには優れた映画作家がいるという確固たる感触があったからだという。コンペティションでは必ずしも芸術的な作品ばかりを取り上げるのではなく、一見すると娯楽映画であっても、作家のスタイルや作家が作りたいものが見出せればコンペティションに組み入れることもあり、商業映画を排除しているわけではないとのこと。


ここで15回目を迎える東京フィルメックスを振り返ることに。映画祭の規模としては大きくない東京フィルメックスでは、コンペティションの審査委員長に錚々たる顔ぶれが並んでいることを立花さんが指摘すると、これはひとえに市山PDや林Dの人脈が駆使されていたからできたとのこと。審査委員の顔ぶれは出品する若手にとってもモチベーションとなる。実際に東京フィルメックスをステップにして飛躍した監督も少なくない。例えば、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の場合、長編第一作目の『真昼の不思議な物体』(00)を第1回東京フィルメックスで紹介し、第3回と第5回では『ブリスフリー・ユアーズ』(02)、『トロピカル・マラディ』(04)がそれぞれ最優秀作品賞を獲得。その後、カンヌ国際映画祭で『ブンミおじさんの森』(10, 第11回東京フィルメックスオープニング作品)が最高賞のパルムドールに輝いた。「フィルメックスがステップアップの機会になっているのかどうかはわかりませんが優れた監督を発見したら他の映画祭などに推薦したりするなど、そういうことが映画祭の責任であり使命だと思っています」と、市山PDは映画祭のあるべき姿を謙虚に語った。


さらに、ジャ・ジャンクー監督について話が及んだ。第7回東京フィルメックスでも上映された『長江哀歌』(06)に感銘を受けたという立花さんは、「この作品を通じて、今、中国で何が起こっているのかということがわかり、まさしく"この映画を観れば世界がわかる"という一例だ」と述べた。そして、ジャ監督と親交の深い市山PDに、ジャ監督との関わりと作品について聞くことに。市山PDは、ジャ監督の卒業制作の『一瞬の夢』(1997)をベルリン国際映画祭で観て驚き、偶然にもバーでジャ監督と会う機会があって話をしたところ、ちょうど『プラットフォーム』(00)を準備中だったジャ監督が、資金繰りに困っており、海外のプロデューサーを探しているところだと話してくれたのが、最初の出会いだったそうだ。『プラットフォーム』に始まり、『青の稲妻』(02)、『世界』(04)、『四川のうた』(08)、『罪の手ざわり』(13、第14回東京フィルメックスで上映)と続けて市山PDがジャ監督作品のプロデューサーを務めてきた。今年の東京フィルメックスでは、ジャ監督にウォルター・サレス監督が密着したドキュメンタリー『ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子』がサプライズ上映されることになり、多くの期待が寄せられている。


立花さんは、観る者の立場から映画について伝えるという形で映画に関わってきた。その上で大切にしているのは、かつて淀川長治さんから教わった言葉だという。「いい映画には必ず3つのことがある。働くこと、愛すること、そして勇気を持つこと、それが人間の姿。ユーモアも大事だが、日本人はちょっと欠けている。そして、いい映画には必ず庶民の生活が描かれていて、そこに今がある。今の映画を見なければいけない」。ジャ監督の作品には、一貫して中国で現在起きている問題が庶民の目線で描かれており、淀川さんの言葉と合致する。


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さて、ここからは、コンペティション部門審査員を務める、東急文化村美術・映像事業部プログラミングプロデューサー中村由紀子さんも合流され、今年の東京フィルメックスの見どころについて語ってもらうことに。


コンペティション部門の見どころについて訊かれると、市山PDは「どれを観ても面白いので、観てくださいとしか言いようがないのですが」と選定に自信をのぞかせながらも、例として東京フィルメックスで初めて紹介するヨルダン作品『ディーブ』を挙げた。これまでイラン、トルコ、イスラエルの3か国が主流だった中近東映画事情は、アラブ諸国がオイルマネーを文化活動に投資するようになって変化してきているという。近年、アブダビ、ドバイ、カタールで開催される映画祭が互いに競い合い、ワークショップを開催したり助成金を出したりし始めたことにより、これまで映画の不毛地帯と言われたアラブ地域から新しい作品が生み出されているそうだ。


また『扉の少女』について、主演のペ・ドゥナさんご本人自ら映画祭に参加したいとのご希望があって、今回の来日およびQ&Aへの登壇が決まった経緯が紹介された。『扉の少女』のプロデューサーであるイ・チャンドン監督の『オアシス』(02、第3回東京フィルメックスで上映)に衝撃を受けたという中村さんは、「若い監督の作品を発掘してすぐに興行に結びつけることはリスクが高いが、自分にとっても新たな発見ができるチャンスにしたい」と、審査への意気込みを語った。


次に特別招待作品について。まず、オープニング作品でジャパンプレミアとなる塚本晋也監督の『野火』は、市川崑監督の『野火』(1959)のリメイクではなく、大岡昇平さんの同名小説を原作としながらも全く別の視点で描かれたものだという。クロージング作品の『マップ・トゥ・ザ・スターズ』では、ハリウッドの暗黒面がデヴィッド・クローネンバーグ監督独特のスタイルで撮られており、いろいろな意味で楽しめる作品とのこと。ツァイ・ミンリャン監督の『西遊』は、ある種の実験映画とも言える内容だが、DVDではなく大きなスクリーンで観るべき作品だとか。


今年の特集上映「1960-破壊と創造のとき」は、デジタル4K修復版『青春残酷物語』(60)がカンヌ国際映画祭で紹介されたことから始まり、同じ1960年に制作された松竹ヌーヴェルヴァーグと呼ばれる作品群から、これまでクローズアップされることのなかった映画作家を中心に取り上げた企画である。高橋治監督の『彼女だけが知っている』は、日本映画としては早い時期にジャズを取り入れた洋画風の垢抜けた作品で、DVDも出ていない。続く第2作『死者との結婚』ともども、見逃せない作品とのこと。また、『武士道無残』は時代劇のヌーヴェルヴァーグと言われ、『切腹』、『武士道残酷物語』など、その後続々と登場する武士道の不条理を描いた作品群の先駆けとなった作品。森川英太朗監督の作品はこれ1本しかないそうだ。


最後に、市山PDからの挨拶。「映画がいろいろな手段で観られるようになり、映画祭はなくなってもいいのではないかと言う人もいます。フィルメックスの良いところは、会場がひとつしかないこと。監督も俳優もフィルメックスに来ている人たちみんなが、そこに集まっている。そうした雰囲気は映画祭でしか味わえないので、ぜひ足を運んでみてください。そして文句があったら言いに来てください」と、熱いトークに聴き入っていた会場から笑いを誘って、締めくくった。


市山PDは、単行本『この映画を観れば世界がわかる』について、「プロのライターの方々が書かれる文章には及ばないとは思うが、全ての文章がこの映画は是非とも紹介すべき、書くべきと思って書いたものです」と語った。ぜひ一度、手に取ってその思いを感じてほしい。東京フィルメックスの会場で、限定数で販売を予定している。
第15回東京フィルメックスは11月22日から30日まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇で開催され、また連動上映はヒューマントラストシネマ有楽町にて11月29日から12月2日までレイトショー上映される。


(取材・文:海野由子、撮影:村田まゆ)

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