学生審査員による座談会
TOKYO FILMeX ( 2014年11月18日 23:52)
今年で4回目を迎えた学生審査員賞。国際審査員により決定される各賞とは別に、東京学生映画祭が選任した3名の学生審査員による審査を経て、1作品に賞が贈られる。今年の学生審査員は第26回東京学生映画祭実写部門グランプリ『ふざけるんじゃねえよ』を監督した清水俊平さん(東京芸術大学大学院映像研究科)、同本選出場作『襟売ってよ』を監督した大河原恵さん(多摩美術大学3年)、同映画祭企画委員代表の千葉花桜里さん(日本大学3年)。これに同映画祭企画委員会の菅原澪さん(日本女子大学1年)を加えた4名に、映画との出会いやフィルメックスへの期待など、東京フィルメックス事務局でざっくばらんに語ってもらった。
――みなさん、映画を見るようになったきっかけはどんなことだったのでしょう?
清水「元々、両親が映画好きで。2歳から8歳までフランスで育ったんですが、90年代のフランスって、国営放送でいい映画をよく放送していたんです。僕が5歳ぐらいの時には、リュック・ベッソン監督の『グラン・ブルー』(88)、ジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(89)やハリソン・フォード主演の『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)とか...それを両親と一緒に見る習慣があって、映画好きになりました」
大河原「中学生から高校生の頃にラジオドラマを聞いていたんですが、その声を"誰がやっているんだろう?"と気になって、その役者さんを追いかけるように映画を見始めました。でも、気が付いたらラジオドラマで声をやっていた人はその役者さんではなかったんですけど(笑)」
千葉「私の両親が良く映画を見ていて、小さい頃から常に映画が流れている状態で育ったので、自然と映画を見るようになり今に至る、という感じです」
菅原「両親の影響で、小学生の頃から毎日のように木村拓哉さん主演のものとか、色々なテレビドラマを見ていました。映画を見始めたのがいつ頃かは、はっきり覚えていないんですけど、最初の頃はドラマが2時間になったのが邦画というイメージでしたね。今も、好きな俳優さんが出ている映画を中心に見ています」
――みなさん、ご両親の影響を仰っていますが、一緒に映画を見に行った思い出などはありますか?
清水「僕、最後に親と一緒に行ったのが13年前なんですけど、その時見たのが青山真治監督の『EUREKA ユリイカ』(00)です」
一同「ええっ?!(笑)」
清水「すごく見たかったんですが、お金がなかったので"すごくいい映画がある。これは親子で見ないといけない"って高校1年生の時に両親をダマして行きました。父親はいわゆる"ポップコーンムービー"と勘違いして、あんまんとか買って来てました。見終わった後は、ちょっとお通夜みたいな感じになりましたけど(笑)」
千葉「最後に親と一緒に行ったのが小学生の時で、地元の駅にある映画館で『ハウルの動く城』(04)を初日に見て、カッコいい木村拓哉さんの声を聞いてました」
――いつごろから映画を自分で作ろうと思うようになったのですか?
清水「僕は大学では映画の研究をしましたが、就職して映画とは全く関係ない会社で働いていました。そうしたら、25、6歳の時に、東京藝大の大学院に行った友だちが映画監督としてデビューしたんです。僕が知っている頃はあまり映画を撮っている印象はなかったんですが、それを見たら"やっぱり撮らなきゃダメだな"と思い、多摩美大に1年通ってから、東京藝大の大学院に入り直しました」
大河原「作りたいということもあるんですが、演じる方と両方やりたくて映像演劇学科に入りました。1年生の頃に5分ぐらいの作品を撮ったことはあるんですが、50分という長さの作品は東京学生映画祭で上映された『襟売ってよ』が初めてです」
菅原「私は今まで映画を見てきて、あの中に入りたいな、という気持ちになって。大学の映画サークルに入っているんですが、まだ1年生なので、先輩の作品に出演している状況です。ゆくゆくは自分で監督もしたいと思っています」
――普段よく行く映画館はどこですか?
清水「ヒューマントラストシネマ有楽町とか多いですね。シネコンだと品川のプリンスホテルとか。家は神奈川県の鎌倉市なんですけど、元の職場が日本橋にあった関係で、よく都心で映画を見ています」
大河原「家が新宿に近いので、高校の時はバルト9や新宿ピカデリーに通ってました。今日初めて目黒シネマに行き2本立てを見られることを知ったので、通おうと思っています」
菅原「近所にシネプレックス幕張があるので、よく行ってました。大学生になるまで、東京の映画館に行ったことがなくて...最近になって、都内にこんなに映画館があるのかと驚いています」
千葉「家も大学も千葉県なので、近場のイオンシネマなどに行くことが多いです。東京にはあまり来ないですね」
――好きな監督や作品などはありますか?
清水「グザヴィエ・ドランは、もうただただすごいなと思って...普遍的なテーマで、ワンシチュエーションで、お金をかけないでエンターテインメントに落とし込めるというのはすごいです。25歳ですよね」
大河原「私は犬童一心監督の『メゾン・ド・ヒミコ』(05)とか、三木聡監督の『インスタント沼』(09)が大好きです」
千葉「去年、フィルメックスで見てから、自分の中でアジア映画がジワジワきてます。去年の学生審査員賞受賞作『トランジット』のハンナ・エスピア監督のその後とか、すごく気になってます。アニエス・トゥルブレ(アニエスベー)監督の『私の名前は...』などは、帰りの電車でもずっと引きずるぐらい衝撃を受けました。気になる方は沢山いるんですけど、時間が足りないです」
菅原「大学生になるまではずっと邦画を見ていて、洋画は全く手が付けられませんでした。邦画で好きなのは、私も『インスタント沼』ですね」
――今まで、フィルメックスで映画を見たことはありますか?
清水「フィルメックスって、好きな映画祭なんです。すごくトンがった映画を上映する印象があって。ヤン・イクチュン監督の『息もできない』(08)も、最優秀作品賞を受賞して劇場公開されましたよね。今まではあんまり来られなかったんですけど、フィルメックスで賞を獲った映画は、DVDなどで見るようにしていました」
大河原「去年初めて、審査員特別賞を受賞した『ハーモニー・レッスン』を見に行きました。その時はもっと見たいと思いながら、それだけしか見られなかったので、今回は楽しみにしています」
千葉「学生審査員の世話係を務めた去年は、16本見てヘトヘトになりました。中村登監督の特集上映で衝撃を受け、『夜の片鱗』(64)には感情移入しすぎて、学生審査員の3人が心配するほどでした(笑)」
――期待する作品などありますか?
清水「コンペで、僕と同年代の29~30歳ぐらいの監督もいると思うんですけど、そういう人はすごく気になりますね。『クロコダイル』のフランシス・セイビヤー・パション監督とか。」
大河原「特別招待作品の『さよなら歌舞伎町』の予告編を見て気になっています」
――学生審査員に対する意気込みをどうぞ。
清水「頑張る、としか言えないですね。なかなかない機会を与えていただいたので、しっかり、見て、悩んで、選ぶということにトライして、いい形で終えるという気持ちで望みたいです」
大河原「みんなで9本同じ映画を見て議論するという機会は滅多にないので、それを楽しみたいですね」
千葉「学生審査員の世話係を務めた去年は"大人をギャフンと言わせたい"と言っていたんですが、立場が変わった以上は、"これは"という作品を沢山の人に知ってもらえるように頑張りたいです」
菅原「私は審査員ではありませんが、この機会に映画についてまた違った見方ができるようになるのではないかと楽しみにしています」
――その他、PRしておきたいことなどあれば。
大河原「大学の上映会"たまふぃるむ2015"が来年の3月6、7、8日に渋谷の映画館で開催されます。また新作を撮ったので、今編集中です」
清水「藝大では脚本を専攻しているのでなかなか監督をする機会はないのですが、今、脚本を書いていて、それがうまくいけば来年、劇場公開されるかもしれません」
菅原「第27回東京学生映画祭が2015年5月29日(金)~31日(日)の3日間で開催されます。企画委員も作品も募集中です!よろしくお願いします!」
(取材・文:井上健一)
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