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『クズとブスとゲス』舞台挨拶、奥田庸介監督Q&A


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11月22日、有楽町朝日ホールでコンペティション作品『クズとブスとゲス』が上映された。本作は、25歳の時に『東京プレイボーイクラブ』で商業映画デビューを飾った奥田庸介監督4年ぶりの長編第2作で、麻薬の密売人や前科者の青年とその恋人、ヤクザなどが織り成すパワフルな群像劇。上映前には奥田監督、出演者の岩田恵里さん、板橋駿谷さんが舞台挨拶に登壇。上映後には奥田監督を迎えてのQ&Aが行なわれた。

舞台挨拶を経た上映の後、拍手に迎えられてQ&Aに登壇した奥田監督は、商業公開された『東京プレイボーイクラブ』に続く本作が自主製作となった経緯を説明した。『東京プレイボーイクラブ』以降も自分のオリジナル脚本で自分が監督するスタンスを貫こうと奔走したものの、なかなか映画を撮るチャンスに恵まれなかったという。様々なエピソードを語る言葉の端々に、その間の苦労や悔しさが滲んだ。そんな時、会社員をしているお兄さんに「映画を撮りたい」と話したことから、お兄さんがプロデューサーを引き受け、クラウドファンディングを利用した制作が始動。「映画のド素人のうちの兄貴がプロデューサーでスタートした企画です」奥田監督がこう述べると、客席にいた兄の奥田大介さんに大きな拍手が贈られた。

1122kuzu_02さらに奥田監督は、本作で監督だけでなく、暴力にしか生きられない男を演じて俳優としても強烈な個性を放っている。監督兼主演ということでクリント・イーストウッドを思い起こしたという観客からの指摘に対しては「俺の場合、イーストウッドというよりは、シルベスター・スタローンの『ロッキー』シリーズを見て凄いと思った」と返答。最初は主演するつもりはなく、「サミュエル・L・ジャクソンが演じたらいい」などと言っていたものの、10代の頃から一緒にやっているスタッフから「あんたやるしかないよ」と言われ、主演を決意。「俺がやるなら、俺の身体なんて頑丈さが取り柄みたいなものだから、CGじゃできない、本物の血を流して本当に当ててやってやろうじゃないかって、そんなエンジンはかかりました」

そんな奥田監督演じる男を追い込むヤクザを、凄みの効いた芝居で演じているのが芦川誠さん。「役者を探す時、プロデューサーが“俺の知り合いに芦川誠っていう人がいるんだけど”って」芦川さんが北野武監督の映画などで活躍する俳優だと知っていた奥田監督は、すぐにこれを承諾。人の縁がきっかけで、見事なキャスティングが実現したことを明かしてくれた。

1122kuzu_03本作の見どころの一つに強烈なバイオレンスシーンがあるが、それをより印象付けているのが音。殴り合いの場面などでは、その音がリアルな痛みを実感させる。「ほとんどは実際に芝居する時に殴った音を、編集で(音量を)上げていると思います」

なお劇中では、登場人物が誰一人、名前を呼ばれる場面がない。「最近の映画は、名前とか固有名詞とかで話を転がしていくんですけど、本来映画って、映像を見てわかるものだと思ってて、極力そういう情報は省きたかったんです」シナリオの段階から登場人物に名前を付けなかった意図をこう語った。

客席から寄せられた様々な質問に対して、気取らない言葉で率直に答えてくれた奥田監督。最後に「一言いいですか」と前置きして、1週間後が誕生日という客席の母親に向かって「ハッピーバースデー!」と言葉を贈ると、場内は大きな拍手に包まれた。

『クズとブスとゲス』は、現時点で劇場公開は未定。この上映をきっかけに、才気あふれる奥田監督のこのパワフルな作品が、より多くの観客の元へ届くことを願いたい。

(取材・文:井上健一、撮影:明田川志保、穴田香織)

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