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『洲崎パラダイス 赤信号』トーク(ゲスト:寺島進さん)
from デイリーニュース2011 2011/11/19
11月19日、第12回東京フィルメックス開催初日、東劇では川島雄三監督特集上映『限定!川島パラダイス♪』 が幕を開けた。 上映された『洲崎パラダイス 赤信号』(56)は、歓楽街"洲崎パラダイス"に流れ着いた男女の離れるに離れられない関係が、歓楽街へ出入りする人物たちとの関わりの中で詩情豊かに描かれている。上映後には俳優の寺島進さんを迎え、林 加奈子東京フィルメックスディレクターとのトークショーが行われ、川島作品の魅力について語られた。
寺島さんは「とにかく最高の一言。もっと早く作品を観ておけば、主演の(故)三橋達也さんに色々と伺えた。何より自分もこの作品に参加したかった!」と興奮気味に語った。また、林ディレクターからは、作品冒頭シーンで登場する勝鬨橋について説明がされた。勝鬨橋は1933年(昭和15年)に隅田川にかかる可動橋(跳開橋)として建設され、1968年(昭和43年)までは路面電車も走っていた。林ディレクターと寺島さんが、偶然にも「実は隅田川を挟んで近い場所に住んでいた」という意外なエピソードも紹介された。
登場人物について話題が及ぶと「冒頭シーンから三橋達也さんと新珠三千代さんの演技が素晴らしい」と絶賛の寺島さん。「特に元々宝塚歌劇団の娘役として活躍していた新珠さんには、汚れ役のイメージがない。なのに、絶妙なバランスで着こなされた着物姿には昔の祇園の女性を思い出させてくれる」と感動した様子で語った。もし本作品をリメイクしたなら「ぜひ宝塚出身の女優さんにお願いしたい!」と話すと、会場からは笑いも起こる一幕も。
ここで林ディレクターより特集上映の主旨として、川島雄三監督作品が海外での知名度がまだ低いことを挙げ、そのプロモーションも兼ねていることが説明された。「実は、海外では昔の日本映画の中に眠るお宝への関心が高く、まだまだ驚かせてくれる作品が沢山あると認識されており、小津・黒澤だけではない日本映画の魅力を紹介していきたい」と林ディレクター。
「この『洲崎パラダイス』と『愛のお荷物』(55)を合わせて見ると、三橋さんの演技力の幅広さを感じさせてくれる」と両人。林ディレクターからは「脇を固める轟夕起子さん、小沢昭一さんの川島ファミリーとも言える程の演技の奥深さ」が語られ、「今の自分たちよりも大人で、俳優としてのレベルも高くいい刺激になる」と寺島さん。
また、1950年代東京の情景についても話題が及び「青森県出身の川島監督が切り取った当時の東京の風景も本当に素晴らしい。洲崎は現在の江東区東陽1丁目近辺。当時の秋葉原電気街や、周囲に高層ビルがない日本橋三越デパートなど、とにかく東京の空の広さが見えていて素晴らしい。また売春防止法の制定など、エンタテインメントだけでなく社会風刺にもポイントが置かれているのも、川島作品の魅力のひとつ」と林ディレクター。また寺島さんからは「祖母が洲崎界隈で小料理屋をしており、母親が手伝いに行っていた」というエピソードも語られた。
さらに川島監督の演出方法には「テンポの良さ、スピード感を大事にしていた」と林ディレクターが話すと、寺島さんが「全てにおいてきちんと仕込んでいないと出来ないこと。出演者の間の取り方は相当のレベル」と話し、第12回東京フィルメックスで審査員を務める篠崎誠監督が以前、三橋さんと引き合わせてくれたというエピソードも披露した。「2001年の毎日映画コンクール授賞式で、40年ぶりに三橋さんが男優賞を受賞された時に『自分も40年後に受賞できる役者を目指します』とスピーチしました(※三橋達也さんは1966年『女の中にいる他人』(成瀬巳喜男監督)で男優助演賞を、2001年『忘れられぬ人々』(篠崎誠監督)で男優主演賞を受賞。2001年に寺島さんは『みすゞ』『BROTHER』『空の穴』で男優助演賞を受賞した)。今思えばもっと早く『洲崎パラダイス 赤信号』を観ておけば、当時の映画の作り方やあのシーンでの演技のことを色々と伺えたのに」。川島作品からは「役者としての"愛のお荷物"を貰えたというか、人間が持つジェラシーのいい意味での心地よさを見せて貰えた」と寺島さんは語り、トークイベントは終了した。
『限定!川島パラダイス♪』では11月25日まで、計4作品を東劇にて上映する。『洲崎パラダイス 赤信号』は25日10:00から、再度上映される。
(取材・文:阿部由美子、撮影:米村智絵)
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