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東京フィルメックス・コンペティション






『カラオケ・ガール』 Karaoke Girl / SAO KARAOKE
タイ、アメリカ / 2012 / 77分
監督:ウィッサラー・ウィチットワータカーン (Visra VICHIT VADAKAN)

【作品解説】
ウィッサラー・ウィチットワータカーンの監督デビュー作『カラオケ・ガール』は、ナイトクラブでホステスとして実際に働いていた女性を主役に起用し、彼女の日常生活をフィクションとドキュメンタリーを交えて描いた作品である。田舎の村で育ち、15歳の年に都会に出稼ぎにやって来たサー。3年間工場で働いた後、彼女は田舎の家族を養う唯一の手段として、夜の世界に身を投じた。ウィチットワータカーンは数週間をサーとともに過ごし、姉妹のような関係を築いた後、脚本の執筆を開始したという。久しぶりに故郷の村に戻ったサーが都会で働いていた時とは全く異なる表情を見せる瞬間が感動的だ。ロッテルダム映画祭コンペティションで上映。








ウィッサラー・ウィチットワータカーン (Visra VICHIT VADAKAN)



米国スタンフォード大学で生物学と文教政策を学び、卒業後はタイ政府のシンクタンクで働く。その後ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部で映画を学び、卒業。 短編監督作品"Fall"(08)、"rise"(09)、"In Space"(10)が、ロッテルダム、カルロヴィヴァリ、トライベッカ、オーバーハウゼンなどの映画祭で上映された。本作『カラオケ・ガール』が長編デビュー作である。

【コメント】
『カラオケ・ガール』は、タイ農村の家族を支える必要に迫られたバンコクの若いホステスを、彼女の日常の姿を通して繊細なニュアンスで描いている。複雑な都会生活の現実と子供時代の回想と共に映画は進んでいく。フィクションとドキュメンタリーを交え、大都市と地方、家族と恋愛を交錯させ、実際に自分自身を演じている23歳のサーの姿が我々に明らかにされる。この作品は、現実の体験をひとりの女性の視点を通すことによって、通常なら単調に描かれる社会階級のリアリティを人間らしいものにしている。『カラオケ・ガール』は、従来の慣習的な語り口ではなく、むしろ困難な過去にも関わらず、思慮深く楽観的な女性の個人的世界を描いている。

この映画は、サーの讃歌‐彼女の恐れ、希望、そして夢を私と(あなたと)共有する彼女なりのやり方‐なのである。






11/23『カラオケ・ガール』Q&A
from ブロードキャスト 2013/11/25


11/23『カラオケ・ガール』Q&A
有楽町朝日ホール
 
ウィッサラー・ウィッチワーターカーン(監督)
ポーンナット・ラッタナウィット(プロデューサー)
市山 尚三(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
新井 由香(通訳)
 
 
『カラオケ・ガール』
タイ , 米国 / 2012年 / 77分 
監督: ウィッサラー・ウィッチワーターカーン

Karaoke Girl / SAOKARAOKE
Thailand,USA / 2012 / 77min.
Director: Visra VADAKAN





新情報は順次、追加されます。


『カラオケ・ガール』ウィッサラー・ウィチットワータカーン監督、ポーンナット・ラッタナウィットさんQ&A
from デイリーニュース2013 2013/11/24

1124karaoke01.jpg11月24日、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『カラオケ・ガール』の上映が行われた。本作では、出稼ぎでバンコクの夜の世界に身を投じた女性の日常が、ポップな色彩のもと生々しく描かれる。上映後のQ&Aには本作が監督デビュー作となるウィッサラー・ウィチットワータカーン監督とプロデューサーのポーンナット・ラッタナウィットさんが登壇した。


まず、司会の市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターから本作を制作した経緯について訊ねられると、ウィッサラー監督は「映画の手法として、ドキュメンタリーとフィクションの融合に興味を持っていた」と応えた。また、性産業に長年関心を持っており、そこで働く女性にインタビューするためバーを回っていたところ、主演のサー・シッティジャンさんと出会った。監督はサーさんとの関係に強い化学反応を感じ、長い取材期間を経て最終的に制作を決意したのだそう。ポーンナットさんもサーさんの人間的な魅力に惹かれたと語り、「タイのセックスワーカーを正面から取り上げた作品がほとんどないことも制作の動機の一つです」と付け加えた。


1124karaoke02.jpg客席からの最初の質問は、映画のフィクション部分がどこまで事実に基づいているかというもの。これに対してウィッサラー監督は「物語がサーの体験そのものとは言えないが、インタビューを重ねた上でフィクション部分を作っていったので、そのことが直接的にも間接的にも貢献している。彼女の人生で起きたことをテーマとして取り上げている」と語った。また「はじめにドキュメンタリー部分を2ヶ月間かけて撮影した。それはサーとの信頼関係を築くため、また素人である彼女をカメラに慣れさせるため」「サーに自分の見た夢の日記をつけるように指示した」「安心感を持ってもらうため、スタッフは女性中心にした」など、サーさんの生き生きとした表情を引き出したユニークな演出法も明かしてくれた。


次にサーさんがステージに立って歌うシーンが印象的だったと語る観客から、このシーンの構想について訊かれた監督は「サーは私との関係が深くなっていく中で、今の夢はステージに立ってダンサーに囲まれて歌うことだと打ち明けてくれました。これを聞いてすぐ、彼女の夢を映画で実現しようと思った」と語り、サーさんの現状について明かした。「実は、サーは性産業から身を引きました。それには幾つか理由がありますが、このシーンで歌った歌が大きな理由です。この歌は私がサーの現状をタイの有名な作曲家に話し、彼女のために作ってもらったものです。サーは電話越しに作曲家から直接その歌を聴いて泣いてしまった。大きく心を動かされたのです」。


1124karaoke03.jpg「風景が特徴的な作風はどこから影響を受けているのか」という質問に対してウィッサラー監督は「タイの監督たちから影響を受けており、特にアピチャッポン・ウィーラセタクン、アノーチャ・スイッチャーゴーンポンの二人からの影響が強い。撮影手法については、今回撮影を務めたサンディ・シッセルの影響が大きい」と応えた。サンディさんは『Mr.&Mrs.スミス』(05)などを手がけるハリウッドで活躍する撮影監督で、ウィッサラー監督が卒業制作を作った時の担当教授でもある。また、タイの女性監督事情について訊かれると、ポーンナットさんから「商業映画の監督はほとんどいないが、インディーズでは、本作の監督ウィッサラーと前出のアノーチャに加え、ピンパカ・トゥイラが代表的な女性監督」との紹介があった。若手も多数台頭してきており、勢いがあるようだ。


最後にウィッサラー監督から観客に感謝の言葉が述べられた後、市山Pディレクターからも、タレント・キャンパス・トーキョー出身のポーンナットさんに「帰ってきていただきありがとうございます」と感謝が伝えられた。ポーンナットさんは「フィルメックスでは映画制作者として最高の経験をさせてもらいました。本日、自分の作品を携えて戻ってくることができ大変嬉しく思っています。フィルメックスは私にとって故郷のようなものです。また、是非作品を持って帰ってきたい」と語り、イベントは和やかな雰囲気で締めくくられた。


『カラオケ・ガール』は11月27日(水)にも上映される。アピチャッポン監督の登場で世界から急速に注目を集めているタイ映画、是非その勢いを劇場に感じにきてはいかがだろうか。


(取材・文:高橋直也、撮影:関戸あゆみ、永島聡子)

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