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『SHARING』舞台挨拶・Q&A
from デイリーニュース2014 2014/11/24
11月24日、有楽町朝日ホールで特別招待作品『SHARING』が上映された。上映前の舞台挨拶では、第1回東京フィルメックス以来14年ぶりの出品となった篠崎誠監督をはじめ、共同脚本の酒井善三さん、出演者の山田キヌヲさん・樋井明日香さん・河村竜也さん・木村知貴さん・髙橋隆大さんが登壇し、観客への挨拶と感謝の気持ちが伝えられた。また、会場には本作に携わったキャストやスタッフが多数駆けつけており、篠崎監督の呼びかけにより客席で起立すると場内から大きな拍手が沸き起こった。
篠崎監督は、前作『あれから』(13)に続いて本作でも2011年3月11日に発生した東日本大震災を題材に選び、心に傷を負った二人の女性の心の葛藤と交流を描いた。上映後、篠崎監督・酒井さん・山田さん・樋井さんが再び登壇し、真実と虚構が絡み合う映画の世界観から覚め遣らぬ会場の雰囲気の中でQ&Aが開始された。
本作は、篠崎監督が所属している立教大学現代心理学部の研究プロジェクトとして文部科学省から助成を受けて制作された。映画の内容については制約がなかったため「高校時代の初監督作品のテーマであった予知夢とドッペルゲンガー。そして前作に続き3.11をもう一度テーマにしたいと思いました」と篠崎監督。半年以上かけて監督と一緒に企画を練ったという酒井さんは「監督から、予知夢・ドッペルゲンガー・心理学・3.11を盛り込みたいと言われ、どうしたらいいのか悩んだ」と苦笑しながら話すと、その無茶とも思える要望に会場からも笑いが。その後、監督と議論していく中で「虚偽記憶」によって、これらのキーワードが繋がるのではないか、と道筋が見えてきたという。
続いて役作りについて尋ねられると、主演の山田さんは「台本を読んで、やるべきことが沢山あると思った。(社会心理学教授という設定のため)心理学の本を読みあさり、監督が心理学の教授と会う時は同席し、主人公・瑛子が暮らすアパートのロケハンやソファーの布選びまでやりました」と、役作りに時間を費やしたことを明かした。さらに、山田さんは一人で夜行バスに乗って作品にも登場する高速増殖炉もんじゅを訪れた。タクシー運転手にはマスコミ関係者かと警戒されたそうだが、雪の降る中、3時間にわたってもんじゅを眺め、出入りする人を見ることは役作りの上で得るものがあったという。また、演劇科に通う学生を演じた樋井さんは「台本を読んで震災と向き合うことから始めた。監督からは難しく考えすぎなくていいと言われたので、わりと等身大で演じました」と話した。
観客からの質問に答える中で「自分自身も混乱し、すごく悩みながら脚本を書いた。半年以上、脚本を積み上げては捨て、積み上げては捨ての繰り返しでした」と、篠崎監督がこの作品を生み出す苦悩を吐露した場面も。登壇者一人一人が、本作のテーマと真摯に向き合ったことが伝わってくるQ&Aは、客席から多くの質問の手が挙がっていたが惜しまれつつ終了した。
本作は劇場公開が未定であるため、幸運にも今回見ることができた観客には本作の魅力を存分に周囲へ伝えていただき、再びスクリーンで上映される日を待ちたい。
(取材・文:小嶋彩葉、撮影:明田川志保、穴田香織、関戸あゆみ、村田まゆ)
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