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『山河ノスタルジア』ジャ・ジャンクー監督、チャオ・タオさんQ&A


1128sanga_0111月28日、有楽町朝日ホールにてクロージング作品『山河ノスタルジア』が上映され、Q&Aにジャ・ジャンクー監督と主演のチャオ・タオさんが登壇した。本作は、急速に発展する中国社会で翻弄されながらも力強く生きる一人の女性の半生を、過去・現在・未来と26年にわたる壮大なスケールで描いている。ジャパン・プレミアとなった今回の上映。ジャ監督は関係者への感謝を述べ、チャオさんは「皆さんに見ていただけて嬉しいです」と挨拶した。2人は10月中、中国全土を回ってキャンペーンを行ったばかり。「中国で大ヒットしていると聞いています」と市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターが紹介した。

本作の原題は「山河故人」という。「山河」は変わることのない景色、「故人」は旧知の友を意味する。日本語のように「亡くなった人」の意味はない。「私は中国語の〝故〟という字が好きです」とジャ監督。「昔」「過去」などの意味があり、時間性をはらむ言葉だからだという。「〝山河〟は空間、〝故〟は時間でストーリーを語ることができます」

1128sanga_02劇中、ディスコの場面でペット・ショップ・ボーイズがカバーした「ゴー・ウェスト」が流れる。観客からは、ヴィレッジ・ピープルのオリジナルではなくカバー曲を使った理由について問われた。「今回の脚本では時間の概念を重視しており、長い時間の中で人の感情を理解してもらいたいと考えました」とジャ監督。脚本を書くにあたり、出発点を監督の青春時代と重なる1999年に設定したのだが、当時若者の間ではディスコが流行っており、このバージョンがよくかかっていたという。同じく、サリー・イップの「珍重」という曲も監督が90年代に聞いて好きだった曲。歌詞が変化に富んでおり、たんに人の別れを歌っているだけでなく、相手に対する情も残っている歌なのだそうだ。「歌以外のものに関しても、個人的な理由で使っていることが多いです。人に理解してもらえるかはあまり気にしないで撮りました」とジャ監督は説明した。

ここで、黒澤明監督のスクリプターを務めた野上照代さんが挙手。作品について「海外との関係性の描き方が見事。演出が巧みで感動しました」と絶賛した。 

1128sanga_03主人公タオの名は、チャオ・タオさんの本名から取っている。ジャ監督は「本人と同じ名前にした役が他にもあります。俳優が自身との関連性を考え、生活経験を演技に取り入れてほしいと思いました」と説明。チャオさんは、「同じ名前だったことで、親近感を持ちました。自分の気持ちを入れやすかったです」とコメントした。また、主人公タオの息子は、父親から「ドル」を意味する「ダオラー」と名付けられる。ジャ監督は「彼は、息子のためにお金を稼ごうという決意があったのだと思います。面白がってつけたのもありますが。私はこの名前を気に入っています。父は自分の願望をストレートに息子の名前に託しました。下手に隠すよりいいと思っています」と語った。 

続いて、「ジャ監督作品で未来が描かれることは珍しい」という観客の指摘に、「おっしゃる通りです。初めて映画の中で未来を描きました」とジャ監督。当初は予定していなかったが、脚本を書くうちに、息子ダオラーの未来を知りたくなったのだという。ダオラーの両親は離婚し、7歳の時に父とオーストラリアに移住。自分に何も決定権がなく、人生を過ごす息子のその後を想像したいと思い、未来を撮ったと説明した。一方で「未来を撮ることに特別な意味を持たせたいわけではありません」とジャ監督。「未来のことは個人的に色々と考えていますが、そのまま作品に持ってくるべきではないと思っています。私が映画を通して表現したいのは〝私たちがどう生きていくか〟ということ。未来に対する賢ぶった答えを、私が勝手に示さない方が良いと思っています」と語った。

ジャ監督が、人生の中で様々な浮き沈みを経験したからこそ撮ったという本作。「このような作品はもう作らないと思います。自分も非常に傷つくし辛いので」とコメント。次回作について「次は時代劇などをお見せしたいと思います」と意欲を語った。『山河ノスタルジア』は2016年4月より、Bunkamuraル・シネマほか全国で公開される。 

(取材・文:宇野由紀子、撮影:明田川志保、白畑留美、本田広大、村田まゆ)

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