11/2『Next Sohee(英題)』Q&A

11月2日(水)、有楽町朝日ホールでコンペティション部門『Next Sohee(英題)』が上映された。本作は、第15回東京フィルメックスで上映された『私の少女』(2014)に続く、チョン・ジュリ監督による2作目の長編作品。上映後にはチョン・ジュリ監督が登壇し、質疑応答が行われた。

登壇したチョン監督はまず、「8年前に長編第1作目を東京フィルメックスで上映していただき、また戻ってきたいと思っていました。長い時間がかかってしまったのですが、再びこの場に来ることができて嬉しく思っております」と挨拶した。

さっそく本作の制作経緯について話が及んだ。本作は、2016年に韓国で実際に起こった、コールセンターの実習生として働いていた女子高生の死亡事件から着想を得たそうだ。当時、韓国では朴槿恵大統領の弾劾問題に人々の関心が集まり、このような事件が起きていることを知らなかったというチョン監督だが、事件の取材を重ねるうちに、「これは必ず映画化しなければならない」との思いに至ったという。

前作でも主演を務めたペ・ドゥナさんを本作でも起用した理由について訊かれると、「脚本を書いているときからペ・ドゥナさんを念頭においていた」と当て書きだったことを明かしてくれたチョン監督。「物語の途中から登場する役どころを、説明することなく、観客を最後まで引き付けることができるのはペ・ドゥナさんしかいない」、「ペ・ドゥナさんが脚本を読んだだけで、私の心の中を見透かすように私がどのように撮りたいかを把握していて驚いた」とペ・ドゥナさんに寄せる信頼の大きさを強調し、ペ・ドゥナさんの出演を「とても光栄なこと」と語った。

もうひとりの主人公ソヒ役には、新しい顔を求めていたというチョン監督。助監督から紹介されたキム・シウンさんに初めて会ったとき、自分の売込みよりも先に、「これは映画にしたほうがいい、ソヒという人間を知らせたほうがいい」と熱く語る様子に惹き付けられ、ごく自然な形で彼女にオファーすることになったそうだ。

続いて、チョン監督は事実と脚色の線引きについて触れた。本作は、ソヒがコールセンターで働き始めてから死ぬまでの前半部分と、ソヒの死後に刑事が事件を調べる後半部分に分かれるが、「前半は事実、後半は脚色」と本作の構成を説明。コールセンターの労働環境は、できるだけ現場を忠実に再現したそうだ。また、「現場実習」という教育制度のもとで起こっている数々の労働問題に声を上げている関係者に敬意をこめて、ペ・ドゥナさん演じる刑事のキャラクターを構築したという。

前作と本作では、韓国語の原題に主人公の名前(前作ではドヒ、本作ではソヒ)が含まれている点や、未成年者を扱った題材である点が共通する。「2人に関連があるというわけではありません。私が伝えたいことをタイトルに凝縮しています。未成年者を扱っているのは、社会的に弱い立場の人たちを描くため」とチョン監督は答えた。

ラストシーンの演出の意図について問われると、特に指示を出したわけではなく、脚本どおりに、俳優が感じるとおりに演じてもらえばよいと考えていたという。そして、このシーンは、「ソヒとユジンの2人にしかわからないシーン、ソヒからユジンへのプレゼントのようなシーン」として脚本を書いたと振り返った。

最後に「質疑応答の時間が短くて残念です」と名残惜しげに語った監督。観客から大きな拍手がおくられ、質疑応答が終了した。

文:海野由子
写真・吉田 留美、明田川志保

11/2『Next Sohee(英題)』Q&A

11月2日(水)、有楽町朝日ホールでコンペティション部門『Next Sohee(英題)』が上映された。本作は、第15回東京フィルメックスで上映された『私の少女』(2014)に続く、チョン・ジュリ監督による2作目の長編作品。上映後にはチョン・ジュリ監督が登壇し、質疑応答が行われた。

登壇したチョン監督はまず、「8年前に長編第1作目を東京フィルメックスで上映していただき、また戻ってきたいと思っていました。長い時間がかかってしまったのですが、再びこの場に来ることができて嬉しく思っております」と挨拶した。

さっそく本作の制作経緯について話が及んだ。本作は、2016年に韓国で実際に起こった、コールセンターの実習生として働いていた女子高生の死亡事件から着想を得たそうだ。当時、韓国では朴槿恵大統領の弾劾問題に人々の関心が集まり、このような事件が起きていることを知らなかったというチョン監督だが、事件の取材を重ねるうちに、「これは必ず映画化しなければならない」との思いに至ったという。

前作でも主演を務めたペ・ドゥナさんを本作でも起用した理由について訊かれると、「脚本を書いているときからペ・ドゥナさんを念頭においていた」と当て書きだったことを明かしてくれたチョン監督。「物語の途中から登場する役どころを、説明することなく、観客を最後まで引き付けることができるのはペ・ドゥナさんしかいない」、「ペ・ドゥナさんが脚本を読んだだけで、私の心の中を見透かすように私がどのように撮りたいかを把握していて驚いた」とペ・ドゥナさんに寄せる信頼の大きさを強調し、ペ・ドゥナさんの出演を「とても光栄なこと」と語った。

もうひとりの主人公ソヒ役には、新しい顔を求めていたというチョン監督。助監督から紹介されたキム・シウンさんに初めて会ったとき、自分の売込みよりも先に、「これは映画にしたほうがいい、ソヒという人間を知らせたほうがいい」と熱く語る様子に惹き付けられ、ごく自然な形で彼女にオファーすることになったそうだ。

続いて、チョン監督は事実と脚色の線引きについて触れた。本作は、ソヒがコールセンターで働き始めてから死ぬまでの前半部分と、ソヒの死後に刑事が事件を調べる後半部分に分かれるが、「前半は事実、後半は脚色」と本作の構成を説明。コールセンターの労働環境は、できるだけ現場を忠実に再現したそうだ。また、「現場実習」という教育制度のもとで起こっている数々の労働問題に声を上げている関係者に敬意をこめて、ペ・ドゥナさん演じる刑事のキャラクターを構築したという。

前作と本作では、韓国語の原題に主人公の名前(前作ではドヒ、本作ではソヒ)が含まれている点や、未成年者を扱った題材である点が共通する。「2人に関連があるというわけではありません。私が伝えたいことをタイトルに凝縮しています。未成年者を扱っているのは、社会的に弱い立場の人たちを描くため」とチョン監督は答えた。

ラストシーンの演出の意図について問われると、特に指示を出したわけではなく、脚本どおりに、俳優が感じるとおりに演じてもらえばよいと考えていたという。そして、このシーンは、「ソヒとユジンの2人にしかわからないシーン、ソヒからユジンへのプレゼントのようなシーン」として脚本を書いたと振り返った。

最後に「質疑応答の時間が短くて残念です」と名残惜しげに語った監督。観客から大きな拍手がおくられ、質疑応答が終了した。

文:海野由子
写真・吉田 留美、明田川志保