11/20 『幸福城市』 Q&A


11/20 『幸福城市』 Q&A
有楽町朝日ホール
ホー・ウィディン(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
新居 由香(通訳)
台湾、中国、アメリカ、フランス / 2018 / 107分
監督:ホー・ウィディン (HO Wi Ding)
Cities of Last Things
Taiwan / 2018 / 107min.
Director: HO Wi Ding

11/19 『マンタレイ』 Q&A


11/19 『マンタレイ』 Q&A
有楽町朝日ホール
プッティポン・アルンペン(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
大倉 美子(通訳)
タイ、フランス、中国 / 2018 / 105分
監督:プッティポン・アルンペン (Phuttiphong AROONPHENG)
Manta Ray
Thailand / 2018 / 105 min.
Director: Phuttiphong AROONPHENG

11/18『共想』 Q&A


11/18『共想』 Q&A
有楽町スバル座
篠崎 誠(監督)
矢崎 初音(俳優)
柗下 仁美(俳優)
市山 尚三 (東京フィルメックス ディレクター)
監督:篠崎誠(SHINOZAKI Makoto)
製作:コムテッグ
Wish we were here
Japan / 2018 / 76 min.
Director: SHINOZAKI Makoto

11/18 『期待』 Q&A


11/18 『期待』 Q&A
有楽町朝日ホール
アミール・ナデリ(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
ショーレ・ゴルパリアン(通訳)
イラン / 1974年 / 43分
監督:アミール・ナデリ(Amir NADERI)
Waiting
Iran / 1974 / 43 min.
Director: Amir NADERI

【登壇ゲスト追加決定】特別招待作品『プラネティスト』

11/25(日)13:40より有楽町朝日ホールにて上映の特別招待作品『プラネティスト』の上映前舞台挨拶のゲストが決定いたしました。
登壇するのは、本作で小笠原の案内人として登場するレジェンドサーファー・宮川典継さん、俳優の窪塚洋介さん、元BLANKEY JET CITYのドラマーである中村達也さん、ギタリスト・ヤマジカズヒデさん、俳優の渋川清彦さん、そして豊田利晃監督です。
上映後のQ&Aには豊田利晃監督が登壇します。
こちら残席もまだございますので、ぜひ皆様のご来場をお待ちしております。(※チケットはセブンチケットにてお買い求めください。朝日ホールでのチケット販売はございませんのでご注意ください)


11/18『共想』 舞台挨拶


11/18『共想』 舞台挨拶
有楽町スバル座
篠崎 誠(監督)
矢崎 初音(俳優)
柗下 仁美(俳優)
櫻井 保幸(俳優)
大杉 樹里杏(俳優・録音助手)
播磨 誌織(俳優)
村上 春奈(俳優)
市山 尚三 (東京フィルメックス ディレクター)
監督:篠崎誠(SHINOZAKI Makoto)
製作:コムテッグ
Wish we were here
Japan / 2018 / 76min.
Director: SHINOZAKI Makoto

11/18『空の瞳とカタツムリ』 Q&A


11/18『空の瞳とカタツムリ』 Q&A
有楽町スバル座
斎藤 久志(監督)
縄田 かのん(俳優)
中神 円(俳優)
藤原 隆介(俳優)
荒井 美早(脚本)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
日本 / 2018 / 120分
監督:斎藤久志(SAITO Hisashi)
配給:太秦
Love Dart
Japan / 2018 / 120min.
Director: SAITO Hisashi

11/17 『川沿いのホテル』 Q&A


11/17 『川沿いのホテル』 Q&A
TOHOシネマズ 日比谷
キ・ジュボン(俳優)
市山 尚三(東京フィルメックス ディレクター)
根本 理恵(通訳)
韓国 / 2018 / 96分
監督:ホン・サンス(HONG Sang Soo)
Hotel by the River
Korea / 2018 / 96 min.
Director: HONG Sang-soo

【レポート】『幻土(げんど)』

11月19日(月)、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『幻土』が上映された。シンガポールの刑事ロクは、埋立地の建設現場で働く中国人移民労働者ワンの失踪事件を担当する。次第に明らかになっていく男の過去。上映後のQ&Aにはヨー・シュウホァ監督と、撮影監督の浦田秀穂さんが登壇した。

ヨー監督は、東京フィルメックスの映画人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー2015」の修了生でもある。「この映画の企画は、タレンツ・トーキョーから始まりました。完成した作品をフィルメックスのお客様に観ていただけて嬉しいです」と挨拶し、企画の着想を語った。
「原題『A Land Imagined』は、私が魅了されている母国シンガポールを表しています。シンガポールは50年以上前の植民地時代より、他国から輸入した砂で土地を埋め立て、今では国土を25%拡大しています。人口の1/4が移民であり、重労働者の99.9%が移民です。シンガポールを描くには、彼らの物語が欠かせないと思いました」

浦田さんは、2011年からシンガポールのラサール芸術大学で教授を務めている。脚本の草稿は3年前に受け取り、クランクイン前に6~8ヵ月かけて監督と撮影場所を探した。監督からの唯一のリクエストは、「今まで見たことのないシンガポールの夜を撮ること」。美術監督はイギリス人、プロデューサーはスペイン人であり、浦田さんは「僕も含めてアウトサイダー的なスタッフを集めたのではないか」と指摘する。撮影では事前にカット割りはせず、現場で決めたという。

劇中では様々な音楽が使われている。観客から「途中で懐かしい感じのする曲が流れましたが、選曲の理由を教えてください」と尋ねられると、ヨー監督は「夢の世界を作り上げるため、記憶の引き金となるような音楽を選びました」と明かした。「ご質問いただいた曲は、80年代の日本の曲をマレーシア人の歌手がカバーし、台湾で人気を博したバラードです。そういうミックスされた要素も、この作品にぴったりだと思いました」

現実的な労働問題に、幻想的な夢の要素を取り入れた理由について、「敢えて違う手法で撮りたかった」とヨー監督。「シンガポールは、繁栄しているという意味で夢の都市といわれますが、埋め立てによって自らをつくり直し続け、変容する国でもあります。たった数年で国の形が変わります。そこで生きる私自身が、いつも夢の場所にいるかのようなふわふわした感覚を味わっています。足元にあるのは堅固な土ではなく、砂です。映画をつくる過程で様々な移民労働者に会いましたが、面白いことに彼らもシンガポールでの生活は夢の中にいるようだと言っていました。私自身の立場は映画の刑事ロクと同じ。移民労働者と背景は違いますが、映画では夢で皆の意識を繋げました。厳しい労働環境だけでなく、シンガポールで生きるという経験を表したかったのです」

ヨー監督の発言を受けて、浦田さんは「中国語のタイトル『幻土』の『土』には、マイノリティーという意味もあります。刑事ロクは、シンガポールのメタファーと捉えて撮影しました」と解説。「実は許可が下りず、きれいな景色はほとんどマレーシアで撮っています。そういった意味で、現実的な描写とコントラストが生まれたと思います。シンガポールに山はありません。そういったことも含めて、この映画は監督が夢見たシンガポールだったんでしょうか?そうですよね?」と浦田さんが念押しすると、会場から笑いが起きた。

ヨー監督は「そうです。かつてはシンガポールにも山があったのですが、埋め立てで平地になりました」と同意。「私は前作でドキュメンタリーを撮り、半分はドキュメンタリー作家という意識があります。撮影の制約はありましたが、できるだけリアルなシンガポールを捉えたいと思い、様々な手法を使いました。主役以外は本物の移民労働者です。それは作り物ではいけないと思ったからです」
本作は第71回ロカルノ国際映画祭で金豹賞、第63回バリャドリッド国際映画祭で撮影監督賞を受賞。『幻土』は11月22日(木)、有楽町朝日ホールでも上映される。

文責:宇野由希子、撮影:村田麻由美、明田川志保

【レポート】『マンタレイ』Q&A

11月19日(月)、有楽町朝日ホールでコンペティション作品の『マンタレイ』が上映された。本作は、世界的に注目を集めるロヒンギャ難民の問題を念頭に、1人の漁師と彼に助けられた男、そして漁師の別れた妻が織り成す人間模様を綴ったドラマ。上映後にはプッティポン・アルンペン監督がQ&Aに登壇し、客席からの質問に答える形で、作品に込めた思いを語ってくれた。

登壇したアルンペン監督はまず、「ロヒンギャ難民に捧ぐ」と冒頭に表示される意味を含めて、本作が誕生した経緯を語った。
企画がスタートしたのは2009年。具体的な内容は未定のまま、国境を舞台にアイデンティティをテーマにした作品を作りたいと考えていたアルンペン監督は、2010年にあるニュースを目にする。それが、迫害を逃れてミャンマーを出国したロヒンギャの難民300人が、タイから入国を拒否され、行方不明になったという痛ましい事件だった。
「国籍や宗教の違いがこの悲劇を生んだと考え、それを物語にしたいという思いから、この映画が生まれました」。

さらに、2015年にはマレーシアとタイの国境付近で、地中に埋められたロヒンギャの難民の遺体が多数発見されるという衝撃的な事件も発生。この事件も映画に取り入れたいと考えたアルンペン監督は、発光する石や赤ちゃんの人形など、地中から様々なものが出てくるという形で表現している。
また、本作で強い印象を残すのが、夜の森に浮かぶ色とりどりの光や色彩感覚に溢れた遊園地の照明など、随所に盛り込まれた鮮やかな光のイメージ。
ここには、アルンペン監督自身の体験に基づく思いが込められている。2009年にタイとミャンマーの国境地帯を旅した時のこと。国境を守る施設もなく、警備の兵士すらいない場所に辿り着いたアルンペン監督が目にしたのは、モエイ川という小さな川。そこでは、タイ側からやって来た少年2人と、ミャンマー側の少年1人が、一緒に仲良く遊んでいたのだという。
「その時、感じたのです。想像上の国境や私たちを隔てる線のようなものは、実際には存在しないのだと。その想いを映画的言語に落とし込もうとした結果、生まれたのがこの光を使った演出です。有機的で美しい森に、人工的なLEDの光が入り込む様子が、それを象徴しています」。

タイトルになっている「マンタレイ」とは、日本名「オニイトマキエイ」という巨大なエイの一種を指す。劇中ではラストにそのイメージが挿入されるが、ここにも監督の深い思いが。
ダイビング好きなアルンペン監督は、2009年に初めて訪れたアンダマン海でマンタレイに遭遇する。未知の生物だったために恐怖を感じたものの、「後で調べてみたところ、実はとても人なつこい生き物だと分かりました」。
タイトルは、その時の経験からつけられた。未知の相手に対して、無条件に恐怖を感じる人間の性質を実感したアルンペン監督の中で、それがロヒンギャの問題と結びついたに違いない。

この他、漁師の妻役にタイの有名な歌手を起用したというキャスティングの裏話や、フランスなどとの合作映画になった経緯など、アルンペン監督はひとつひとつの質問に丁寧に回答。Q&Aは短いながらも充実した時間となった。

取材・文:井上健一、撮影:明田川志保