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【レポート】『マンタレイ』Q&A

11月19日(月)、有楽町朝日ホールでコンペティション作品の『マンタレイ』が上映された。本作は、世界的に注目を集めるロヒンギャ難民の問題を念頭に、1人の漁師と彼に助けられた男、そして漁師の別れた妻が織り成す人間模様を綴ったドラマ。上映後にはプッティポン・アルンペン監督がQ&Aに登壇し、客席からの質問に答える形で、作品に込めた思いを語ってくれた。

登壇したアルンペン監督はまず、「ロヒンギャ難民に捧ぐ」と冒頭に表示される意味を含めて、本作が誕生した経緯を語った。
企画がスタートしたのは2009年。具体的な内容は未定のまま、国境を舞台にアイデンティティをテーマにした作品を作りたいと考えていたアルンペン監督は、2010年にあるニュースを目にする。それが、迫害を逃れてミャンマーを出国したロヒンギャの難民300人が、タイから入国を拒否され、行方不明になったという痛ましい事件だった。
「国籍や宗教の違いがこの悲劇を生んだと考え、それを物語にしたいという思いから、この映画が生まれました」。

さらに、2015年にはマレーシアとタイの国境付近で、地中に埋められたロヒンギャの難民の遺体が多数発見されるという衝撃的な事件も発生。この事件も映画に取り入れたいと考えたアルンペン監督は、発光する石や赤ちゃんの人形など、地中から様々なものが出てくるという形で表現している。
また、本作で強い印象を残すのが、夜の森に浮かぶ色とりどりの光や色彩感覚に溢れた遊園地の照明など、随所に盛り込まれた鮮やかな光のイメージ。
ここには、アルンペン監督自身の体験に基づく思いが込められている。2009年にタイとミャンマーの国境地帯を旅した時のこと。国境を守る施設もなく、警備の兵士すらいない場所に辿り着いたアルンペン監督が目にしたのは、モエイ川という小さな川。そこでは、タイ側からやって来た少年2人と、ミャンマー側の少年1人が、一緒に仲良く遊んでいたのだという。
「その時、感じたのです。想像上の国境や私たちを隔てる線のようなものは、実際には存在しないのだと。その想いを映画的言語に落とし込もうとした結果、生まれたのがこの光を使った演出です。有機的で美しい森に、人工的なLEDの光が入り込む様子が、それを象徴しています」。

タイトルになっている「マンタレイ」とは、日本名「オニイトマキエイ」という巨大なエイの一種を指す。劇中ではラストにそのイメージが挿入されるが、ここにも監督の深い思いが。
ダイビング好きなアルンペン監督は、2009年に初めて訪れたアンダマン海でマンタレイに遭遇する。未知の生物だったために恐怖を感じたものの、「後で調べてみたところ、実はとても人なつこい生き物だと分かりました」。
タイトルは、その時の経験からつけられた。未知の相手に対して、無条件に恐怖を感じる人間の性質を実感したアルンペン監督の中で、それがロヒンギャの問題と結びついたに違いない。

この他、漁師の妻役にタイの有名な歌手を起用したというキャスティングの裏話や、フランスなどとの合作映画になった経緯など、アルンペン監督はひとつひとつの質問に丁寧に回答。Q&Aは短いながらも充実した時間となった。

取材・文:井上健一、撮影:明田川志保


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