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【レポート】『自由行』Q&A


11月22日(木)、有楽町朝日ホールにてコンペティション部門の『自由行』が上映された。本作は、『私には言いたいことがある』(’12)以来7年ぶりとなるイン・リャン監督の新作で、東京フィルメックスでは4作目の出品となる。上映後にはイン・リャン監督が登壇し、「この作品は古い友人と語り合うような意図で作りました。馴染みの観客のみなさんがいるフィルメックスで上映していただくのにふさわしいと思います」と、観客との再会を喜び、監督自身が過ごしてきたこの6~7年間の総括となる本作について語ってくれた。

本作は、当局との問題を抱えたため中国を離れて香港に暮らす女性映画監督が、夫と息子とともに台湾の映画祭に参加する一方で、中国本土からツアー客として台湾にやってきた母親と久しぶりに再会するという物語。中国から香港に移住して創作活動を続けるイン・リャン監督の境遇を投影した作品である。イン・リャン監督は、本作が実際に体験した台湾旅行に基づくこと、実体験で再会したのは自分の妻の親である点が異なることを説明。制作の動機としては、現在5歳の息子が、将来成長して、なぜ祖母に会うために台湾へ行ったのだろうかと考えたときに、本作から解きほどいてもらいたいからだという。また、「中国人は何世代にもわたり苦難に見舞われてきました。国家に対する怖れを直接的に表現することができません。私はその部分を映画で変革したいと思いました」と続けた。イン・リャン監督は来場していた夫人と息子さんを観客に紹介し、観客から温かい拍手が寄せられた。
また、劇中の女性監督が自らを「異邦人」と称する場面について、イン・リャン監督は次のように説明した。「人生の中で、自由というものに価値があるとするならば、自由を得られないということは、すなわち失望です。故国に自由がなければ、自由の価値を手放すか、あるいは、手放さずに故国を離れるという選択肢があって、故国を離れた時点で国籍を越えた異邦人となるのです。」
続いて、主人公を女性監督に設定した点やシナリオについて話が及んだ。脚本は、イン・リャン監督、監督夫人、香港の小説家チャン・ウァイさんの3人で担当。チャン・ウァイさんが参加したことにより、自分たちには近すぎて見えていないことが、見えてきたという。主人公を男性監督として描くと、100%監督自身のことだろうと言われてしまうため、自分と同じような境遇の多くの人たちの集団的な経験を組み込むために、女性監督に設定したという。また、チャン・ウァイさんが母娘を題材とした作品を得意としていたことは、母娘の関係性を描く上で良い効果をもたらしたようだ。

最近、香港の永久居留権を得たというイン・リャン監督。香港に移り住んだ当時は、多くの困難があったそうだ。「多くの人たちの支援を得て、7年経ち、ようやく永久居留権を得ることができたのが今年の9月28日のことです。まさに、雨傘運動が起きた日と同じ日で、特別な意味合いがあると思います」と振り返った。しかし、香港では、多くの監督が大陸の目を怖れて作品を発表できないという問題があるという。それでもイン・リャン監督は、「状況がどうあれ、自分が語りたいことがあれば、映画で表現したいことがあれば、そして、それを観てくださる観客の方がいるのであれば、私は撮り続けていくと思います」という力強いメッセージを残してくれた。会場からは大きな拍手が寄せられ、質疑応答が終了した。
本作は、11月25日(日)にTOHOシネマズ日比谷スクリーン12にてレイトショー上映される。イン・リャン監督のさらなる飛躍に期待したい。

文責:海野由子 撮影:吉田(白畑)留美

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