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【レポート】『マジック・ランタン』舞台挨拶、Q&A


11月20日(火)、有楽町朝日ホールにて特集上映「アミール・ナデリ」の一本として、最新作『マジック・ランタン』が上映された。古びた映画館で映写技師として働く若者ミッチを主人公に、現実と幻想、映画へのオマージュが混淆された現代のお伽噺。上映に先立ち、ナデリ監督が舞台挨拶に登壇した。

特集上映では、ナデリ監督の自伝的映画であり、自らの初恋を描いた『期待』(74)に続く、2作目の上映となる。ナデリ監督は本作について、「いつか『期待』(74)のような作品をつくりたいと思っていました。長年、女性への愛を心のどこかに隠し、山を壊したり、火事を起こしたり、数々の乱暴を行いましたが、やっとその気持ちを取り出してこの映画をつくりました」と紹介。「私の作品を観たことがある方は、この作品を観ると驚くと思います。私も自分が作ったと思えない。私が作ったことを一度忘れて観てください」と観客へ呼びかけた。

上映後のQ&Aに再び登壇したナデリ監督は、本作の制作のきっかけとなった不思議な出来事について語った。ナデリ監督はアメリカで半年間、溝口健二監督の映画の修復に携わっていた。ある晩、暗い道を歩いていたとき、人の気配を感じて振り向くと、なんと溝口監督が立っていた。そのとき、溝口監督から背を押されたような気がして、この映画をつくる決心をしたのだという。ナデリ監督が以前、知人からDVDをもらい、「何度も何度も観た」と言うのは溝口監督の『雨月物語』(53)。「夢と現実を行き来する、魔法使いのような映画。いつか自分でも作りたいと思っていました」と語った。

観客からの最初の質問は、印象的な音の使い方について。ナデリ監督は「映画は音のためにつくっているようなもので、最初から考えている。いつもは映画音楽を使わないが、ハリウッドの近くで映画をつくると音楽を入れないといけないな、という気持ちになった」と明かした。『CUT』(11)や『山<モンテ>』(16)では、自然音や効果音を音楽の代わりに使った。本作で劇中に鳴る不思議な音は、『山<モンテ>』(16)で使った音を入れたという。

また、扉から女性の手が現れるシーンは『期待』を踏まえたものかとの質問には、「そうです。あの『手』のためにこの作品を撮りたかったのです」と答えた。キャスティングのとき、なかなか自分のイメージに合う女性がいなかったが、腕に目のタトゥーを入れているソフィー・レーン・カーティスさんに会ったとき、この人だと思った。夢と現実を行き来するイメージを、その腕が全て語ってくれるのではないかと思ったという。

本作には、ナデリ監督が「『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)のときから恋をしている」というジャクリーン・ビセットさんも出演している。事務所はなかなかOKしてくれなかったが、フランスの映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』でナデリ監督の特集が組まれ、幸いビセットさんが読んでいた。本人から映画に出たいと連絡があり、出演が決まったそうだ。ナデリ監督は「ビセットと最初に会ったとき、私の映画に出るなら、毎日ベジタリアンの私にサンドイッチをつくってほしいと言ったら、彼女は約束を守ってくれました。現場のランチはビセットの手作り」という羨ましいエピソードも明かしてくれた。

まだ多くの手が挙がっていたが、ここで時間となりQ&Aが終了。ナデリ監督は「カット!ありがとう!」「次の映画で!」と観客に声をかけ、舞台を後にした。

追記
第17回東京フィルメックスで上映された『山<モンテ> 』(16)は、2019年2月よりアップリンク吉祥寺での公開が予定されている。
文責:宇野由希子 撮影:明田川志保

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