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『東京ヴァンパイアホテル 映画版』園子温監督Q&A


11月23日(木)、有楽町朝日ホールで特別招待作品の『東京ヴァンパイアホテル 映画版』が上映された。本作は、東京にあるホテル・レクイエムを舞台に、ヴァンパイア同士の生き残りを賭けた壮絶な戦いを描いた血まみれのハードバイオレンス。amazonプライムの配信用に制作された連続ドラマを劇場用に再編集した作品だ。上映後には園子温監督に加えて、サプライズゲストとして出演者の満島真之介さん、冨手麻妙さんが登壇。客席からの質問に答えてくれた。

登壇した園監督はまず、「愛のむきだし」(08)以来、新作を度々フィルメックスで上映していることについて触れ、「この映画祭で上映してこそ、日本のプレミアになるようなところもあり、今回も嬉しく思っています」と挨拶。
とはいえ、配信用という制約のため、本作の劇場公開は未定。今回の上映は貴重な機会でもあることから、サプライズゲストとして出演者の満島真之介さんと冨手麻妙さんもQ&Aに参加してくれた。
拍手に迎えられて姿を現した冨手さんからは「日本で上映されるのは、今回が最初で最後になるかも…」との言葉が。すると、園監督がすかさず「そんなことない」と突っ込み、劇場公開への意欲を滲ませた。
本作で強く印象に残るのが、極彩色のビジュアルとハードなバイオレンス。その視覚的なインパクトについて園監督は、「小さい頃から見てきた映画や漫画の影響」と語り、特に強い影響を受けた作品として、『ハレンチ学園』、『あばしり一家』、『バイオレンスジャック』など、永井豪の漫画のタイトルを挙げた。「ラストの方の感じは、永井豪先生のタッチだと分かっていただけるかと思います。そういういろんなものを詰め込んだ映画です」。
さらに園監督は、満島さんが『愛のむきだし』で助監督を務めていたことを明かし、「まさか役者になるとは思っていなかった。そういう奇遇も含めて、感慨深い映画」と述懐。すると満島さんから、フィルメックスで「愛のむきだし」を上映した時の裏話が飛び出した。「僕も一緒に朝日ホールに来ていたんです。上映中に監督から呼び出しを受けて、最後まで観られなかった。監督はすごく酔っ払ってて『俺は何十回も見ているからいいんだ』とか言いながら…」思わぬ暴露話に、園監督は苦笑い。
続いて質問が寄せられたのが、画面を真っ赤に染める“血”について。本作を含め、園作品では大量の血が流れることが多い。意外にも「実際の血はすごくいや」という園監督だが「映画や漫画に出てくる血は大好物」とのこと。一見矛盾する答えだが、その理由を「子どものギャングごっこやチャンバラこっごの延長線上」と説明し、こう続けた。「映画の血は比喩。心の吐露や心の叫びなど、何か違う感情を呼び起こすための装置だと思っています」満島さんによると、現場でもセット内の血のほとんどを園監督自身が塗るほどのこだわりを見せたという。
一方、劇中で迫力満点のアクションを披露している冨手さんは、初挑戦となったワイヤーアクションの舞台裏を振り返った。「練習時間が30分ぐらいしかなかったんです。本番になって、急にシャンデリアに上れとか、人の首を撥ねなきゃいけないという話になり…」と、ハードな体験だった様子。
この他、ルーマニアロケや物語に込められた風刺的な意図についても話題が及び、Q&Aは終了。最後に満島さんが、「この映画を見た人は、ここにしかいません。SNSなどで公開してほしいという声が続出すれば、何とか公開できるかもしれない。今、世界中の映画祭を廻っていますが、せっかく園子温が作った映画が日本で流れないのは悲しい。力を貸してください」と呼びかけると、大きな拍手が送られた。
(取材・文:井上健一、撮影:村田麻由美、明田川志保、白畑留美)

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