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『山<モンテ>』舞台挨拶・Q&A


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11月24日(木)、有楽町朝日ホールで特別招待作品の『山<モンテ>』が上映された。これは、日本で撮影した『CUT』(11)以来、5年ぶりとなるアミール・ナデリ監督の新作。中世を舞台に、不毛の土地で山に挑み続ける男とその家族の姿を、力強い演出と迫力の映像で綴った意欲作。上映後にはナデリ監督と主演のアンドレア・サルトレッティさんによるQ&Aが行なわれ、客席からの質問に答えてくれた。 

上映前、壇上に姿を現したナデリ監督は、「私は日本が大好きです。5年ぶりの新作ですが、上映後に感想をお聞きするのが楽しみです」と挨拶。続けて、客席にいた前作『CUT』の主演俳優・西島秀俊さんを「私の大切な親友です」と紹介。「今夜の上映を西島さんに捧げます」と監督。西島さんが立ち上がって一礼すると、会場からは大きな拍手が贈られた。

img_0583 上映終了後、大きな拍手に迎えられ、主演のアンドレア・サルトレッティさんと共にナデリ監督が再び登壇。まず初めに、15年前から構想していたこの作品をイタリアで撮影した理由を明かした。
「日本や韓国、アメリカでの撮影も考えましたが、イメージに合いませんでした。そこで、どこかの土地が私を呼んでいるような気がしたので、イタリアに行って山を見て、音を聞いた時に“イタリアだ!”と思いました」
さらに、イタリアの山にインスピレーションを受けたその状況を、「私がこの映画を演出したのではなく、この映画が私を演出したのです」とユニークな言葉で表現。

続いて、過酷な撮影を乗り越えて主人公を熱演したアンドレアさんが「どうもありがとうございます」と日本語で挨拶し、撮影時の様子を振り返った。「ナデリ監督との仕事は今までで一番大変でしたが、素晴らしい贈り物を頂きました。その贈り物を頂けるのであれば、一生懸命努力しようと思いました」

img_0066本作では、岩肌を剥き出しにした巨大な山の映像に加わった凄まじい音響効果が、その迫力を倍増させている。ナデリ監督は映画を作る時、編集とサウンドデザイン(音響の演出)を最も重視するのだという。「私にとって音は音楽であり、セリフであり、物語そのものです。ですから、すべてを音だけで語れるのではないかと思いました」
かねてからワーグナーの音楽のような音を映画に入れたいと考えていたナデリ監督は、ワーグナーを聞きながら本作のサウンドデザインを行なったとのこと。
「6カ月かけて撮影した後、すべての素材を持って日本に来ました。プロデューサーが東京の西荻窪に部屋を借りてくれたので、そこで日本人スタッフの佐藤文郎さんと一緒に、編集とサウンドデザインを6カ月かけて行ないました」

さらに続けて、意外な告白が。「この映画は、編集、音、撮影、カメラの動きなど、すべてを黒澤明監督から学びました。私は日本に来ると毎回、(お墓がある)鎌倉に行って黒澤監督に“力を貸してください”とお願いします。だから、この映画はほぼ全編に渡って、黒澤監督の影響を受けていると言っていいでしょう」

迸るように言葉が飛び出すナデリ監督の姿からは、本作に賭ける熱い想いが伝わってきた。『山<モンテ>』は、現在のところ劇場公開は未定だが、凄まじい映像と音響、俳優の熱演が見る者を圧倒するこの作品が、日本国内で公開されることを期待したい。

(取材・文:井上健一、撮影:明田川志保、穴田香織、村田麻由美)

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