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東京フィルメックス・コンペティション






『514号室』 Room 514 / Heder 514
イスラエル / 2011 / 90分
監督:シャロン・バルズィヴ (Sharon BAR-ZIV)

【作品解説】
主人公はイスラエル軍の女性捜査官アナ。アラブ人家族が軍に過剰な暴行を受けた事件を捜査するアナは、関与したと思われる司令官ダヴディを尋問するが、ダヴディは容疑を認めない。アナと愛人関係にある上官のエレズはこの事件から手を引くようにアナに忠告するが、アナは真相の解明に突き進む...。シャロン・バルズィヴの監督デビュー作『514号室』は、極めて限定された設定の中、イスラエルをめぐる複雑な環境、あるいは軍における女性の立場など、様々な問題を浮き彫りにする作品だ。場面はアナが通勤するバスを除き、全て「514号室」に限定され、そこは本来の目的である尋問の場所であるだけでなく、アナが抱えるプライベートな問題さえもが露呈される場となる。明らかに低予算で製作された映画ながら、アナを演じるアシア・ナイフェルドを始めとする俳優たちの完璧な演技、またクローズアップを多用した見事なカメラワークなど、様々なレベルで映画的な豊穣さを獲得した力作だ。ロッテルダム映画祭、トライベッカ映画祭などで上映された。







シャロン・バルズィヴ (Sharon BAR-ZIV)

テルアビブに生まれる。テルアビブ大学で映画を専攻し、その後俳優として映画やテレビドラマに出演。更に脚本家、コピーライターとして活動する。2012年、製作、監督、脚本をつとめた『514号室』で監督デビュー。俳優としての代表作にレネン・ショル監督による青春映画の佳作"Late Summer Blues"(88)などがある。





11/28『514号室』Q&A
from ブロードキャスト 2012/11/29


 
11/28『514号室』Q&A
有楽町朝日ホール
 
シャロン・バルズィヴ(監督)
市山 尚三(東京フィルメックス プログラム・ディレクター)
藤岡 朝子(通訳)
 
 
『514号室』
イスラエル / 2012年 / 90分 
監督: シャロン・バルズィヴ
 
Room 514 / Heder 514
Israel / 2012 / 90min.
Director: Sharon BAR-ZIV





新情報は順次、追加されます。


『514号室』シャロン・バルズィヴ監督Q&A
from デイリーニュース2012 2012/11/28

1128room_1.jpg11月28日、有楽町朝日ホールにて、コンペティション作品『514号室』が上映され、シャロン・バルズィヴ監督が上映後のQ&Aに登壇した。バルズィヴ監督は、イスラエルで俳優、脚本家、コピーライター、そして政治の世界など様々な経歴を経て、本作で監督デビューした。


バルズィヴ監督は「この場に立つことは大変光栄なこと。東京フィルメックスに感謝します」と挨拶。この作品はイスラエル国防軍の尋問の部屋「514号室」を中心に展開される。最初に市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターから、「題材・作り方が非常にチャレンジングで、内容にリアリティがある。実際に起こった事件に基づいているのか、フィクションなのでしょうか」と質問すると、バルズィヴ監督は「制作過程は長い旅路のようだった」と切り出し、撮影秘話を語ってくれた。脚本、キャスティング、撮影、編集を1年間で全て終えた。低予算で、撮影期間は4日間だったが、6ヶ月にわたって準備とリハーサルを重ねて実現したそうだ。俳優は軍に入隊経験のある人、できれば設定と同じ部署であることを希望していたため、探すのに何か月もかかった。その甲斐あって非常にリアルに表現できたという。主役の女性捜査官アナ役の俳優も、尋問部隊にいた経験を持つ。この物語は、2010年に部下が上官を告訴した事件が何件かあり、それらを題材にしているとのことだが、「この話はイスラエル国家の歴史の話であると思うのです。(イスラエルは徴兵制度があるため)自分も、自分の親も、そして現在軍隊に所属する若い世代も、今まで何千人もの人々が経験していること」と監督は語った。


1128room_2.jpg続いて観客から、バルズィヴ監督は本作のプロデューサーでもあるが、資金集めの苦労について質問が上がった。「確かに資金的には苦労しましたが、政治的な理由ではなく、自分がイスラエルの映画産業の中で無名な存在であるため、なかなか資金提供が得られなかったのです」と監督。知人であるイスラエル・フィルム・ファンドの代表、カトリエル・ショーリ氏が「とりあえず撮影してみたら、作品見て検討する」と言ってくれ、結果ポストプロダクション以降の費用をすべて負担してくれたそうだ。市山Pディレクターから、ショーリ氏には、作品を推薦してもらったり、いつも大変お世話になっている、とコメントがあった。


「政治的な内容に周囲の反応は」という質問に監督は、「自分が住むテルアビブはオープンで政治的に寛容な都市なので、企画した当初反対はなかった」と回答。完成作品を披露した際に、批評家は9割絶賛してくれたが、一般の観客の反応は厳しかったそうだ。監督は「イスラエルの観客はこれほどナイーブなのか」と非常に驚いたという。観客が強く反発したのは、政治や軍隊への批判が込められた部分。「映画は長い人生を持っているものなので、私はいつかイスラエル社会に認められる日が来るだろうと信じています。なぜなら私は、この社会のために映画を作ったからです」と監督は語った。劇場関係者の反応は上々で、公開のオファーが殺到したという。


1128room_3.jpg次に、カタログに掲載されている監督のメッセージの中で「ジャン・ルノワールが定義した"視聴者の民衆化"を尊重している」とあったが、それにはどのような意味が込められているのか、との質問。
「シーンをカットするということは、監督は全てのプロセスをコントロールしていることを意味し、非常に政治的な行為です。しかしルノワールは「私は画面を提示するから、観客自身が何を観たいか決めてほしい」と観客の自由を尊重している。人物の眉の動き、唇の動き、あるいは壁にかかっている絵を観るのでもいい」。バルズィヴ監督はルノワールの映画的言語を取り入れ、「カットしない=長回しを多用する」ことにしたそうだ。
「これは観客の心の中に多くの感情が起こることを許すということ。映画史の中にいる小津安二郎、アンドレイ・タルコフスキー、タル・ベーラ、イランの監督たちなど自分が大好きな監督たちも、このような映画的言語を持っています」


「女性捜査官アナは、自分の任務を忠実に果たし、非常に真面目な性格が表れていたと思うが、一方で上官と514号室で日常的にセックスするという一面も描かれている。映画を面白くするための演出なのか、それとも実際に軍では風紀の乱れがあって参考にしたのか」という質問に対し、監督は、実際に起こったことに基づいているが、セックス自体は愛の交わりであり、何の問題もないと答えた。「主人公アナも一人の若い女性であり、人間の温かさを求めるという、正義と不正義の二面性を持つ魅力的なキャラクターにしたかったのです」と監督は締めくくった。


『514号室』は、11月29日の21:30から、TOHOシネマズ日劇にて再上映される。


(取材・文:大下由美、撮影:穴田香織)


1128room_4.jpg 1128room_5.jpg 1128room_6.jpg





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