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『シャーマンの村』ユー・グァンイー監督Q&A

11月21日、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『シャーマンの村』が上映された。中国東北地区の山間部に暮らす人々を撮り続けているユー・グァンイー監督が、10年以上にわたって寒村のシャーマンたちの生活を撮影したドキュメンタリー作品。上映後のQ&Aにユー・グァンイー監督が登壇した。

フィルメックスへの出品は、前作『独り者の山』(11)に続き4度目となるユー監督は日本語で「皆さん、こんにちは」と挨拶し、「フィルメックスに来るのは、海外というより親戚の家にお邪魔するような感覚」と微笑んだ。本日がワールドプレミア上映となった本作は、中国の黒龍江省五常市で2007年から撮り始め、撮影、編集を経て今日の公開に至るまでに10年の歳月をかけた。「撮影地は中国北東部のハルビンから230キロ離れた地区で、私の故郷もこの村から8キロほどの場所。村のシャーマン達との出会いは2004年に『最後の木こりたち』(07)を撮っていた頃で、その後も交流が続き2007年の秋に本作の撮影をすることになった」

会場からの質疑応答へ移ると、シャーマン文化について様々な質問が寄せられた。中国のシャーマンは現在も数多く存在するといい、医療環境が整っていなかったり医療費が高いなどの理由から、彼らに治療を依頼する風習も多く残っているという。「シャーマンは村人たちの心の拠り所となっている。神の導きに従って人間がどう生きるかということをこの映画で表現したかった」とユー監督。
シャーマンの伝統と民族文化の関係について訊かれると「シャーマンの伝統は少数民族から始まったもの。もとは山東省や河北省に多かったこの風習が、今回の舞台である黒龍江省の漢民族に伝わったのは100年程前」と説明した。シャーマンの儀式には動物の精霊との関わりが強く、劇中に登場した狐のほかに、狼の精霊などとも交信するのだという。

続いての質問は、かつて宗教の弾圧などが行われた中国の文化大革命がシャーマン文化に与えた影響について。「文化革命時代はシャーマン文化のようなものは一切禁止されていた。あの頃のことは暗すぎてあまり話したくないが」と当時を振り返る監督。現在の中国政府はシャーマンの存在については見てみぬふりだというが、それより問題なのは、若者が都会へ出て行き、残ったシャーマンが年老いていく村の現状だとユー監督は語る。「撮影を通し、段々と減っていく老人たちやシャーマンの儀式を見る子供たちなどの村の様相を見て、その大切さを考えた。時代の様々な変化の中でかろうじて残っているシャーマンの風習。それをこの映画で描いたのです」

村人たちと親しげに、近くで動きを追っていくカメラワークが印象的だった本作。大学で映画を学んでいるという観客から撮影技法について訊かれると「私はあまりテクニックは重視していない。映画を撮影する上でもっと重要だと思うことは、撮る人の誠意であり、何を撮りたいかということをいかに強烈に心に持っているかだと思う」と答えた。

以前の記録作品を観た村人たちは、自分たちのリアルな生活の記録が代々受け継がれていくと喜んだそう。「ただ、彼らにとって映画は、国の偉い人や都会の素敵な人達が見るものだと思っているようだ」と監督。
ここで林ディレクターが本作の英題『Immortals in the Village(和訳:村の不死者たち)』に触れ、昨年の審査委員長を務めたトニー・レインズさんによる絶妙なタイトルだと紹介すると、ユー監督が客席のトニーさんに感謝を述べる一場面も。次回作については「故郷の村の周辺で4本撮ったがここで一段落。次は寒冷地を舞台にした劇映画で、やや商業的な作品になると思う」と意外な展開を明かしてくれた。現在は観光地になっているというシャーマンの村。監督が「寒いですが是非遊びに来てください」と観客を誘うと、会場から大きな拍手が贈られた。

精霊たちと暮らす人々の消えゆく文化を記録したユー監督のドキュメンタリー最新作。2回目の上映は23日(木・祝)21:15より、TOHOシネマズ日劇3で行われる。

(取材・文:入江美穂、撮影:吉田留美)


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