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【レポート】『KT』阪本順治監督Q&A

11月30日(土)、阪本順治監督特集上映として、『KT』(02)が有楽町朝日ホールにて上映された。日韓合作で1973年の金大中事件を描いたサスペンスで、第52回ベルリン国際映画際コンペティション部門に出品された。

上映後に阪本監督がQ&Aに登壇し、まずは本映画祭ディレクター・市山尚三が、「どのように本作の企画がスタートしたのか」と質問を投げかけた。
「『ビリケン』(96)を一緒に作ったシネカノンのリ・ボンウ(李鳳宇)さんと、また何かやりましょうとなったときに、2002年FIFA日韓ワールドカップが開催されていました。そこで、日本と韓国の間であったことを認識せず、特に日本が韓国側とシェイクハンドするのはいかがなものかという話がありました」と阪本監督は振り返った。
「その頃の韓国はキム・デジュン(金大中)政権下。いまなら事件の話をストレートに映画化できるのではと李さんが韓国サイドに持ちかけ、ぜひやりましょうとなりました」。

 

劇中に「日帝36年の恨(ハン)」というせりふがあるが、これは脚本を担当した荒井晴彦が「どうしても歴史のそこから始めなきゃいけない」と必要性を感じて入れたせりふだそう。だが一方で韓国公開の際、現地のジャーナリストからは「日本人が韓国人の苦しみをわかったようなふりをしてほしくない」という厳しい意見もあった。
阪本監督は、さまざまな反応も「覚悟の上で作りました」と当時の決意のほどを口にした。

本作は阪本監督にとって初のポリティカルな映画。実際の事件を題材にしたため、恐怖を感じるできごともあったという。「製作準備中にマンションを張られました。告発ではなく、キム・デジュン氏を守る側と拉致計画を実行する側の人間模様を描くのが目的でしたが、僕だけじゃなく皆に緊迫感がありましたね」と回顧した。
当初、阪本監督はキム・デジュン氏を守る側から本作を撮ろうとしたが、結局は彼を拉致する側を物語の中心に据えた。そのほうが観客に伝わるものが多いと考えたそう。「キム氏を殺そうとする側も、国家を背負い、自分と家族の命をかけて計画を実行せざるをえないという背景を、当事者たちに与えたかったんです」。

続いて、観客からは「本作はどれくらい事実に基づいているのか」という質問が挙がった。いくら日韓両方の資料を読んでも不明点は残る。事件の関係者はほぼ行方不明だ。そこで、仮説を立てたという阪本監督。キム・チャンウン(金東雲)がホテルグランドパレスの湯のみに指紋を残した理由を「のちに自身が殺されないための保険」としたのは、もっとも大胆に立てた仮説の一つだそう。
なんと金大中氏本人は、映画を見て「ほとんどこのとおりでしょう」とコメントしたという。
また、佐藤浩市が演じた主人公の富田満州男役にはモデルがおり、彼はいまも興信所で働いていると阪本監督は付け加えた。

物語の終盤、「日本も韓国もアメリカの手の上で踊るイエローモンキーだ」という富田のせりふがある。阪本監督は、「日韓のみの問題として終始してはいけないと思った。本作を見て、いまの日本と韓国の関係、そこにまつわるアメリカの存在に少しでもリンクしていただければありがたいですね」と最後に語って舞台を後にした。

(文・樺沢優希 /写真・白畑留美、明田川志保)


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