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【レポート】『ヴィタリナ(仮題)』 ペドロ・コスタ監督Q&A

11月28日、有楽町朝日ホールで特別招待作品『ヴィタリナ(仮題)』が上映され、上映後のQ&Aにペドロ・コスタ監督が登壇した。本作は、ロカルノ国際映画祭で金豹賞と女優賞を受賞。夫を亡くした主人公ヴィタリナの哀しみを軸に、リスボンの移民労働者の生活が描かれ、陰影の深い映像美が高い評価を得ている。Q&Aでは熱心な観客から質問が相次いだ。

まず、劇中の圧倒的なヴィタリナの存在感を踏まえて、演技面で、俳優と監督との間でどのようなアプローチがあったかという質問があがった。コスタ監督は、ヴィタリナを初めとする出演者全員がプロの俳優ではなかったものの、彼らとの信頼と友情の上に成立した作品であることを強調した。「演技者全員が自分のセリフを自分で書いているため、彼らは俳優であると同時に脚本家を兼ねていました。自分の役割は監督というより、調整役のような存在」と振り返りながら、「私たちがやろうとしたことは、映画において長い間失われてきたやり方。かつては、プロの俳優ではない一般人を起用した作品が多かったけれども、今ではドキュメンタリーに登場するぐらい。一般人を起用して、より深く題材を探ることは少なくなりましたが、このやり方で得るものは大きいと思います」と持論を展開した。

また、本作ではスタンダードサイズが採用されているが、このサイズはコスタ監督の好きなフォーマットだという。「私の映画を培ってきたサイズで、人間をとらえるのに最も適したサイズだと思っています。閉じられた空間で人々がどうリアクションするかを見たいという興味もありました」と画角へのこだわりを語ってくれた。

続いて、ラストシーンの撮影地をめぐる解釈について問われると、「好きに解釈していいですよ」と返したコスタ監督。ラストシーンに至るまでの思いを次のように説明した。「撮影中、私はヴィタリナにずっと寄り添っているという思いでいました。怒りと絶望の中にいた彼女を支え、彼女と共にこの作品を組み立ててきました。しかし、彼女を閉じられた空間に閉じ込めたままにしておくのはフェアではない、彼女を解放したいと考えました。そこで、資金を調達して彼女の故郷カーボ・ヴェルデへ出向き、そこで撮影した3つのシーンがラストになります。」

前の質問とは対照的に、オープニングシーンについても質問が及んだ。コスタ監督は、傷ついた老兵士たちが何らかの儀式から家に戻ってくるイメージを持ちながら、ヴィタリナを迎える準備をするというシーンからストーリーを始めたいと考えていたこと、そして、古代ギリシャやローマの雰囲気を醸し出そうとしていたことも明かしてくれた。

会場では数多くの質問の手が挙がり、Q&Aの時間切れが惜しまれたが、言葉を選びながら質問に丁寧に答えてくれたコスタ監督には盛大な拍手が贈られた。

本作は、2020年夏に東京・ユーロスペースにて公開予定。

 

(文 海野由子、写真・明田川志保、白畑留美)


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