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【レポート】第18回東京フィルメックス ラインナップ発表記者会見

10月5日、アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュにて、第18回東京フィルメックスのラインナップ全25本が発表され、林加奈子東京フィルメックス・ディレクターと市山尚三プログラム・ディレクターが記者会見を行った。林ディレクターは、「今年もただならぬ映画が揃いました。奥深くて楽しい映画ばかり。皆さまの期待を裏切りません」と選定に自信をのぞかせつつ、「たくさんの方々に助けていただき、この日を迎えられ感謝しています」と挨拶した。

コンペティション部門の審査員には、審査委員長として原一男監督、プロデューサーの國實瑞惠さん、韓国から映画祭プログラマーのエレン・キムさん、ドイツからアルセナール芸術監督のミレーナ・グレゴールさん、香港から映画評論家クラレンス・ツィさんを迎える。

 

コンペティション部門には、「ドラマ、フィクション、ドキュメンタリーの垣根を越え、新鮮で挑戦的、ずしんと響く、それぞれに個性的な9本」(林ディレクター)が出品される。フィルメックスに初めて登場するというキルギスのほか、インドネシアから「タレンツ・トーキョー」修了生が手がけた2作品、存在感の増す中国から3作品、日本、台湾、フィリピンからそれぞれ1作品が最優秀作品賞を狙う。

 

特別招待部門には、本年も気鋭の映画作家たちのバラエティ豊かな作品が並ぶ。オープニングを飾るのは台湾のスター、シルヴィア・チャン監督の最新作『相愛相親』。前作『念念』(15)が第16回東京フィルメックスで上映されたことが記憶に新しい。クロージング作品は『24フレーム』で、惜しくも昨年7月に逝去されたアッバス・キアロスタミ監督の遺作とも呼べる作品である。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)の5ヵ国によるオムニバス映画『時はどこへ?』には、ウォルター・サレス監督やジャ・ジャンクー監督が参加している。『サムイの歌』は、本年の「タレンツ・トーキョー2017」でメイン講師を務めるペンエーグ・ラッタナルアーン監督のフィルム・ノワール。『天使は白をまとう』は、中国インディペンデント映画のプロデューサーとして活躍してきたヴィヴィアン・チュウ監督による話題作。『ファンさん』は、フィルメックスではおなじみのワン・ビン監督の最新ドキュメンタリー。日本からは、本年のコンペ審査員長を務める原一男監督の23年ぶりの長編ドキュメンタリー『ニッポン国 VS 泉南石綿村』と、フィルメックス常連の園子温監督の『東京ヴァンパイアホテル 映画版』が出品される。

 

 

「特別招待作品 フィルメックス・クラシック」では、デジタルリマスター作業により甦った2作品を上映する。1つは、ロバート・フラハティ、フランシス・フラハティ共同監督によるサイレント映画の傑作『モアナ(サウンド版)』(1926、1980)。サウンド版は、最初の製作から50年後に、監督の娘モニカ・フラハティが現地で音声を集めて完成させたもので、今回、デジタル復元版の日本初上映となる。もう1つは、昨年も代表作が紹介されたキン・フー監督の『山中傳奇』(1979)。出演者の一人でもあるシルヴィア・チャンさんのトークイベントも予定されている。

 

さらに、「特集上映 ジャック・ターナー」と題して、没後40年を機に再評価の高まるジャック・ターナーを取り上げ、『私はゾンビと歩いた!』(1943)と『夕暮れのとき』(1956)の2作品を紹介する。いずれも35ミリフィルムでの上映となり、ジャンル映画の粋(すい)を届ける。『私はゾンビと歩いた!』の上映後には、黒沢清監督と篠崎誠監督を迎えてのトークイベントを予定している。

 

本年で8回目の映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」も引き続き開催される。近年、世界の映画祭では修了生の活躍がめざましく、着実な成果を得られていることに「誇らしく思う」と語った林ディレクター。本年も選りすぐりの15名のタレンツたちに期待が寄せられる。なお、本事業のプログラムは非公開であるが、公開イベントとして11月23日(木・祝)には「オープン・キャンパス」が予定されている。

 

また、本年のフィルメックスでは、さまざまな視点から映画を考える関連イベントが盛りだくさんである。新企画の<国際批評家フォーラム「映画の現在、そして未来へ」>では、批評家を招いて現在のアジアにおける批評を検証する試みが行われる。作品上映後のトークイベント、字幕翻訳セミナー、親子で映画&聴覚障がい者向け日本語字幕付き鑑賞会<映画の時間プラス>、特定非営利活動法人独立映画鍋との連携企画によるトークイベント「インディペンデント映画ってなんだ!?」も予定されており、フィルメックスは映画と観客をつなぐ映画祭の役割を確実に果たしていく。

 

会見の最後に、ゲストとして原一男監督と園子温監督が登壇し、フィルメックスへの期待とそれぞれの上映作品について語った。これまで『愛のむきだし』(09)、『冷たい熱帯魚』(11)、『BAD FILM』(12)、『ひそひそ星』(16)が紹介されてきた園子温監督は、フィルメックスを「映画祭らしい映画祭」と評し、「フィルメックスで作品を上映できることは常に誇らしく名誉なこと」と語った。今回上映される『東京ヴァンパイアホテル 映画版』は、すでにAmazonプライムでドラマシリーズとして配信されている「東京ヴァンパイアホテル」の特別編集版である。諸事情により日本での劇場公開は未定のため、「フィルメックスでの上映は貴重な機会。ぜひご覧いただきたい」と期待を込めて語った。
続いて、コンペ部門の審査員長を務める原一男監督は、フィルメックスに強く興味を抱くきっかけとなったエピソードを紹介。それは、昨年、審査委員長として参加した上海国際映画祭でチベットのペマツェテン監督と話をした際に、ペマツェテン監督がフィルメックスでの2度の受賞 [『オールド・ドック』(11)(第12回東京フィルメックス最優秀作品賞)、『タルロ』(15)(第16回東京フィルメックス最優秀作品賞)] について誇らしげに語っていた姿がとても印象的だったことだという。今回縁があって審査員を引き受けることになり、「とても楽しみにしています」と語った。そして、今回上映される『ニッポン国 VS 泉南石綿村』は、8年にわたる大阪・泉南アスベスト国家賠償請求訴訟を巡る人間模様を描いた作品であるが、「過激な主人公を選んだ以前の作品とは異なり、普通の人たちを撮るのは難しかった。私にとっては冒険的な作品」と撮影を振り返った。

 

第18回東京フィルメックスは11月18日(土)から26日(日)まで、有楽町朝日ホールとTOHOシネマズ 日劇にて開催される。チケットの発売は11月3日(金・祝)。有楽町朝日ホールでの上映回はセブンチケットでの取り扱い、TOHOシネマズ 日劇での上映回はインターネットチケット販売vitまたはTOHOシネマズ 日劇チケットカウンターでの発売となる。25歳以下の割引料金「U-25割」は今年も適用される。詳細は、公式サイトにて確認されたい。

 

(取材・文:海野由子、撮影:白畑留美)


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