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『サムイの歌』ペンエーグ・ラッタナルアーン監督Q&A

11月21日(火)、有楽町朝日ホールにて特別招待作品『サムイの歌』が上映された。本作はヴェネチア映画祭「ヴェニス・デイズ」部門のオープニングを飾った、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督の最新作。上映後には、ペンエーグ監督を迎えて活発な質疑応答が行われた。東京フィルメックスでは、第10回のコンペティション作品として『ニンフ』(09)が上映されたが、その時は監督の来日がかなわず、今回、満を持しての登壇となった。ペンエーグ監督は、「今度こそと思って来日することができました。観客のみなさん、寝ずに残っていただきありがとうございました」とジョークを交えて挨拶した。

まず、司会の林加奈子 東京フィルメックス・ディレクターが、本作を、謎深く、独特で、多くの工夫や仕掛けに溢れた作品と評し、理解の手がかりとして、終盤の展開からペンエーグ監督に紐解いてもらうことになった。ペンエーグ監督によると、「複雑なものは何もない」という。「多くの人が劇中劇だと解釈しているようだが、自分としてはシンプルな展開なのです」と語った。

続いて会場からの質疑応答に移り、監督はひとつひとつの質問に丁寧に答えた。劇中の性描写と絡むレーティングについて、本作はタイでまだ公開されていないもののR18指定で編集せずに上映可となり、ペンエーグ監督自身の映画としては初めてカットなしで通過したという。また、主役4人のキャスティングの経緯について、フランス人男性役は、ペンエーグ監督の友人でファッション誌のカメラマンだがオーディションで選ばれ、あとの3人はオーディションではなく、監督の中で演じてもらいたいと考えていた俳優たちに自然な流れで決まったとか。

次に、主人公の女性が最終的に至った状況について訊かれると、「カメラが主人公の瞳をのぞきこみ、そこでフリーズすることにより、主人公には選択肢がないことを理解してもらいたかった」と説明したペンエーグ監督。さらに、整形、生肉など、劇中のさまざまな仕掛けに質問が及び、林ディレクターが「聞けば聞くほどわからなくなり、ブニュエルを思い出します」とコメントする一幕も。それに対してペンエーグ監督は、「映画を制作するとき、私の弱点はセルフコントロールができないことです。制作途中で奇抜なこと、奇妙なことを思いつくと、やりたいと思う衝動が理性に打ち勝てなくなり、後で説明がつかなくなることがあるのです」と自身の制作スタイルを冷静に振り返った。

最後に、ペンエーグ監督は本作の着想について、「スーパーマーケットで買い物をしているカップルを見て、そのカップルがどのような生活を送っているのかと想像を膨らませました。それが本作の原点です。そのカップルは、まさか自分たちがこんな恐ろしい映画の題材になっているとは思いもしないでしょうけれど」と明かしてくれた。この着想について、林ディレクターが「本当にペンエーグ監督のイマジネーションの凄さには驚かされます」と応じ、ペンエーグ監督の独特な世界観に魅了された会場からは大きな拍手が寄せられ、質疑応答が終了した。

本作の2回目の上映は、11月24日(金)、有楽町朝日ホールにて行われる。

(取材・文:海野由子、撮影:村田麻由美)


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