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学生審査員座談会

東京学生映画祭主催の「学生審査員賞」も、今年で7回目。3人の学生審査員がコンペティション部門の作品を対象に審査し、賞を決定する。本年度の学生審査員は本年の東京学生映画祭で観客賞・審査員特別賞を受賞した『春みたいだ』のシガヤダイスケさん(日本大学芸術学部卒)、『チョンティチャ』がグランプリを受賞した福田芽衣さん(東放学園映画専門学校卒)、第29回東京学生映画祭企画委員の鈴木ゆり子さん(国際基督教大学)。シガヤさん、福田さんと同映画祭企画委員の久米修人さんを加えた3名で、映画への愛と、学生審査員賞に対する思いを語ってもらった。司会は東京フィルメックス事務局の岡崎匡。

 

ーー映画を見るようになったきっかけ、映画に関する最初の思い出を聞かせてください。

シガヤ「おじいちゃんがすごく映画が好きで、『仁義なき戦い』なんかを幼稚園くらいから見せられていて…(一同笑)。その後は『ジュラシック・パーク』を見せてもらって、それから映画が好きになって。
自分で撮りたいなって思ったのは、高校生の時に園子温監督の『ヒミズ』を見たことがきっかけです。それが自分にとって初めての園子温映画で。今ではまた別の感想もあるんですけど、15、6歳の自分にしてみればめちゃめちゃ感動したんです。結構大きな劇場で見てたんですけど、客席の中で一番泣いてたって自信があるくらい。そこから、さらに映画を見るようになったって感じです」

福田「私は昔から映画を見てたわけではなくて、父親の見ていた香港映画やアクション映画をちらっと見て、かっこいいなと思ってたくらい。高校時代はずっと陸上部に打ち込んでいたので、映画を見ることもあまりなかった。でも、大学2年のときに怪我をして走れなくなって。その直後はやることがなくなってしまって、部屋に引きこもって3ヶ月間ずっと映画ばかり見てたんです。そのうちに、陸上をやめざるをえなかった絶望を、映画によって救われた気がしました。じゃあ、映画しかないじゃん、って」

ーー時間を持て余したときに、他の娯楽ではなく映画を選んだのはどうしてでしょうか。

福田「大学に入ってからは、陸上のかたわら、たまに映画を見るようになっていたんです。群馬の田舎で寮生活してたんですけど、他に娯楽もなくて、練習がてらレンタルビデオ屋まで走っていく、っていうのにハマってて(笑)。園子温監督の『愛のむきだし』を見たときに、部活ひとすじで恋愛もしてこなかったから、映画の中ってすごいことが起こってるな〜!って(笑)」

久米「僕は小さい頃、オーストラリアに住んでたんです。周りに日本人がいないし、内向的な性格だったので、親が心配して『メリー・ポピンズ』や『オズの魔法使い』とかミュージカル映画をずっと流してて。その後は『スター・ウォーズ』を。映画を見ることは、英語の勉強を兼ねてました。
小学1年生の頃に見た『フォレスト・ガンプ』が印象に残ってて、それからずっと映画を見てるような気がします。中学生くらいになったら、トリュフォーとか見るようになって。そんなの見る俺ってカッコいい、と思って見たんですけど(笑)『大人はわかってくれない』なんてやっぱりびっくりしました。それまではずっとハリウッドのメジャー作品を見てたから、こんな映画があるんだ、って…その場にいる感覚っていうか。今でも映像の記録性みたいなことに興味があるんですけど」

ーー映画を見るのが好き、という人は多いわけですが、シガヤさんと福田さんは、そこから自分で作ろうって思ったわけですよね。作る方へ踏み出すきっかけというのはどんなことだったんでしょうか

シガヤ「作りたいっていうのは中学の終わりくらいから思っていて。高校は芸術系の学校とかでは全然なくて、周りにも映画好きの人間がいるわけじゃなかったですけど、小さいハンディカムで友達を撮ったり、ってことをやってました。
日本大学芸術学部の映画学科を受けるとき、最初は撮影・録音コースに行こうとしてたんです。でも、『ヒミズ』を見た時にやっぱり技術の方じゃなくて監督がやりたい!って思って」

福田「なんで作ろうって思ったんだろう…って、質問されていま初めて考えてるところです。やることなくて映画をとりあえずやってみようって専門学校に入って。私も最初は撮影部志望だったんです。半年くらい撮影をやってたけど、なんか楽しくなくて。好きな映画を作ってるはずなのに、これって違うのか?って。半年経った頃、文句言うなら自分で書いてみろって知り合いに言われたんです。講師の方々も「お前自身を考えてみろ、それが映画だよ」みたいなこと言っていて。自分のことって映画になるのかもしれない、と思って、それで初めて監督をさせてもらったんですが、それがきっかけです。やりたい!って思ってやったというわけではなかったかもしれないけど、1本撮り終わったときに「あ、なるほど」って。映画って、こうやって作るんだ、面白いなって。私自身も映画で引きこもりを脱したから、なんか、いけるんじゃないか、って。自分自身では映画にたくさん影響を受けてきたけど、1本目を撮る前は自分の作る映画で人に影響を与えることができるって意識がなかった。それが変わったんです。作品の感想貰って、作ってる自分が楽しむためのものじゃなくて、そういう力があるんじゃないかって思えるようになった」

ーー久米さんは、東京学生映画祭の企画委員として、「映画を見せる」方の立場なわけですが、それに興味をもったのはどうしてですか?

久米「僕も、作ってみたいという気持ちになったことはあるんです。だけど、写真1枚撮るだけでビビっちゃって。フレームを決めることができないんです。いまだに携帯に一枚も写真入ってないくらい」

シガヤ「それは逆にすごい(笑)」

久米「だから、大人数のスタッフに指示して決めて…なんてのは無理だな、と(笑)
映画って、基本的に存在が曖昧なもので、観客に見られることがなければ死んでしまうんだと思っていて。だったら、あまり人の目に触れないような作品でも、少しでも救ってあげなきゃって思ってるんです。
映画祭の審査会とかで、普段喋らないようなやつらといろいろ熱く語りあったりしてると、特別なことが起こってるんだって感覚がある」

ーー普段、皆さん映画館に足を運びますか?好きな映画館なんてありますか?

久米「僕はK’s cinemaですね」

福田「新宿武蔵野館とポレポレ東中野かな。ユナイテッドシネマとしまえんが穴場で、オススメです」

ーー大きなスクリーンで見るのはやっぱりいいですよね。

シガヤ「わかります。僕は見たいのが複数館でやってる場合は、できるだけ大きな劇場に行きますね」

久米「僕は映画館に行く時はお客さんも観察します。周りがいいお客さんだといいなあ、って」

シガヤ「映画館じゃないとできない鑑賞体験ってありますよね。以前、『10 クローバーフィールド・レーン』を見てたとき、終盤のドッキリ展開の瞬間に隣に座ってた男の子が「マジかよ!!」って大声で叫んだのがすごく印象に残ってます(笑)」

福田「そういう意味だと、関西の映画館は面白いですよ。ホラー映画見てると「あ〜、そっち行ったらアカンて…」「そういうことするからもぅ〜」みたいな声聞こえてきたり(笑)」
シガヤ「『LOVE【3D】』見てたら途中でカップルが退席しちゃったんですけど、なんでギャスパー・ノエ見に来ちゃったんだろうって思った(笑)」

 

ーー映画を見る時に、どうやって情報を集めていますか。この映画が見たいって思うきっかけってなんでしょうか。

福田「私はポスタービジュアルから入ります。映画館でフライヤーたくさん集めたりとか」
シガヤ「僕は予告編が大好きなんで、Youtubeで見まくります。劇場やDVDの予告編も超楽しみにしてます。本編見たら全然違っててがっかり、も結構あ

るんですけど」

福田「ツイッターの映画情報アカウントなんかも参考にします」

久米「僕は、見たことない国の映画だと興味ひかれます。あんまり人が見ない映画を僕が見てやろう、って」

シガヤ「Filmarksも使いますね」

久米「僕は人のレビューはそんなに参考にしないけど、自分用にFilmarksに鑑賞記録を書いています。蓮實重彦さんの文章を読んで、自分で咀嚼して解釈しておかないと、きちんと鑑賞したことにはならないんだなと思って。いろんな映画祭に行ってディレクターの方のお話聞いていると「見ること」がうまい人が多いので、それが悔しくて」

 

ーーシガヤさんと福田さんは、映画祭に行くことはありますか?

シガヤ「僕はあまり…ぴあフィルムフェスティバルも行ったことがなくて」

ーーそれでもエントリーして、入選しちゃったんですね(笑)

シガヤ「ぴあの人にばれたら怒られる(笑)。でも、自分で作ってるなら行かないといけないな、って思ってて。見に行かないと戦えないっていうか、ライバルたちの作品見て、どうやって攻略していくか考えたり、自分の立ち位置も知ったりしないといけない。僕はそういうことを知らなかったから、これからはいろいろな映画祭に行こうと思ってます。だから学生で映画撮ってる人たちは、今のうちから足運んでほしいなって思います」

久米「どんな映画祭でも、シンポジウムが開催されたりしている。だから映画祭がいちばん、ちゃんとした映画学校なのかなって思ってます」

福田「私も自分で撮り始めてから行くようになりました。後輩や同期たちは、あまり自主映画のことを知らないんです。自主映画って熱がすごいじゃないですか。そういうのを、私たちは撮らなきゃいけないのに、他の作品を見ないままに作るっていうので、温度の差が出てきてうまくいかなくなるってことがあって。自主映画ってやっぱり映画祭じゃないと見れなかったりするから、映画祭って映画の出会いの場として成功体験になってる」

ーー今年のフィルメックスのラインナップで気になる作品ってありますか?

久米「僕はジャ・ジャンクーが大好きなので『時はどこへ?』がみたいです。キアロスタミの『24フレーム』は絶対見ます」

シガヤ「『ニッポン国VS泉南石綿村』は見たいです、長いですけど。あと五十嵐耕平監督のファンなので『泳ぎすぎた夜』が見れるのはすごく嬉しいですね」

福田「いま書いてる脚本が家族の物語だから、『相愛相親』は見たいです。最初の映画体験が香港映画だったのもあって、中国語圏の映画は好きで。『天使は白をまとう』も気になる。女の子が主人公の映画が好きなんです」

ーー最後に、学生審査員として参加するにあたっての意気込みをお聞かせください。

久米「僕たちの世代には、映画文化を未来につなげていく使命があると思っています。学生審査員たちがどのように映画を見て、何を感じるか、そして全部終わったときに何が残っているか。僕はお世話係として外側から審査員の3人を見て、それを探したいなと思っています」

福田「こんなに短期間に集中して映画を見るってあまりない経験だから、全部感情移入しちゃって精神を削られそうな気もします(笑)。世界中の監督のさまざまな「眼」を通して、自分自身を広げられたらいいなって思ってます。映画館に引きこもるっていうのがも、単純に楽しみです」

シガヤ「コンペ作品に新人の監督も多いので、僕が映画監督としてこれから戦いたいって思えるような作品に出会えたらいいなって思います。それで家帰って落ち込んじゃったりね(笑)。それも楽しみにしてます」

ーーシガヤさんの『春みたいだ』、福田さんの『チョンティチャ』、両作品とも非常に技術的なレベルが高く、感心しました。どちらも身近な人の体験から出発していて、半径数メートルの狭い範囲の物語でありながら、扱うテーマはスケールが大きく、普遍的なものです。この人たちが今後どんな映画を撮っていくのかということが楽しみになるような作品でした。そういった若い監督たちに、学生審査員賞を選んでいただけることはとても光栄です。今日は、ありがとうございました!

福田芽衣監督作品『チョンティチャ』は京都国際学生映画祭のコンペティション部門に出品され、11月25日と29日(両日とも17:35より)に上映される。シガヤダイスケ監督作品『春みたいだ』は第27回映画祭TAMA CINEMA FORUMで11月25日(15:20より)、12月19日にはテアトル新宿でレイトショー上映の予定。

 

(聞き手:岡崎匡、構成:花房佳代、撮影:飯村真子)


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