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『セーラー服と機関銃』トーク(ゲスト:黒沢清監督)
from デイリーニュース2011 2011/11/21
11月21日、東銀座・東劇で開催中の「相米慎二のすべて~1980-2001 全作品上映~」にて、『セーラー服と機関銃』(81) が上映された。上映後にはトークイベントが行われ、本作品で助監督デビューをしたという黒沢清監督がゲストとして登壇した。司会は長年相米作品で助監督を務めてきた映画監督の榎戸耕史さん。というわけで、"助監督対談"となった今回のトークイベントは、当時の撮影秘話で大いに盛り上がった。
本作品の助監督として美術と小道具を担当したという黒沢さんは、機関銃を用意するために分厚い外国の資料を読み、悩みに悩んでいたという。「ちょうど当時、リドリー・スコットが大阪で『ブラック・レイン』(89)の撮影をしていて、M3という機関銃を使っているという情報を入手したんです。そこで試射してみたのですが、もうこれしかない、というほどの迫力がありまして」と、その感触と当時のエピソードを披露した。結局、M3と同型のステージガンを使用することになったのだという。
ヒロインの薬師丸ひろ子が機関銃をぶっ放し、「カ・イ・カ・ン」とつぶやくシーンでは、破裂して飛び散った瓶の破片が彼女の顔面に当たり(鼻のすぐ脇)、軽く出血する傷を負ったが、実はこのシーン、黒沢さんが大いに関係していたようだ。弾薬を仕掛けた瓶が破裂するため、薬師丸さんが安全ラインを越えた時は黒沢助監督が「カット」をかけてそのシーンを止めなければならなかったというが、「何度かテイクを重ねているうちに薬師丸さんがそのラインを越えてしまったんです。でもこのテイクはOKになりそうだという直感がありました。止めたらアウトになってしまう。で、止めなかった」。薬師丸さんは怪我を負ったことに気づかなかったそうだが、血がすうっと流れる様子ははっきり映っている。「止めるべきだったんですが・・・」と黒沢さんは語るが、主題歌のレコードジャケットでも頬から血を流した写真が使われるなど、本作品を代表する名シーンとなっている。
相米監督といえば、長回しのカットと何度もテイクを重ねることで有名だが、その印象について黒沢さんは、「こうして改めて観ると、何度も撮っているということを感じさせないですね」とコメント。榎戸さんは、「相米さんは『26回目が一番良かった』などと言ってましたが、そこまで把握してる人は他に誰もいませんでしたね(笑)」と、妥協のない過酷な撮影状況をほのめかすように当時を振り返った。
最後に榎戸さんは今秋出版された『甦る相米慎二』(インスクリプト)を紹介。それを読んだお二人はかなり驚いたそうだ。「現場では何も説明しない人だったのに、こんなに論理的に考えてたのかとびっくりしました」と黒沢さん。榎戸さんも頷きながら、「この作品ではこういうことを実験的にやってみたとか、この手法が通用するか試してみたとかね。当時話してくれれば撮影ももっとスムーズにできたのに(笑)」と少し悔しそうに語った。
「相米慎二のすべて~1980-2001 全作品上映~」は11月25日(金)まで連日、東劇にて開催。
(取材・文:鈴木自子、撮影:永島聡子)
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