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特集上映「相米慎二のすべて ~1980-2001全作品上映~」






『雪の断章 -情熱-』 Yuki no Dansho - Jonetsu
1985 / 100分
©1985 東宝
出演:斉藤由貴、榎木孝明、世良公則

【作品解説】
斎藤由貴を主演に迎え、いわゆる「アイドル映画」の枠組みの中で孤児だった少女が思春期を迎えるまでを描いた作品だが、長回しを多用した画面の緊張感にはただならぬものがある。特に物語の前段に当たる少女期の複数のエピソードをワンカットで描いた冒頭の長回しはあまりにも有名。





相米慎二

1948年、岩手県盛岡市に生まれる。71年、中央大学文学部を中退し、日活撮影所に契約助監督として入所。その後フリーとなり、長谷川和彦、寺山修司らの助監督をつとめる。80年、『翔んだカップル』で監督デビュー。続く第2作『セーラー服と機関銃』(81)はその年の日本映画を代表する大ヒットを記録する。これら2作品は薬師丸ひろ子を主演に迎えた商業映画であったが、長回しを多用した大胆なカメラワーク、また俳優に対する厳しい演技指導など、独特のスタイルが映画ファンの間で大きな話題を呼ぶ。82年、長谷川和彦の呼びかけによってディレクターズ・カンパニーの設立に参加。その後も『魚影の群れ』(83)、『ションベン・ライダー』(83)、『雪の断章-情熱-』(85)などの話題作を監督。唯一のにっかつロマンポルノ作品である『ラブホテル』(85)も高い評価を受けた。85年に開催された第1回東京国際映画祭では『台風クラブ』がヤングシネマ大賞を受賞、審査員をつとめたベルナルド・ベルトルッチに絶賛される。同作品はフランスやアメリカなど海外でも公開され、相米慎二の海外での評価のきっかけとなる。93年、『お引越し』(93)がカンヌ映画祭「ある視点」部門で上映。『あ、春』(98)はベルリン映画祭パノラマ部門に選ばれ、国際批評家連盟賞を受賞。同時にキネマ旬報ベストテンの第1位に選出される。2001年には『風花』がベルリン映画祭フォーラム部門で上映。その後新作の撮影に向けて準備を行っていたが、同年9月9日、肺がんにより53歳の若さで急逝。その13本の監督作品は多くの監督たちに影響を与え続けている。












11/24『雪の断章−情熱−』トークイベント/伊地智 啓、小川 富美夫
from ブロードキャスト 2011/11/24


 
11/24『雪の断章ー情熱ー』
トークイベント/ 東劇
伊地智 啓 (プロデューサー)
小川 富美夫 (美術)
榎戸 耕史(映画監督)
 
Talk Session / Togeki
IJICHI Kei (Producer)
OGAWA Fumio (Production Design)
ENOKIDO Koji (Director)
 
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『雪の断章 -情熱-』
1985 / 100分
監督:相米慎二
 
Yuki no Dansho - Jonetsu / Yuki no Dansho - Jonetsu
1985 / 100 min.
Director: SOMAI Shinji





新情報は順次、追加されます。


『雪の断章ー情熱ー』トーク(ゲスト:伊地智啓さん、小川富美夫さん)
from デイリーニュース2011 2011/11/24

1124yuki_01.jpg第12回東京フィルメックスの特集上映として東銀座・東劇で、「相米慎二のすべて〜1980-2001 全作品上映〜」と題し、没後10年を迎えた相米慎二監督の全13作品上映が行なわれている。11月24日には1985年の『雪の断章-情熱-』を上映。終了後には本作のプロデューサーだった伊地智啓さん、美術を担当した小川富美夫さんによるトークショーが開催された。聞き手は、助監督として数々の相米作品を支えてきた榎戸耕史監督。相米作品の製作過程を間近で体験したゲストの話に、観客は熱心に耳を傾けていた。


トークショーの前に、榎戸監督が『雪の断章-情熱-』主演の斉藤由貴さんからのメッセージを読み上げた。『雪の断章』の時は怖かった相米監督だが、12年後に『あ、春』(98)のオファーがあった時、時間が経って自分がどう感じるのかを知りたくて出演した、との言葉に続いて、「結果的に『あ、春』の撮影を通じて、人間はみな人生の変化の中で生きており、同じ人との仕事ですら、二度と同じではないと感じました。その時から、相米さんの子どものような純粋なところが、とても好きになりました」と、相米監督への想いが伝えられた。


1124yuki_02.jpg続いてゲストの伊地智啓さん、小川富美夫さんが拍手に迎えられて登壇すると、話題の中心は、語り草になっている冒頭のワンカット長回し撮影の場面。相米監督と言えば、"長回し"が枕詞になっているが、本作では幼少時の主人公・伊織と榎木孝明さん演じる雄一の出会いを、延々15分近くに及ぶワンカットで撮影。榎戸監督の話によると、このエピソードだけで、シナリオにして22ページ、シーンの数にして18か19ぐらいあったという。長いワンカット撮影となると、準備に時間がかかる上、すべて終わるまでやり直しがきかないため、失敗した場合は大きなロスになる。榎戸監督は、最初にこれをやると聞いた時に、撮影を許可するプロデューサーとは、一体どんな人だろうと思ったと言う。デビュー作『翔んだカップル』(80)以来、数々の相米監督作品をプロデュースし、相米慎二の"生みの親"ともいえる伊地智さん。榎戸監督の言葉に対して「最初にワンカット撮影があったわけじゃなくて、東宝の一番大きなステージを使えることになって、相米もいたずら心から、それをどう使おうかと考えたわけ。あのステージをどうやって攻略するか、と。遊び心から始まっているところが、相米映画の面白さ」と、"生みの親"らしい言葉で返した。


1124yuki_03.jpgさらに、榎戸さんと小川さんがこのシーンの撮影方法やセットの組み方などについて語った。本来は、ある程度の時間が流れるエピソードであるため、昼夜はもちろん、天候も雪や晴れなど頻繁に変わってゆく。ライティングなどを含めて、相当苦労したらしい。必要な映像を作り上げるためには家のセットを回転させる必要があり、これを動かすスタッフが8人。さらに、雪を降らせるスタッフが20人。この規模で一週間もリハーサルを行い、ようやく撮影...。しかし、仕上がりが気に入らなかったのか、一度リテイク(再撮影)になったという。この他、真夏に雪景色を再現した苦労話、桜の木を立てて春先の風景を撮影した話、東宝の大プロデューサーだった田中友幸氏にまつわるエピソードなど、数々の秘話を明かしてくれた。


最後に、相米監督とはどんな人だったのかと尋ねられた伊地智さんは、「仕事はやりやすかったですよ。脚本作りは完全にこちらに任せたという感じで、第一稿ができるまでは動かない。出来てもなかなかクランクインまでは立ち上がろうとしないんですけれど。これが一番悪い癖でしたね」。一方、小川さんにとっては本作が美術担当として参加した初の相米作品。「仕事はとてもやりやすい方でした。何か参考になるものは必ずくれるんですよね。考えてこいと。僕は割と絵コンテ描く方なんで、描いちゃ渡して...。その通り撮ったことはないんだけれど、でも、どこかには生かしていたんでしょうね」。お二人ともに仕事のやりやすさを挙げたところに、生前の相米監督の素顔が垣間見えた。


時間の都合もあり、以上でトークは終了。ゲストのお二人は、惜しまれつつステージを後にした。


(取材・文:井上健一、撮影:永島聡子)

1124yuki_04.jpg 1124yuki_05.jpg 1124yuki_06.jpg





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