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特集上映「相米慎二のすべて ~1980-2001全作品上映~」






『翔んだカップル』 Tonda Couple
1980 / 121分
©1980 東宝
出演:鶴見辰吾、薬師丸ひろ子、尾美としのり

【作品解説】
柳沢きみおの人気漫画を原作に、手違いから一軒家で同居することになった高校生の男女の日々を描き、思春期の苦悩と歓喜を見事に活写した相米の監督デビュー作品。長回しやロングショット等、相米演出に特徴的だといわれるいくつかの手法が、この作品においてもすでに多用されている。




相米慎二

1948年、岩手県盛岡市に生まれる。71年、中央大学文学部を中退し、日活撮影所に契約助監督として入所。その後フリーとなり、長谷川和彦、寺山修司らの助監督をつとめる。80年、『翔んだカップル』で監督デビュー。続く第2作『セーラー服と機関銃』(81)はその年の日本映画を代表する大ヒットを記録する。これら2作品は薬師丸ひろ子を主演に迎えた商業映画であったが、長回しを多用した大胆なカメラワーク、また俳優に対する厳しい演技指導など、独特のスタイルが映画ファンの間で大きな話題を呼ぶ。82年、長谷川和彦の呼びかけによってディレクターズ・カンパニーの設立に参加。その後も『魚影の群れ』(83)、『ションベン・ライダー』(83)、『雪の断章-情熱-』(85)などの話題作を監督。唯一のにっかつロマンポルノ作品である『ラブホテル』(85)も高い評価を受けた。85年に開催された第1回東京国際映画祭では『台風クラブ』がヤングシネマ大賞を受賞、審査員をつとめたベルナルド・ベルトルッチに絶賛される。同作品はフランスやアメリカなど海外でも公開され、相米慎二の海外での評価のきっかけとなる。93年、『お引越し』(93)がカンヌ映画祭「ある視点」部門で上映。『あ、春』(98)はベルリン映画祭パノラマ部門に選ばれ、国際批評家連盟賞を受賞。同時にキネマ旬報ベストテンの第1位に選出される。2001年には『風花』がベルリン映画祭フォーラム部門で上映。その後新作の撮影に向けて準備を行っていたが、同年9月9日、肺がんにより53歳の若さで急逝。その13本の監督作品は多くの監督たちに影響を与え続けている。












11/21『翔んだカップル』トークイベント/鶴見 辰吾
from ブロードキャスト 2011/11/21


 
11/21『翔んだカップル』
トークイベント/東劇
ゲスト:鶴見 辰吾(俳優)
聞き手:榎戸 耕史(映画監督)
 
Talk Session / Togeki
Guest: TSURUMI Shingo (Actor)
MC: ENOKIDO Koji (Director)
 
----- * ----- * ----- * ------
『翔んだカップル』
1980 / 121分
監督:相米慎二
 
Tonda Couple / Tonda Kappuru
1980 / 121 min.
Director: SOMAI Shinji





新情報は順次、追加されます。


『翔んだカップル』トーク(ゲスト:鶴見辰吾さん)
from デイリーニュース2011 2011/11/21

1121tsurumi_01.jpg第12回東京フィルメックスの特集上映として東銀座・東劇にて開催中の「相米慎二のすべて〜1980-2001 全作品上映〜」、11月21日には相米慎二監督のデビュー作『翔んだカップル』(1980)の上映が行われた。上映後のトークには主演を務めた鶴見辰吾さんが登場。司会は長年助監督を務めてきた映画監督の榎戸耕史さん。


この作品をスクリーンで観たのは30年ぶりという鶴見さん。「いまだにドキドキしました...無計画というか、何も考えずに演技してるなあ、と」とやや興奮した様子で語った。
撮影当時は15歳。映画出演は初めてだったものの、「3年B組金八先生」などTVドラマで演技の経験を積んでいた鶴見さんだが、「監督には「金八先生」みたいに辛気くさい芝居はするな、と言われました(笑)」。
ソファの上でゴロゴロしたり、制服のネクタイを捻ったり...俳優たちはセットの中におとなしく座ってはいない。鶴見さんは「現場ではどんどん野放図になっていきましたね。たっぷり一日かけて1カットを撮影という現場で、緊張が削ぎ落とされていって、勝手に動けるようになっていきました。監督の指示は、抽象的なことばかり。「俺も分かんないから、お前自分で考えろ」って」と回想する。


1121tsurumi_02.jpg夜、大雨の中、傘を持って歩くシーンでも、求められたのは自由な動き。「若かったから、くるくる回してりゃいいと思って(笑)。監督には「お前、傘の芝居で日本一、ってのをやってみろ」と言われたんです。そういう言い方なんですよね。"ここで何歩歩いて、何秒後に振り返って..."なんていう具体的な指示はなくて、いつも役者に自分からひねり出させていた」


撮影が始まる前、鶴見さんが監督との初めての面談でまず訊かれたことは「お前、飯食うの速いか?」だったそう。「遅いって言ったら役をおろされると思って「はい」と答えた」というが、確かにこの映画には食事シーンが多い。鶴見さんは「今日観ていて、味が蘇ってきました」と懐かしそうに語った。「ラーメンライスの麺が伸びてたこととか、それから石原真理子演じる杉村と一緒に食べたステーキは旨かったな。もやし炒めを食べるシーンでは、最初はたくさんあったのに、延々とテイクを重ねているうちに美術さんが用意したもやしが無くなってしまって...(薬師丸)ひろ子ちゃんが、自分の食べる分をセーブして僕の分を確保しながら演技していたのを覚えていますね。これ食べ終わったらもうもやし無いですよ!って(笑)」と、現場のアットホームな様子を垣間見せるエピソードを披露した。


1121tsurumi_03.jpg時に演じる俳優に苦痛を強いながら、ゆっくりと時間をかけて俳優の演技をひきだしていく相米監督の演出だが、鶴見さんは「これが映画初出演だったから、映画ってこういうもんなんだ、って思った」そうだ。「その後出た映画では、いやにスパスパ撮ってくなあと逆に物足りないくらい。若い俳優がかかってしまう"相米病"ってやつで...あの現場を経験すると、他の現場で消化不良に陥ってしまうんですよね」


"相米病"のいわば最初の患者となった鶴見さんは、その後5作目の『台風クラブ』(85)と、遺作『風花』(01)にも出演している。『風花』では小泉今日子さん演じるヒロインの死んだ夫を演じた。「最初はもっと暴力亭主だったんですが、「お前は最近乱暴者の役が多いから」と、(良い夫役に)書き換えられました(笑)」
「相米作品は年代ごとに変化していったとよく言われますが、初期、中期、後期の3作品に出演されて、変化は感じましたか?」と榎戸さんが問いかけると、「僕自身も演じ手として変わっていったし、監督の僕への接し方も変わっていったから、違いは確かにあった。でも、表現したいこととか作り方とか、根っこの部分は変わってないと感じました」と鶴見さん。


最後に、「ズバリ、相米監督の魅力は?」という榎戸さんの質問に、鶴見さんは「相米さんは、僕の知ってる唯一の芸術家。人間関係において作品作りにおいても裏表がない。信念をがむしゃらに貫いていく、ってところはないんだけど、いつのまにか"自分の作品"をスルッと撮っちゃう人。不思議な人ですよね」と感慨深げに語った。


30年まえのご自分の演技に「今ではこんな自由な動きはできないな...」としきりに感心した様子だった鶴見さん。「亡くなって十年経ちましたが、これからも皆さんに相米作品を観ていってほしい」という榎戸さんの言葉に鶴見さんも深く頷いて、「本当に面白いシーンがたくさんありますからね。今回の13作品上映という企画はほんとうにすごい。みなさん、どんどん他の作品も観てください」と会場に呼びかけ、トークイベントは終了となった。


(取材・文:花房佳代、撮影:永島聡子)

1121tsurumi_04.jpg 1121tsurumi_05.jpg 1121tsurumi_06.jpg





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