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『見えるもの、見えざるもの』カミラ・アンディニ監督Q&A

11月25日(日)、TOHOシネマズ日劇3でコンペティション作品の『見えるもの、見えざるもの』がレイトショー上映された。本作は、バリ島を舞台に、生と死に向き合う双子の姉と弟の結びつきを描いた幻想的な物語。上映後にはカミラ・アンディニ監督が登場し、質疑応答が行われた。質疑応答を前に、司会の市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターから、直前に行われた授賞式で本作が『殺人者マルリナ』(モーリー・スリヤ監督)と共に最優秀作品賞を受賞したことが報告され、会場から大きな拍手が寄せられた。

さっそく、本作の制作のきっかけについて尋ねられると、「2本目の長編では自分自身についてもっと探求したい、インドネシア人でありクリエイターである私とは何者なのかということを追及したい」と考え、5年がかりで練り上げた物語であったことを明かしたアンディニ監督。また、バリには「スカラ、ニスカラ」という言葉があり、英語では「見えるもの、見えざるもの」を意味するこのデュアリズムに関する概念が、自分自身を追及する上でぴったりだったという。

続いて、劇中で素晴らしい演技とパフォーマンスを見せた少女について話が及んだ。監督自身も少女の演技には驚かされたそうだが、キャスティングは難航し、撮影が始まる直前になってようやく見つけたのが彼女だったという。バリの子供たちは生まれながらのパフォーマーで、歌って、踊って、演奏することは彼らにとって日常の一部であることから、パフォーマンスの空間に余計な手を加えないような撮影手法を用いた。彼らのパフォーマンスには対話があると考え、あえて音楽も挿入しなかったとか。

さらに、本作の舞台となっているバリ島とインドネシア人としてのアイデンティティとの関連性について訊かれると、アンディニ監督は「気持ちが入ってしまうので、うまく説明できるといいのですが」と前置きしながら、次のように説明。「インドネシア人としてのアイデンティティを考える場合、それはインドネシアのどこであろうとも全体的にとらえようと思いました。見えるものと見えざるものについて考えると、そこに何らかの価値観があるとして、その呼称や表現方法は地方によって違いはあれども、全体としての芯の部分は同じで、自分は何者なのかというところに辿り着くわけです。双子の深いつながりを題材とする本作では、バリ島を舞台にするのが一番合うと思いました。つまり、アイデアを展開したときには、自分の内面を掘り下げてからインドネシア全体をとらえる作業を行ったのですが、今回のアイデアを表現するにはバリ島が一番合うと思ったのです」

また、主人公を少年ではなく少女にした理由とジェンダーに対する何らかの意識があったのかと問われると、「大変興味深いご指摘をありがとうございます」と応じたアンディニ監督。これまでの作品の中でも強いキャラクターの女性を設定してきた点、特に人の成長を取り上げるときには、自身が女性であるため共感できるのは女性である点をあげ、個人的な理由であることを強調し、「今回は有機的なプロセスを経てキャラクターを作り上げたので、近くに感じることができる、共感できるのは少女でした」と語った。

夜遅い時間の上映にもかかわらず、熱心な観客から質問が続いたが、時間切れにより残念ながら質疑応答は終了。アンディニ監督のさらなる活躍に期待したい。

(取材・文:海野由子、撮影:明田川志保)


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