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授賞式

11月18日(土)から9日間にわたって開催された第18回東京フィルメックスの授賞式が、会期を1日残した11月25日(土)、有楽町朝日ホールで行われ、最優秀作品賞以下、各賞が発表された。今年はサプライズな展開もあり、これまでにないセレモニーとなった。

各賞の発表に先立って、映画祭期間中6日間にわたって行われた人材育成プロジェクト“タレンツ・トーキョー2017”の報告が行われた。アジアから15名の映画の未来を担う人材が参加し、ワークショップや特別講義を実施。参加者の企画の中から、スペシャル・メンションとしてスパッチャ・ティプセナさんの「DOI BOY」を選出。さらに、タレンツ・トーキョー・アワードには、ピュレヴダッシュ・ゾルジャーガルさんの「I wish I could HIBERNATE」が選ばれた。
壇上に上がったピュレヴダッシュさんは、英語でスピーチした後、自らそれを日本語に翻訳。「本当に嬉しいです」という喜びの言葉に続けて、受賞企画の意図を語った。 「ウランバートルでは大気汚染が大きな問題となっています。その問題を解決するためには、モンゴルの人々がお互いを理解することが今、一番必要なことです。私が作ろうとしているのは、そのための映画です」。

続いて各賞の発表へと移り、まず市山尚三プログラム・ディレクターが、観客賞を『ニッポン国VS泉南石綿(いしわた)村』と発表。壇上に現れた原一男監督は、コンペティション部門の審査委員長も務めていることから「皆さん、驚いていらっしゃる?」と、会場の笑いを誘った。
上映後のQ&Aでは「この映画が面白いのか、自信が持てないということを正直に話した」という原監督。だが今回、山形国際ドキュメンタリー映画祭に続く2度目の観客賞受賞となったことで、「自信を持っていいんだな」と思えたと喜んだ。さらにこの受賞が次回作への後押しにもなったようで、本作と並行して製作を進め、撮影開始から12年を経過して未だ完成に至らない水俣病の映画について、「次の課題が大きいので、頑張ろうという気持ちになっています。何とか1年後に完成させて、ここで上映できるようにしたい」と語り、意欲を燃やしていた。

学生審査員賞は、3名の学生審査員を代表して、鈴木ゆり子さんが発表。受賞作「泳ぎすぎた夜」のダミアン・マニヴェル監督と五十嵐耕平監督に賞状が贈られた。
「すごくうれしい」と日本語で挨拶したマニヴェル監督に続き、五十嵐監督が「若い皆さんに届けられたことを誇りに思う。観客のみなさんに、この映画と出会い、その関係を育んで行ってもらえたらすごくうれしい」と喜びを表した。

ここで5名の国際審査員が壇上に姿を現し、審査員特別賞と最優秀作品賞の発表へ。だがその前に、審査委員長の原監督から「議論を尽くしました。様々な意見が出ました。例年とはちょっと違う結論を出しました」との言葉があり、「最優秀作品賞を2本にしました」というサプライズな報告が。これを受けて審査員特別賞は対象作なしとして、最優秀作品賞が『殺人者マルリナ』、『見えるもの、見えざるもの』の2作品と発表されると、場内からは大きな拍手が起こった。

「7年前、タレンツ・トーキョー(当時は「ネクスト・マスターズ」)に参加しました。7年後、この場で受賞することになるとは、思ってもいませんでした」と、フィルメックスとの縁を振り返った『殺人者マルリナ』のモーリー・スリヤ監督。「東京フィルメックスのコンペティション部門にインドネシアの映画が初めて2本出品され、最優秀作品賞を受賞したことを誇りに思っています」と、同じインドネシア映画である『見えるもの、見えざるもの』との同時受賞を喜んだ。
続いて『見えるもの、見えざるもの』のカミラ・アンディニ監督は「最優秀賞を受賞した2作品は、共にインドネシアの監督が作った映画ですが、私たち2人は映画製作に対するアプローチが全く違います。これは、インドネシア映画の多様性を示すことができたということでないでしょうか」と、2作品受賞を歓迎。続けて「受賞したことで後押しを得たような気持ちで一杯です。どんどんいい映画を作って行きたい」と今後への意気込みを語った。

例年であれば授賞式はここで終了となるが、今年は原審査委員長の方針で、受賞作以外の全てのコンペティション部門出品作についても、それぞれ審査員1名ずつが言葉を贈った。

全ての賞の授与が終わったところで、原審査委員長から観客に一言。「観客が作家を育てます。作品を読み解く観客の能力が低いと、作家は育ちません」との言葉に続けて、日本映画の現状について「数多くのドキュメンタリー映画が作られるが、レベルが低い」と危機感を表した。ただしそれは、作家だけの問題ではなく、観客の要求が高くないことも一因であると持論を展開。「映画を読み解く能力が低いということは、映画だけの事ではなく、国民の生きる力、センス、価値観が劣っていることを意味します。どう生きるか、映画と向き合いながら、自分自身の生き方を探っていってください」。

続くクロージング作品の上映を前に、東京フィルメックス・林ディレクターの挨拶があった。「私たちの親友、釜山国際映画祭のエグゼクティブプログラマーでいらしたキム・ジソクさんが、5月に突然亡くなられてしまいました。ジソクさんが大好きでいらしたキアロスタミ監督。東京フィルメックスは今夜の「24フレーム」の上映を、キム・ジソクさんに捧げます」。この言葉に続いて、クロージング作品「24フレーム」(アッバス・キアロスタミ監督)の上映が行なわれ、授賞式は終了した。

(取材・文:井上健一、撮影:白畑留美、明田川志保、中堀正夫)


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