渡辺真起子審査員インタビュー
TOKYO FILMeX ( 2013年11月21日 00:06)
第14回東京フィルメックス開幕まであと2週間と迫った11月某日。東京フィルメックス事務局にて、今年のコンペティション部門審査員を務める渡辺真起子さんのメディア取材が行われた。園子温監督『愛のむきだし』(09)、内田伸輝監督『おだやかな日常』(13)などの出演作が過去上映され、また観客としてもご来場いただくなどフィルメックスに縁の深い渡辺さんに、本映画祭への想いと審査員としての意気込みを伺った。
フィルメックスの印象を「より早く、新しい作家に出会える場所」と話す渡辺さんは、審査員のオファーを驚き、喜びと共に受けたという。アジアの若手監督を対象としたコンペティションには、イスラエル、グルジア、カザフスタン、タイ、シンガポール、フィリピン、台湾、中国、日本から10本が出品。渡辺さんはラインナップを見て、「作品の背景、物語を語る目線も様々。ドキュメンタリーがあるなど制作スタイルも異なり、全体としてカラフルな印象。多様性のある作品が揃っているのではないか。タイトルからは想像もできない世界が広がっているのではないかと思うと、今から作品を観るのが楽しみ」と、期待を寄せる。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での審査員経験から、「審査することは多くの刺激を受けとても興味深いが、作品を選ぶのは大変な作業。フィルメックスでは、私なりに誠実に作品と向き合い、素直に楽しみたい。貴重な機会なので、心して参加したいと思います」と、意気込みを語った。
中野量太監督『チチを撮りに』(13)では、第55回アジア太平洋映画祭および第7回アジアン・フィルム・アワードで最優秀助演女優賞を受賞するなど、国内外の国際映画祭に多数出席されている渡辺さん。数ある映画祭の中でも、特にフィルメックスでは上映後のQ&Aが活発に行われており、いつでも「作家と観客の距離が近い」と感じるそうだ。「映画を観て抱いたモヤモヤした言葉にできない気持ちを他の観客の方がシンプルな質問として監督に投げかけると、そうそう!そういうことが聞きたかったの!と思うことがある。また、その質問に対して、監督も誠実に答えていらっしゃるのを見ると、たった一度の上映機会の中で、より多くのことを理解でき、有意義な時間を過ごすことができたと感じます」と、映画祭での体験を話した。
渡辺さんご自身が映画を観る時は、「これが見たい!」という直観で選ぶことが多いのだそう。しかし、そればかりで選んでいると、自分が受け入れやすい作品ばかりを選択してしまい、なかなか世界が広がらない。だからこそ、「映画祭では誰かが選んだ作品を観ることで、とても面白い体験ができる」のだと言う。映画祭への参加を検討している方に向けて渡辺さんは「このタイトルは面白い等、少しでも気になることがあれば是非足を踏み入れて下さい。一見、コアな映画ファンに向けた作品が多いような気がするかもしれませんが、実際は多くの人に受け止められやすい内容の映画が多いと思います。普通の映画館で観る機会もステキですが、この映画祭でしか出会えないものが必ずあります。より多くのことを感じられるのが、フィルメックスという場なのだと思います。日本では劇場公開が決まっていない作品もありますので、このチャンスをお見逃しなく!」と呼びかけた。
コンペティション以外にもジャン・グレミヨン特集や、生誕100年を迎えた中村登監督の特集上映など、多彩なプログラムを予定している第14回東京フィルメックス。東京・有楽町朝日ホールをメインに、11月23日(土)から12月1日(日)の日程で開催される。観客の投票により選出される「観客賞」には、審査員になった気分で一票を投じることもできる。
(取材・文:小嶋彩葉)
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