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『フライング・フィッシュ』 Flying Fish / Igillena Maluwo
スリランカ / 2011 / 124分
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ (Sanjeewa PUSHPAKUMARA)
【作品解説】
シンハラ人とタミル人の内戦の時代の東部スリランカの村を舞台とする『フライング・フィッシュ』は、3人の物語から構成されている。一人目は23歳の女性ワサナ。年上の兵士とつき合っているワサナは妊娠するが、兵士はワサナを置いて遠い赴任地に去ろうとする......。二人目は15歳の少年。父親が亡くなったため、少年は家族を支えるために魚市場で働いている。37歳になる母親は年下の愛人と密会を繰り返しており、それを目撃した少年は怒りを覚える......。3人目は13歳のタミル人の少女。ある日、タミル人の反政府組織タミル・タイガーが少女の家を訪れ、少女の両親に活動資金を要求、支払わなければ少女を徴兵する、と脅す。一家には支払う金はなく、少女は支払い期限の夜に一人で逃亡をはかる......。サンジーワ・プシュパクマーラは、美しい映像と鮮烈なバイオレンス描写によって、内戦が人々の心を蝕むことに対する怒りを爆発させた。驚くべき監督デビュー作である。

















サンジーワ・プシュパクマーラ (Sanjeewa PUSHPAKUMARA)

1977年、東部スリランカに生まれる。フリーランス記者として働いた後、スリジャヤワルダナプラ大学で芸術を、ケラニア大学でマスコミ論を、スリランカ国立映画公社で映画を学ぶ。2007年、韓国政府のスカラシップを得て韓国に留学。同年には短編映画"Touch"、"Wings to Fly"を監督。2009年にはプサン映画祭のアジアン・フィルム・アカデミーに参加し、短編映画"An Encounter in the Wood"の美術を担当した。2011年、初の長編映画『フライング・フィッシュ』を監督。現在は韓国の中央大学校で映画を専攻。映画についての著作も発表している。






11/21『フライング・フィッシュ』Q&A/有楽町朝日ホール
from ブロードキャスト 2011/11/21


 
11/21『フライング・フィッシュ』Q&A/有楽町朝日ホール
サンジーワ・プシュパクマーラ(監督)

市山 尚三(東京フィルメックス・プログラムディレクター)
藤岡 朝子(通訳)
 
Flying Fish / Igillena Maluwo
Sri Lanka / 2011 / 124 min.
Director: Sanjeewa PUSHPAKUMARA





新情報は順次、追加されます。


『フライング・フィッシュ』サンジーワ・プシュパクマーラ監督Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/21

1121ff_01.jpg11月21日(月)、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『フライング・フィッシュ』が上映された。上映後にサンジーワ・プシュパクマーラ監督が登壇し、Q&Aが行われた。スリランカ内戦の時代を背景に、人々の苦しみを描いたプシュパクマーラ監督のデビュー作。監督は「皆さん、こんなにも暗い気持ちになる映画を観ていただいてありがとうございました」と挨拶した。


当作品で描かれた内戦について、司会の市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターが「人口の7割強を占めるシンハラ人に対し、2割弱の少数派タミル人との争いが2009年の終結まで続いた」と解説。市山Pディレクターが監督と内戦との関わりについて質問すると、監督は「1974年にはスリランカの北部・東部を中心に内戦が始まり、1977年にスリランカ東部で生まれた私の人生は、まさにこの戦争と共にあり、その影響に苦しみ続けてきた」と監督。「物語は、実際に生まれ育った村で聞いた話をもとにしています。これは"私についての映画"であり、撮影も自宅周辺で行いました」と背景を語った。


1121ff_02.jpg続いて会場からの質問に移った。最初に画面の独特の質感や撮影方法について訊かれると、「全く信じられないかもしれませんが...」と前置きし、全編デジタル撮影でカメラはSony製 EX1を使用した、と説明した。資金的制約から35mmでの撮影は当初から考えておらず、製作資金は総額2万5000ドル(約200万円)。撮影終了後に、ロッテルダム国際映画祭のHubert Bals Fundから制作完成資金の援助を受けたという。また撮影のビシュワジット・カルナラトナさんについて「人間・世界の見方を私と共有していると感じ、組むことにしました」と監督。


次に、登場人物の演技に感動したという観客の質問に、監督は「メインキャラクターの母親役はスリランカで活躍する女優で、この人以外いない、と思った方です。しかしそれ以外はほぼ素人で、私が自分で街中や舞台で見てスカウトしました。私は人生そのものの映画を撮りたかったので、プロではそのリアルさは出せないと思いました」とキャスティングの意図を語った。
また、河瀬直美監督との共通点を感じたという観客からの質問には「もちろん、2007年に第60回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『殯の森』は観ています」。ちなみに、一番敬愛する監督は小津安二郎だそう。


1121ff_03.jpg次に作中で「壁を背景に繰り広げられるシーンが印象的だった」という観客からの感想に監督は、自身の子ども時代の体験が盛り込まれていると話し「8歳の時、LTTE(タミル・イーラム解放のトラ)に叔父が誘拐され、その妻である叔母と兵士が廃墟でセックスしているのを目撃したのです。当時は驚き以外の何物でもなく、何を意味しているのか理解できなかった。自宅の前に兵士のキャンプがあったのも影響しています」と戦争がいかに身近にあったかを印象づけるエピソードを明かした。
続いて、ある男が唾を吐くシーンについては、「世界・社会が、私の周囲の人々や民族に何が起きているのか、見て見ぬふりをしてきた」ことへの怒りを示す暗示である、と説明。それと同時に、「男が自分より弱い者に対して唾を吐く行為は"暴力"でしかない。でも一旦暴力が体に刷り込まれてしまうと、それに気づかず人は弱者に対して暴力をふるってしまう」ことを示しているという。


また、印象的なラストシーンについて質問がされると「確かに強い意図はありますが、ここではお答えできない。私が解説するよりも、今晩皆さんがお布団の中で寝る前にそれぞれに考えて下さる方が、ずっといいですね」と観客に投げかける一面も。


ここで時間切れとなり、Q&Aは終了となったが、最後にプシュパクマーラ監督から、「市山さん、日本へこの作品を持ってきてくれてありがとう。かつてアッバス・ キアロスタミ監督が、1977年のロッテルダムで最高の観客に出逢ったと語ったが、私はこの東京で最高の観客を見つけることが出来ました」と観客への感謝を表した。
質問者ひとりひとりをしっかりと見つめて話し、飾らない人柄でQ&Aに応じてくれたプシュパクマーラ監督に、会場からは大きな拍手が送られた。


『フライング・フィッシュ』はTOHOシネマズ 日劇にて、11月23日(水)にレイトショー上映される。


(取材・文:阿部由美子、撮影:村田まゆ)
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