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『カウントダウン』ホ・ジョンホ監督Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/20
11月20日(日)、有楽町朝日ホールにてコンペティション作品『カウントダウン』が上映された。上映後のQ&Aにはホ・ジョンホ監督が登場し、観客から大きな拍手で迎えられた。本作がデビュー作となるホ監督は、冒頭で「この作品を撮る前は、こうして東京で上映されるとは思っていませんでした。皆さんにお会いできて嬉しく思います」と挨拶した。
まず、市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターが、本作がどのような経緯で映画化されたかについて尋ねると、「この映画の企画を立ち上げたのは2008年。当時は世界的な経済危機に見舞われており、韓国も例外ではありませんでした。そうした状況の中で、家長として、だれかの親として生きるということは非常に大きな責任が伴い、それはまるで薄い氷の上を重い荷物を持って歩いているようなものではないかと思い、そのような心情の人物を主人公として描きたいというところから出発しました」と語ったホ監督。監督自ら脚本を書き下ろしてからプロデューサーを探したそうだ。プロデューサーは、第7回東京フィルメックスの審査員を務めたオ・ジョンワンさん。
続いて会場からの質問に移った。最初に、主人公の息子をダウン症児に設定した理由についての質問が寄せられた。ホ監督は、「劇中で息子の背中に"取扱注意"というシールが貼られる場面がありますが、親にとって子供はそういう存在なのかもしれないと思いました。この映画では、親が重い荷物を背負っているというストーリーにしたかったので、そうした息子の設定にしました」と説明。
また、チョン・ジェヨンさんとチョン・ドヨンさんの起用について質問が及ぶと、「この2人は、韓国でもみんながキャスティングしたいと思っている俳優さんたちです。今回は私がキャスティングしたというよりも、2人が私を選択してくれたと言えると思います。その陰には立派なプロデューサーがいたことが大きいのですが、私としても望ましいキャスティングで、幸い2人とも快く引き受けてくれました」とホ監督。
次に、涙が止まらないほど感動したという観客から、次回作で取り上げたいテーマについて問われると、ホ監督は「今回はどちらかというと暗い雰囲気だったので、次回作では、明るく愉快な映画を撮りたい」と答えた。そこで、市山Pディレクターから「具体的な脚本の準備は進めているのですか」と問われると、「シナリオを書いたことは書いたのですが、製作費が集まりそうにないので、それとは別に製作費を出してもらえそうな作品をまた書いています」と語り、観客の笑いを誘った。
本作が今年のトロント国際映画祭で上映された際の観客の反応について問われると、トロントの反応は上々だった、とホ監督。観客との質疑応答では、「空はなぜ青いの?」と訊ねる息子に、父親が「空は最初から青かったんだよ」と答える場面について、「父親は息子のことを最初から愛していたのだ、という意味として受け取ってもいいのか」という質問を受けたという。「それは私としては考えてもいなかったことで、素晴らしい解釈をしてもらえたと思いました」と、監督は感慨深げに語った。
また、チョン・ジェヨンさんの撮影時のエピソードを訊かれ、「お酒を本当によく飲む人。撮影中も毎日飲んでいて、セリフの練習をしながらもお酒を飲んでいたのが記憶に残っています」と思わず苦笑する場面も。
存在感の大きかったダウン症の息子役のキャスティングについては、オーディションは行わず、製作チームが一般のダウン症児をひとりひとり訪問して、その中からキャスティングをしたそうだ。また、チョン・ドヨンさんの娘役を演じたのは、韓国の人気アイドルグループmissA のミンさん。
最後に観客から、冷酷な取立屋とだらしない父親というチョン・ジェヨンさんが演じた人物像の変化について問われると、ホ監督は「おそらく彼は、若い頃にはもっと活気のある人物だったのでしょう。ところが息子を失ったことで、彼の持っていた活気が蒸発したととらえて、序盤ではドライな人物像を描こうと思いました」と答えた。
ここで時間切れとなり、Q&Aは終了。飾らない口調で明快にQ&Aに応じてくれたホ監督に大きな拍手が送られた。準備中という次回作が楽しみである。
(取材・文:海野由子、撮影:清水優里菜、米村智絵)
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