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特別招待作品






『RIVER』 RIVER
日本 / 2011 / 89分
監督:廣木隆一(HIROKI Ryuichi)
配給:ギャンビット、トラヴィス
©2011 ギャンビット
【作品解説】
恋人の健治を数年前に秋葉原で起こった殺傷事件で失ったひかりは、いまだに心に折り合いをつけることができないでいる。健治の面影を探すかのように、ひかりはあてもなく秋葉原の街を歩き、様々な人々に出会う。女性カメラマン、メイド喫茶のスカウトマン、そのメイド喫茶で働く同世代の少女......。やがて、ひかりは地下道で暮らす青年・佑二に出会う。佑二は親と喧嘩して家を飛び出して東京にやってきたという過去を持っていた。そして、彼が捨ててきた故郷の変わり果てた様子がテレビ画面に映し出される......。廣木隆一の新作『RIVER』は、心に傷を負ったヒロインが人々との出会いの中で自分の生きる道を見つけてゆくプロセスを感動的に描いた作品だ。撮影は短期間で行われたというが、長回しを多用したカメラワークが現在の日本の風景を見事にとらえている。2011年の今でしかできなかった映画と言えるだろう。ヒロインのひかりを可憐に演じた蓮佛美沙子が素晴らしい。







廣木隆一(HIROKI Ryuichi)

82年、『性虐!女を暴く』で監督デビュー。94年、サンダンス映画祭より奨学金を得て渡米。帰国後に発表した『800 TWO LAP RUNNERS』(94 )はベルリンをはじめ多くの国際映画祭で上映され、話題となった。2000年の『東京ゴミ女』ではドーヴィル・アジア映画祭の最優秀作品賞を受賞。2003年の『ヴァイブレータ』はヴェネチア、ナント、香港、マンハイムなど多くの映画祭に招待され、主演の寺島しのぶに東京国際映画祭、ナント三大陸映画祭などの女優賞をもたらした。近年の代表作に『やわらかい生活』(06)、『きみの友だち』(08)、『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『雷桜』(10)、『軽蔑』(11)がある。








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『RIVER』舞台挨拶・Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/27

1127river_01.jpg11月27日、有楽町朝日ホールにて特別招待作品『RIVER』が上映され、廣木隆一監督と主演の蓮佛美沙子さん、主題歌「Moon River」を歌うJAZZシンガーのmegさんが舞台挨拶に登場した。本作品は、恋人を秋葉原で起きた殺傷事件で失ったヒロインが、人々との出会いの中で自分の生きる道を見つけてゆくプロセスを感動的に描いている。上映後には質疑応答の時間が設けられた。


舞台挨拶では、林 加奈子東京フィルメックス・ディレクターから今回の上映が『RIVER』のワールドプレミアであることが説明され、廣木監督は「初上映ということで緊張しています」とコメントし、「フィルメックスに呼んでもらって、すごくうれしく思います。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。
主演の蓮佛さんは、実際に起きた事件を扱っている難しさはあったものの「役作りへのアプローチはいつも通り。ただ、3月11日の東日本大震災後に撮影に入ったことで、作品を目にする観客の皆さんのことを考えて挑むという想いを抱いた初めての作品となりました」と語り、林ディレクターが「蓮佛さんの透明感あふれるナチュラルな姿を通して見る秋葉原は別の街に見えた」と述べると、蓮佛さんは1カット15分以上の長回しは初体験だったが「テストを繰り返していくうちに余計なものが削ぎ落とされていきました。私がフラットな状態でいないと監督が見抜いて駄目出しをされました」と撮影の苦労を語った。蓮佛さんにとって廣木監督は「学校にいる怖い先生」の様だったとか。
またmegさんは「Moon River」について、自身のお気に入りで背中を押してくれる曲だと明かし「私の実体験であり、映画を通じ感じた想いであり、曲の持つ強い部分を表現しました」と語った。レコーディングには廣木監督も立ち会ったという。廣木監督は「秋葉原の事件を題材にしていることで、マスコミに大きく取り上げられているが、事件そのものよりは、その周辺で起きたことを映し出したいという想いがあった」と語った。


上映後のQ&Aには廣木監督と蓮佛さんが登壇。ここで、会場に駆け付けた佑二役の小林ユウキチさん、撮影の水口智之さん、脚本の吉川菜美さんが紹介され、会場からは大きな拍手が送られた。


1127river_02.jpg最初に上がったのは、蓮佛さんに「長回しシーンで苦労した部分を教えて欲しい」という質問。蓮佛さんは「最初に心配したのは、長回しの最後でセリフを間違えたらどうしよう?」とシンプルな理由を挙げ、また「街中に大勢の人がいる中で、普通にお芝居をするのは不思議な雰囲気でした。でも次第にセリフを最後に間違えたとしても、私自身がその場で(主人公の)ひかりでさえあればいいんだと楽しんでいましたね」と語った。


次に、秋葉原で清掃活動を行っているという男性から「秋葉原の今を鋭く切り取っているが、今の秋葉原は"リアル"に対して無力なのだろうか?」と問われると、廣木監督は「無力かどうかはわからない」と前置きし、「街は時代と流行り廃りの中で流れていくもの。若い頃の自分にとって刺激的で面白かった新宿・今の秋葉原もそういった魅力を失ってしまっている。自分が興味を持つのは、その街にどんな人たちが集まって、何が生まれていくのか?一方で(震災などで)一瞬にして何もなくなってしまう現実との対比を描こうと思った」と応じた。
秋葉原を題材に選んだ理由については、「加害者が行動を起こす理由は、様々な書籍で語られていますが、明確なことは"人の一感情"が動いた結果。それよりも、人が集まって輝いて休日に楽しんでいる裏にこそ何かがあるし、その部分こそ映像として伝えやすいと考えていた」と廣木監督。


1127river_03.jpg次に、印象的なラストシーンから、監督の「生まれる・生きる」というメッセージを感じたという観客から「監督自身はそのように意識しているのか」と質問されると「実は撮影以外の時は引きこもりで、前向きではないんです」と廣木監督。しかし「登場人物に「行こうよ」と背中を押してあげたいし、自分もそれに一緒に乗っかりたい」部分があると応じた。また蓮佛さんもラストシーンについて「詳しい演出は台本には一切なく、演技をしていく中で自然に生まれた感情」と話し、廣木監督も「(佑二役の)小林さんも蓮佛さんも、街中を歩いているうちに感情が昂ぶり、自然な流れの延長にお芝居があった」と当時を振り返り、林ディレクターも蓮佛さんの「感情が街を彷徨う」演技は、映画史に残ると絶賛した。


作品中で東日本大震災を扱うことに決めた経緯について訊ねられると、「クランクインは3月27日で、準備期間中に震災が起きたことで、自分を含めた全てのスタッフのモチベーションも揺らいだ」と廣木監督。しかし「一番に描きたかったのは、被災地の東北と普段通りの秋葉原のシンプルなコントラスト」であり「その状況は秋葉原だけのものではない」と、福島県郡山出身の廣木監督ならでは視点が反映されていることを窺わせた。
監督は「テレビから流れてくる映像を見ても、呆然とするだけ。正直、映画を作っている場合か?自問自答もしたが、僕らは映画を作ろうとスタッフ・キャストが集まっていることを続けていくために、今回の震災を盛り込んだ」と締めくくった。「苦しい時期を乗り越え、今この時にしかない瞬間が刻み込まれた作品」と林ディレクターの言葉でQ&Aは終了となり、廣木監督・蓮佛さんに観客からは盛大な拍手が送られた。


主題歌「Moon River」が収録されたmegさんの「Love Witch」は、11月30日に発売される。
『RIVER』は2012年3月10日より、渋谷ユーロスペースにて公開予定。


(取材・文:阿部由美子、撮影:三浦彩香、村田まゆ)

1127river_04.jpg 1127river_05.jpg 1127river_06.jpg





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