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『モンスターズクラブ』豊田利晃監督Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/23
11月23日有楽町朝日ホールにて、長編としては2年ぶりの新作となる豊田利晃監督の『モンスターズクラブ』が、第12回東京フィルメックスの特別招待作品として上映された。上映後、監督を迎えてQ&Aの時間が設けられた。豊田監督の作品が上映されるのは、『青い春』(02)、『蘇りの血』(09)に続いて3回目となる。
最初に監督は、「この映画は今年の2月に山形で撮影しました。撮影中に主役の瑛太のお父さんが亡くなり、その後に震災があり、僕と瑛太にとっては特別な映画となりました。ぜひ今年中に観てもらいたいと思っていたので、今回フィルメックスで上映されることをうれしく思います」と挨拶。
会場からは、震災がこの作品に影響を与えているところがあるか、との質問も寄せられた。震災の発生時は編集段階だったそうで、「内容が変わるということはなかったが、見え方は違ってくるでしょう」と監督。このようなときにこの映画を作っていいのかという気持ちもあったが、観てくれた人に委ねようと思ったそうだ。
客席からは個性的なキャスト陣について、起用の経緯を知りたいという質問が相次いだ。
まず、主演の瑛太さん。監督が別の短編をつくっているとき、ちょうどお子さんが生まれたばかりで"産休"中だった瑛太さんが、その噂を聞きつけて、「現場に入りたい」と直接電話がきたのがきっかけとのこと。
次に、「RIZEのベーシストKenKenさんがキャスティングされているのを見てびっくりした」という声が寄せられた。KenKenさんと監督は、『蘇りの血』で主演を務めたミュージシャンの中村達也さんの紹介でよく会っていたという。瑛太さんと窪塚洋介さんの"弟"として「負けないオーラをもっている」人というのが依頼の理由だそうだ。
また、特殊メイクデザインを担当したアーティストのピュ〜ぴるさんとも、以前から交流があったそう。「何か一緒にやろう」と話をしていたところ、彼女の作品を映画にそのまま使っていいという了承を得て、今回の起用となったという。
また、使われる音楽について。今回挿入歌を手がけた照井利幸さんは、豊田監督が映像担当として参加したバンドTWIN TAILのメンバー。「彼のストイックさとこの映画が合うんじゃないか」と思い、照井さん率いるSignalsのアルバムや、照井さんの宅録音源から使わせてもらったとの答え。またシンセサイザーの部分は、音楽監督としてフィッシュマンズやバッファロー・ドーターを手がけたZAKさんにお願いしたそうだ。
撮影場所について「前作『蘇りの血』につづき今回も森。次の舞台は?」という質問に対し、じつは次回作はもう9月に撮影済みとの答えが。しかも今度は一転、沖縄の海だという。監督曰く「極端なところのほうが面白いじゃないですか」。ちなみにラストシーンの撮影場所は、渋谷のスクランブル交差点。デビュー作『ポルノスター』(98)ではスクランブル交差点から話がはじまったが、そこに「雪を降らすってスリリングで面白いのでは」と実行したそうだ。
また、ラストに宮沢賢治の詩「告別」が印象的に引用されているが、この詩に出会ったときの感想と、最後にこの詩をおいた狙いについての質問も。監督は、10年ほど前に宮沢賢治記念館に行った際、壁に貼ってあった「告別」を目にして感銘を受け、ことあるごとに読み返しながらいつか使いたいという思いを抱いていたそうだ。「ものをつくる人間にとっての才能、努力、孤独の問題がうたわれていると思うんですが、10年経っても胸に響いています」
そして最後の質問は、アメリカの爆弾魔セオドア・カジンスキー(通称ユナボマー)の犯行声明文にインスパイアされたというが、どのような影響を受けたのか、というもの。
「東京を離れて山奥に住んでいたことがあり、この映画をつくろうとしているときに、そんな生活をもう一回したいと思って。ユナボマーもそうだけれど、サリンジャーやグレン・グールド、そういう(孤高の)人たちに憧れてたんですね。またユナボマーは弟が警察に通報したんですが、そんな家族の話も面白かった。ただ直接的な影響は、爆弾や小屋などの造形、それ以外はないです。でも是非ユナボマーに観てもらいたいなと思ってます」と茶目っ気をにじませつつ結んだ。
『モンスターズクラブ』は2012年GWに渋谷ユーロスペースほかにて公開予定。
(取材・文:加々良美保、撮影:村田まゆ)
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