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特別招待作品






『モンスターズクラブ』 Monsters Club
日本 / 2011 / 72分
監督:豊田利晃 (TOYODA Toshiaki)
配給:ファントムフィルム 製作:ギークピクチュアズ/ヌーヴェル 制作:ギークサイト
【作品解説】
主人公は、現代社会を捨て、雪山の小屋で自給自足の生活をしつつ、企業やテレビ局に爆弾を送り続けている良一。時おり山小屋を訪れる妹のミカナだけが良一と現実社会の接点である。ある日、良一は奇妙な"怪物"と森の中で遭遇する。それから、毎夜のように"怪物"が、そして死んだはずの家族たちが小屋に現れる。首相に最後の爆弾を送った夜、自殺した兄が現れ、良一を闇の扉の向こうに導く。そして、良一は自分の家族の隠された真実を知る......。実在するアメリカの爆弾魔セオドア・カジンスキー(通称ユナボマー)の犯行声明文にインスパイアされたという豊田利晃の最新作『モンスターズクラブ』は、幻想的な設定を用いつつ、閉塞した現代社会に生きる意味を鋭く問う作品である。雪山での過酷な撮影の中、複雑な性格の主人公を演じ切った瑛太が素晴らしい。気鋭のアーティスト、ピュ~ぴるによるキャラクター・デザインも魅力的である。トロント映画祭上映作品。









豊田利晃 (TOYODA Toshiaki)

1969年大阪府出身。9歳から17歳まで新進棋士奨励会に所属。その時の体験を元に1991年、阪本順治監督『王手』で脚本家として映画界にデビュー。1998年に『ポルノスター』を初監督、日本映画監督協会新人賞を受賞。2001年、4人の格闘家の生き様を追った長編ドキュメンタリー『アンチェイン』でトロント映画祭、ヴァンクーバー映画祭、香港映画祭など世界各国の映画祭へ出品。その後、松本大洋の人気コミックを映像化した『青い春』は、ミニシアター系では異例のヒットを飛ばした。2003年には9人の脱獄犯を描いた『ナイン・ソウルズ』を監督。苦闘する男達の痛みを描くことを基調とした作品を立て続けに発表した。2005年には、直木賞作家角田光代の原作で、主演に小泉今日子を迎えた『空中庭園』を監督。2009年『蘇りの血』を監督。





11/23『モンスターズクラブ』Q&A
from ブロードキャスト 2011/11/23


 
11/23『モンスターズクラブ』Q&A/有楽町朝日ホール

豊田 利晃(監督)
林 加奈子(東京フィルメックスディレクター)
藤岡 朝子(通訳)
 
Monsters Club / Monsters Club
Japan / 2011 / 72 min.
Director: TOYODA Toshiaki





新情報は順次、追加されます。


『モンスターズクラブ』豊田利晃監督Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/23

1123mc_01.jpg11月23日有楽町朝日ホールにて、長編としては2年ぶりの新作となる豊田利晃監督の『モンスターズクラブ』が、第12回東京フィルメックスの特別招待作品として上映された。上映後、監督を迎えてQ&Aの時間が設けられた。豊田監督の作品が上映されるのは、『青い春』(02)、『蘇りの血』(09)に続いて3回目となる。


最初に監督は、「この映画は今年の2月に山形で撮影しました。撮影中に主役の瑛太のお父さんが亡くなり、その後に震災があり、僕と瑛太にとっては特別な映画となりました。ぜひ今年中に観てもらいたいと思っていたので、今回フィルメックスで上映されることをうれしく思います」と挨拶。


会場からは、震災がこの作品に影響を与えているところがあるか、との質問も寄せられた。震災の発生時は編集段階だったそうで、「内容が変わるということはなかったが、見え方は違ってくるでしょう」と監督。このようなときにこの映画を作っていいのかという気持ちもあったが、観てくれた人に委ねようと思ったそうだ。


1123mc_02.jpg客席からは個性的なキャスト陣について、起用の経緯を知りたいという質問が相次いだ。
まず、主演の瑛太さん。監督が別の短編をつくっているとき、ちょうどお子さんが生まれたばかりで"産休"中だった瑛太さんが、その噂を聞きつけて、「現場に入りたい」と直接電話がきたのがきっかけとのこと。
次に、「RIZEのベーシストKenKenさんがキャスティングされているのを見てびっくりした」という声が寄せられた。KenKenさんと監督は、『蘇りの血』で主演を務めたミュージシャンの中村達也さんの紹介でよく会っていたという。瑛太さんと窪塚洋介さんの"弟"として「負けないオーラをもっている」人というのが依頼の理由だそうだ。
また、特殊メイクデザインを担当したアーティストのピュ〜ぴるさんとも、以前から交流があったそう。「何か一緒にやろう」と話をしていたところ、彼女の作品を映画にそのまま使っていいという了承を得て、今回の起用となったという。


また、使われる音楽について。今回挿入歌を手がけた照井利幸さんは、豊田監督が映像担当として参加したバンドTWIN TAILのメンバー。「彼のストイックさとこの映画が合うんじゃないか」と思い、照井さん率いるSignalsのアルバムや、照井さんの宅録音源から使わせてもらったとの答え。またシンセサイザーの部分は、音楽監督としてフィッシュマンズやバッファロー・ドーターを手がけたZAKさんにお願いしたそうだ。


1123mc_03.jpg撮影場所について「前作『蘇りの血』につづき今回も森。次の舞台は?」という質問に対し、じつは次回作はもう9月に撮影済みとの答えが。しかも今度は一転、沖縄の海だという。監督曰く「極端なところのほうが面白いじゃないですか」。ちなみにラストシーンの撮影場所は、渋谷のスクランブル交差点。デビュー作『ポルノスター』(98)ではスクランブル交差点から話がはじまったが、そこに「雪を降らすってスリリングで面白いのでは」と実行したそうだ。


また、ラストに宮沢賢治の詩「告別」が印象的に引用されているが、この詩に出会ったときの感想と、最後にこの詩をおいた狙いについての質問も。監督は、10年ほど前に宮沢賢治記念館に行った際、壁に貼ってあった「告別」を目にして感銘を受け、ことあるごとに読み返しながらいつか使いたいという思いを抱いていたそうだ。「ものをつくる人間にとっての才能、努力、孤独の問題がうたわれていると思うんですが、10年経っても胸に響いています」


そして最後の質問は、アメリカの爆弾魔セオドア・カジンスキー(通称ユナボマー)の犯行声明文にインスパイアされたというが、どのような影響を受けたのか、というもの。
「東京を離れて山奥に住んでいたことがあり、この映画をつくろうとしているときに、そんな生活をもう一回したいと思って。ユナボマーもそうだけれど、サリンジャーやグレン・グールド、そういう(孤高の)人たちに憧れてたんですね。またユナボマーは弟が警察に通報したんですが、そんな家族の話も面白かった。ただ直接的な影響は、爆弾や小屋などの造形、それ以外はないです。でも是非ユナボマーに観てもらいたいなと思ってます」と茶目っ気をにじませつつ結んだ。


『モンスターズクラブ』は2012年GWに渋谷ユーロスペースほかにて公開予定。


(取材・文:加々良美保、撮影:村田まゆ)

1123mc_04.jpg 1123mc_05.jpg 1123mc_06.jpg





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