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特別招待作品






『KOTOKO』 KOTOKO / KOTOKO
日本 / 2011 / 91分
監督:塚本晋也
配給:マコトヤ
【作品解説】
幼い息子・大二郎をひとりで育てている琴子は、その過剰な愛のゆえに、大二郎を誰かにさらわれるのではないか、あるいは事故で失うのではないか、という脅迫観念につきまとわれ、幻視に悩まされている。琴子が平穏な心を取り戻すことができるのは歌を歌っている時だけだ。ある日、琴子は見知らぬ男から声をかけられる。男は琴子の歌と、歌っている姿に魅了されていた。やがて二人は同居を始めるが......。塚本晋也の最新作『KOTOKO』は、母性の持つ危うさと強靭さとを、激しく、また叙情的に表現した傑作だ。琴子を演じたのは、本作が劇映画初主演となるCocco。長年、Coccoを主演に映画を撮ってみたいと思っていた塚本は、Coccoにインタビューを繰り返し、それを基に彼女の内面を描く物語を作りあげたという。母性愛をその中心に扱ったという点で、塚本映画の新たな可能性を予感させる作品と言えるだろう。本作はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、最優秀作品賞を受賞した。





塚本晋也

1960年、東京に生まれる。中学時代から自主映画を製作。89年に監督した『鉄男』がローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞し、国際的に注目される。『東京フィスト』(95)はサンダンス・フィルムフェスティバル・イン東京グランプリを獲得し、『バレット・バレエ』(98)、『双生児』(99)、『ヴィタール』(04)はヴェネチア映画祭で上映。『六月の蛇』(02)はヴェネチア映画祭コントロコレンテ部門で審査員特別賞受賞。『鉄男 THE BULLET MAN』(10)はヴェネチア映画祭コンペティションに選ばれた。その他の作品に『ヒルコ/妖怪ハンター』(90)、『鉄男Ⅱ BODY HAMMER』(93)、『悪夢探偵』(07)等がある。






11/26『KOTOKO』Q&A
from ブロードキャスト 2011/11/26


 
11/26『KOTOKO』Q&A/有楽町朝日ホール
塚本晋也(監督)
林 加奈子(東京フィルメックスディレクター)
藤岡 朝子(通訳)
 
KOTOKO / KOTOKO
Japan / 2011 / 91 min.
Director: TSUKAMOTO Shinya



11/26『KOTOKO』舞台挨拶
from ブロードキャスト 2011/11/26


 
11/26『KOTOKO』舞台挨拶/有楽町朝日ホール
塚本晋也 (監督)
Cocco (俳優)
岡崎 匡 (東京フィルメックス)
藤岡朝子 (通訳)
 
KOTOKO / KOTOKO
Japan / 2011 / 91 min.
TSUKAMOTO Shinya (Director)
Cocco (Actress, Musician)





新情報は順次、追加されます。


『KOTOKO』舞台挨拶・Q&A
from デイリーニュース2011 2011/11/26

1126kotoko_01.jpg11月26日、有楽町朝日ホールにて、特別招待作品として塚本晋也監督の『KOTOKO』の日本初上映が行われた。2011年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最優秀作品賞を受賞したこの作品の上映に先立ち、製作・脚本・撮影・編集も手がけた塚本監督と主演のCoccoさんによる舞台挨拶が、また上映後には監督とのQ&Aも行われた。


上映前、登壇した塚本監督からまず次のような挨拶をいただいた。「Coccoさんと映画をつくるのが長年の夢で、まずそれができたことが非常にうれしかった。撮影に入る直前に震災があり、内容的にもクランクインするのが難しい局面もあったが、少数精鋭のスタッフと、Coccoさんやその仲間たちの協力で映画ができた。そして今年のヴェネチア映画祭オリゾンティ部門という自分にとって大事な部門でグランプリをもらったが、作品にいただいた賞は全部Coccoさんの主演女優賞だと思います」


Coccoさんは、監督が先に多くを述べたのに圧倒されてしまったそうだが、今の気持ちについてコメントを求められ、後ろのバナーとマッチした監督の赤い服を見て「赤くて似合いますね」とまずは率直な感想を。塚本監督も「まだ(赤い服を着て祝う還暦の)60歳ではございませんが」などと軽妙に応じ、また会場もCoccoさんの天真爛漫な雰囲気のせいで和やかなムードに包まれた。


1126kotoko_02.jpg司会からの「ミュージシャンとしてステージ上で歌うことと、カメラの前で演技をすることの共通点は?」という問いかけに、Coccoさんは、「コンサートは一から十まで生で、映画は記録だから、生か記録かの違いはとても大きいです。ライブは、100あれば99の力は歌うことだけに集中できて、あとの1%がサービスとコミュニケーションとして成立するけど、今回の映画は----最初はホームビデオで監督とふたりで撮ろう、と始めたのに、結局は友だちや家族を巻き込んでいっぱい手伝ってもらって----つくったり段取ったり、準備したり、円滑にいくように、そこに99%の力を使って、お芝居するのは残りの1%ぐらい。でもその貴重な1%の時間はとても自由でした。あとは、(小道具やセットを)縫ったり、切ったり、貼ったり、みんなで協力してがんばりました。見届けてくれるお客さんがいないと成立しないのがライブで、映画もやっぱり見届けてもらって作品として成立すると思うから、今日は来てくれてありがとうございます」と答えてくれた。


俳優としてのCoccoさんはどうだったか、と訊ねられると、監督は「天才」と絶賛。表現者としての才能を以前から知ってはいたが、昨年『Cocco Inspired movies』の中の1篇を手がけ、俳優としても凄いとわかり、本作でも再確認したそうだ。監督は「Coccoさんか主人公の琴子かわからないほど、まるでそこに実際存在するかのように映るだろうとまでは想像できた。しかし一方で、一回撮り逃したら二度とない、一回限りの演技を最初は予想していた」という。ところが実際は2回3回のテイクを圧倒的な存在感で重ねられる、女優としての確かさに驚いたそうだ。
壇上で、女優として、またそれ以外の部分でも、この映画に惜しみなく力を注いだCoccoさんに監督から大きな花束が贈られ、映画の上映が始まった。


1126kotoko_03.jpg上映後、塚本監督が再び舞台に登場。会場からの質問に答えた。
最初の質問は「クレジットに"原案:Cocco、脚本:塚本晋也"とあったが、Coccoさんの原案はどういうものか?」かねてから彼女と映画をつくりたいと思っていた監督が、数か月なら撮影できるというチャンスをもらったのは昨年11月頃のこと。「Coccoさんが雨のなか踊るシーンを撮りたい!」という思いがあった監督はそのイメージを生かすべく急遽アイディアを模索し始めた。
「ですから、具体的なストーリーをくださったという意味の原案ではなくて、僕がCoccoさんにインタビューを繰り返したり、ライブを見に行ったり、ライブの合間に話す言葉を耳をダンボのようにして意味を探ったり、全部見て、それを脚本にしていった。その出元がCoccoさんなので、彼女の人生を称えるという意味で"原案"としました」


Coccoさんのファンという観客からの「いくつかのエピソードが、本当にあったことだと思われてしまいそう」という声に、「本当にあったこともありますし、完全な創作の部分もある。トータルでいえば完璧に"物語"です」と監督。例えば冒頭、琴子が、他人が二人に分かれて見えるというシーン。これはインタビュー初日に「私、ふたつに見えるのよ」と聞いたのがきっかけになってはいるが、映画で描かれているような"ポジティブな像とネガティブな像"に分かれるというのは創作。「Coccoさんの話が本当のことなのかそうでないのかは重要かというと実はそうでもなくて、それがポエムであっても空想であっても本当であっても、"Coccoさんの中で真実"であればいいわけで、それを僕が脚本にして、ひとつの物語をつくっていく。全体としては完全なフィクションです」
脚本は、Coccoさんに違和感がないか確認してもらい、変更も多少あったが、それほど多くはなかったそうだ。「Coccoさん自身は、脚本をこれで良しと言ってくださって、大丈夫だと解釈しております」


自身の監督作品だけでなく、多くの映画に俳優として出演する塚本監督。『KOTOKO』では謎めいたキャラクター・田中を演じる監督に、"共演者"の立場から見たCoccoさんは?という質問も投げかけられた。監督はすばらしい俳優には2種類あると考えていて、彼女は「現場ではそんな凄いことしてるように見えない、つまりすごく自然にそこにいるという感じなのに、編集してるときに"凄い"と思うことがある」タイプだという。「自然さの中に、ものすごい集中力がある。その集中力は歌と通じるものがあるのかなと感じます」


Coccoさんの内面から引き出された、母性をめぐる物語。子育てに悩む世のお母さんはもちろん、Coccoファン、塚本ファン必見の『KOTOKO』は2012年春、テアトル新宿ほか全国で公開予定。


(取材・文:加々良美保、撮影:三浦彩香、村田まゆ)

1126kotoko_04.jpg 1126kotoko_05.jpg 1126kotoko_06.jpg





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