11月24日(日)、有楽町朝日ホールにてコンペティション部門『春江水暖』が上映され、上映後のQ&Aにはグー・シャオガン監督が登壇した。グー監督は、「初めて日本に来ましたが、これまで多くの日本のアニメ、漫画、映画を見てきて、日本に親しみを感じており、日本へ来られて感動しています」と挨拶した。

本作は、浙江省杭州市の富陽を舞台に、一つの家族が変わっていくさまを町の近代化や四季折々の風景とともに描いたグーの監督デビュー作。市山尚三 東京フィルメックス・ディレクターは、昨年のカンヌ映画祭で偶然にもグー監督から製作途中の本作の一部を見せてもらい、完成を心待ちにしていたという。その翌年(’19)にはカンヌ映画祭批評家週間のクロージングを飾ることになり、今回、東京フィルメックスでの上映に至った。

さっそく質疑応答に移り、個性豊かな登場人物のキャスティングについて質問が及ぶと、グー監督は、自身の親戚・知人を起用したこと、脚本を書く段階からアテ書きをしたことを明かしてくれた。親戚・知人を起用した理由は、製作費を節約できるという事情に加え、時代の風景を切り取ること、市井の人々の雰囲気を伝えることを大切にする思いがあったからだという。
続いて、影響を受けた監督について訊かれると、ホウ・シャオシェン監督とエドワード・ヤン監督の名前を挙げたグー監督。「ストーリーを通じて現代の町の変化をいかにとらえるかを考えるうちに、英題にもなっている『富春山居図(Dwelling in the Fuchun Mountains)』という絵巻物からヒントを得て、映画を絵巻物のように描くことを思いつきました」と振り返りながら、「ホウ・シャオシェン監督の作品は、詩や散文など中国の伝統的な文人の視点で物語が組み立てられていると考えています。私自身は、文人的な視点と絵画を融合した映画を撮りたいと思いました」と、あらためて本作に込めた思いを語った。

また、劇中の音楽を担当しているのは、中国のロックスター、ドウ・ウェイさんで、最近は伝統的な古典と現代文化を融合した新たな音楽を生み出しているそうで、グー監督がどのようにして古典を現代に落とし込もうかと苦慮していたときに、大きな示唆を与えてくれたという。
さらに、続編を想起させるような終わり方について問われると、グー監督は「この続編は必ず撮りたいと思っています」と力強く答え、次のように説明した。「最初からそういう構想だったわけではなく、撮影が進むうちに映画に対する考え方に変化が生まれ、このスタッフと一緒にこれからも映画と芸術を探求していきたいと考えるようになりました。10年で一つの作品として杭州の町の変化を描く構想もあり、名画『清明上河図』のように一つの長い絵巻物として見せることができればと思います。」

最後に、グー監督は、市山ディレクターに「野菜買いのおじさん」というニックネームを付けていたことを明かして、場内から笑いを誘った。毎日野菜を買い歩くおじさんのように、映画祭で黙々とスクリーンからスクリーンを渡り歩く姿が「超カワイイ」とグー監督から評された市山ディレクターは、「光栄です」と笑顔で返し、和やかな雰囲気の中でQ&Aが終了した。本作の続編はもちろんのこと、グー監督のさらなる飛躍に期待したい。

(文・海野 由子、写真・白畑留美)






































会場のプレスからは審査経過について質問が出た。「審査員の間で評価がはっきり分かれた作品はあるか?」との質問にワン委員長は「最も時間をかけて話し合ったのは『象は静かに座っている』。一部の人が強く推し、別の人が問題点を指摘しまた」と説明。「個人的には、学生審査員賞に決まった『ロング・ジャーニー・イントゥ・ナイト』がどうしても好きになれず、これだけは賞を与えたくないなと思っていました(笑)。そんなことを思ったのも、私が年をとった証拠かもしれません。若い人は別の見方をする。そういうことなのでしょう。ともあれ、それ以外はみんなの意見に大きな相違はありませんでした」
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監督が呼んだ出演者が小笠原の自然に触れることで生じた変化は予見していたかという質問には「予想は出来ていませんでした」と豊田監督。ディジュリドゥ奏者のGOMAさんのシーンでは演奏している時に、クジラがやってくるとは予想してなかったと説明し、「とりあえずやってみよう」ということで撮影していたそうだ。「(出演者の方々は小笠原にやってきて)いろいろ思うところはあったと思うが、想像はできていなかったです。ただ、ドキュメンタリーを作る前に構成はできていました」と振り返っていた。