『父へのララバイ』 Lullaby to My Father
イスラエル、フランス、スイス / 2012 / 87分
監督:アモス・ギタイ (Amos GITAI)
【作品解説】
アモス・ギタイの新作『父へのララバイ』は、高名な建築家であったギタイの父ムニオ・ワインローブ・ギタイについての映画である。ムニオは1909年にポーランドのシレジアで生まれる。18歳の年にドイツに赴き、ヴァルター・グロピウスらによって提唱されたバウハウスで建築学を学ぶ。33年、バウハウスが閉鎖され、ナチスが台頭すると、ムニオは反ドイツの汚名を着せられてナチスに捕らえられる。友人たちの手助けによってスイスのバーゼルに逃れたムニオはパレスチナへの移住を決意し、ハイファへと向かう。映画は資料映像、証言などによるドキュメンタリーとムニオの青年時代を再現したドラマとで構成されるが、それは年代順ではなく、時代を前後しながらモザイクのように提示される。そこから浮かび上がるのは自らの父の個人史であるのみならず、イスラエルという国の建国の歴史でもある。その意味ではこの作品はギタイが母を描いた『カルメル』と対を成す作品と言えるだろう。ヴェネチアでのワールド・プレミア上映時と同様、『カルメル』を同時上映する。