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授賞式
from デイリーニュース2012 2012/12/ 1
11月23日(金)から9日間にわたって開催された第13回東京フィルメックス。会期を1日残した12月1日(土)、有楽町朝日ホールにて表彰式が行われ、学生審査員賞、観客賞、審査員特別賞、最優秀作品賞など各賞の表彰が行われた。フレッシュな顔ぶれの受賞者たちからは、溢れる喜びとともに、それぞれの作品に賭ける想いがスピーチで披露され、映画祭の締め括りに相応しいセレモニーとなった。
まずは、映画祭期間中に並行して開催された「タレント・キャンパス・トーキョー2012」の報告。次世代の人材育成を目的に、映画監督やプロデューサーを目指す15名のアジアの若者を集めたこのプロジェクトでは、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督を始めとしたメイン講師3名によるレクチャーや企画合評会を開催。参加者たちの企画の中から、タレント・キャンパス・トーキョーアワードとして、中国から参加したドキュメンタリー映画のプロデューサー、リ・シャンシャンさんの『THE ROAD』が選ばれた。壇上に上がったシャンシャンさんは、「初めてプレゼンした企画が、こんな大きな賞を受賞することになりました」と、興奮した面持ちで喜びを語った。
続いて、各受賞作品の表彰に先立ち、市山プログラム・ディレクターがイランの俳優ベヘルーズ・ヴォスギーさんに功労賞を贈ると発表。1960~70年代にかけて、マスード・キミヤイー監督の『ゲイサー』やアミール・ナデリ監督の『タングスィール』などの作品で、イランの国民的映画スターとして活躍したヴォスギーさん。今回、残念ながら来日は叶わなかったものの、クロージング作品として主演作『サイの季節』が上映されたことを機に、功労賞を贈ることになったと説明があった。
各賞表彰の先陣を切って市山Pディレクターから発表されたのは観客賞。受賞作がキム・ギドク監督の『ピエタ(原題)』と告げられると、来日できなかったギドク監督の代理として、日本配給を担当するキングレコードの山口さんが壇上に。「ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞受賞作ではあるものの、日本の観客に受け入れられるかどうか心配でした。しかし、熱狂的な観客で満席となった上映に加えて、この観客賞を受賞したことで、日本でも行けると確信しました」と、劇場公開に向けての力強い言葉が飛び出した。なお、キム・ギドク監督は昨年に続いて2年連続の観客賞受賞。
昨年創設された学生審査員賞は東京学生映画祭が主催する賞で、コンペティション部門9作品の中から3名の学生審査員、山戸結希さん、三原慧悟さん、長井龍さんが最優秀作品を選定。受賞作となった『あたしは世界なんかじゃないから』の高橋泉監督は「今から映画の世界に入っていこうとしている人たちに選んでもらえたことは、嬉しいというよりも、"やってやったな"という感じです。これからも超低予算映画をゴリゴリ作っていくつもりです」喜びと今後に対する意気込みを、独特の言葉で表現した。
さらに、審査員特別賞をソン・ファン監督の『記憶が私を見る』に贈ると、国際審査員のヴァレリ=アンヌ・クリステンさんとファテメ・モタメダリアさんが発表。これがデビュー作となるソン・ファン監督は、マイクを前に「すごく緊張しています」と前置き。観客を始め、映画のスタッフやプロデューサーのジャ・ジャンクー監督など、様々な人たちへの感謝とともに「この映画に出てくれたのは、私の家族です。この場には来ていませんが、家族に感謝したいと思います」と述べると、その初々しいスピーチに客席から温かな拍手が送られた。
最後に、国際審査員の秦早穂子さんとダン・ファイナウさんが最優秀作品賞としてアミール・マノール監督の『エピローグ』を発表。賞状を受け取ったマノール監督は、次のようなスピーチを披露した。「映画は世界を変える力を持ち、過去、現在から未来への橋渡しをする架け橋の役割を持っています。また、我々の社会や人生について反芻する道具としての力も持っています。新しい言語を作り上げ、新しい世界を探し出してゆくための道具です。つまり、自由、平等、平和をもたらすことができるものだと思うのです。映画は、国境を越えて対話を可能にし、世界の中で希望が繰り返される可能性を生み出してくれるのです」と、映画に対する自身の考えを語り、以下のように続けた。「この映画は、私の祖父母に捧げたいと思います。彼らは、自分たちが社会の中で忘れ去られた存在である事を気付かせるとともに、忘れてはいけないという事を私たちに教え、生きることの意味を考えさせてくれるのです」テルアビブに暮らす老夫婦の姿を描いた作品に込められた想いに、客席からは大きな拍手が送られた。
全ての賞の発表が終了すると、審査員長のSABUさんによる総評。壇上に上がったSABUさんは、「審査会は和気藹々として、審査員たちからは自分がオバマ大統領に似ているなんて言われて...」と和やかに進んだ審査の様子を語って会場を沸かせると、「フィルメックスは自分にとっても大切な映画祭なので、みなさん、これからも応援してください」と簡潔に締めくくった。
喜び冷めやらぬ受賞者たちと審査員揃っての写真撮影を経て、最後に林ディレクターが客席に向かって挨拶。「皆様の映画を愛する気持ちに支えられて、フィルメックスは続いていきます。来年もまたお待ちしています。本当にありがとうございました。」客席からは盛大な拍手が送られ、授賞式は無事に終了した。
(取材・文:井上健一、撮影:穴田香織、清水優里菜、関戸あゆみ、永島聡子、村田まゆ、吉田留美)
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