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「イスラエル映画を紐解く」トークショーレポート


TOKYO FILMeX (2012年10月11日 18:00)

is04mainS.jpg『アジア映画の森―新世紀の映画地図』(作品社)の刊行を記念し、10月13日まで、アテネ・フランセ文化センターで「特集 アジア映画の森」が開催された。10月11日は、「イスラエル映画を紐解く」と題し、ラファエル・ナジャリ監督によるドキュメンタリー映画『イスラエル映画史(第一部)』(2009)、 『イスラエル映画史(第二部)』(2009)の上映と、書籍でイスラエルパートの監修を務めた市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターによるトークショーが行われた。

 
『イスラエル映画史』は、作品の引用映像や映画関係者によるインタビューから、イスラエル映画史の1933年から2005年までを振り返る構成となっている。ナジャリ監督は、『テヒリーム』(2007)で第8回東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞。本作では「一国の映画史を4時間足らずで語ろうという大変なことにチャレンジしているが、映画史とイスラエルの歴史が密接に繋がっていることがわかる構成になっている。ナジャリ監督はユダヤ人であるがフランス生まれで、アメリカに渡ってからイスラエルに移住しており、異邦人としての独自の視点も入っている」と市山Pディレクター。
 
続いて、今年の東京フィルメックスで、イスラエルと日本の外交関係樹立60周年を記念して開催される特集上映「イスラエル映画傑作選」の話題に。今日はそれらの作品を通してイスラエル映画史を語ろうと思う、と前置きがあった。林 加奈子 東京フィルメックス・ディレクターと市山Pディレクターがエルサレム映画祭に参加した際にシネマテークで試写したり、現地で買い求めたDVDなど膨大な数のイスラエル映画の中から、今まで観られる機会がなかったものを、と1960年代に製作された、あるいは60年代を舞台とした4本の傑作を厳選した。
 
is01sub01S.jpgまずは『イスラエル映画史(第一部)』にも登場したメナヘム・ゴーラン監督。ロンドンに留学してロジャー・コーマン監督の助監督を務め、イスラエル帰国後に監督デビュー。後にアメリカに渡り、ハリウッドの大プロデューサーとなった。非常に面白い経歴を持った人物、と市山Pディレクター。特集で上映されるのは監督デビュー作の『エルドラド』(1963)。殺人の疑いで逮捕・釈放された男が、否応なく暗黒街の仕事に巻き込まれていく様を描いている。舞台はテルアビブのヤッファ地区。恋愛あり、アクションありで、地中海の街の風景がうまく取り入れられ、イタリアのネオレアリズモを彷彿とさせるような作風であるという。ゴーラン監督は、同じく特集で上映されるエフライム・キション監督の『サラー・シャバティー氏』(1964)をプロデュース。この作品はアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。『グローイング・アップ』(1978)でプロデューサーとして大成功を収め、1980年代にはハリウッド進出を果たした。キャノン・フィルム社を立ち上げ、『デルタ・フォース』(1985)、『暴走機関車』(1985)などを生み出した。
 
is02mainS.jpg『イスラエル映画史(第一部)』では、キション監督の『穴を掘る男』なども引用された。小市民的な人物を主人公としている。キション監督は、イスラエル国民に尋ねるとまず名前が挙がるほどの国民的監督で、コメディを得意とし、日本でいう山田洋次監督や森崎東監督の作風に近いという。『サラー・シャバティー氏』はエジプトからイスラエルに移住したユダヤ人一家が主人公で、広い家に引っ越すため、お金を稼ごうと奮闘する。市山Pディレクターは「当時のイスラエル社会やユダヤ人に対する自己批評という面もあるだろう」と分析する。
 
以上2作品には当時大スターだったトポルが主演しているが「非常に演技に幅がある俳優で、とても同じ人には見えない」と市山Pディレクター。この2作品はイスラエルのヌーベル・ヴァーグと言うべきもので、建国の英雄を描いたプロパガンダ色の強いそれまでのイスラエル映画とは一線を画し、絶対に外せない作品であるそうだ。
 
is03mainS.jpg続いて『子どもとの3日間』(1967)が上映されるウリ・ゾハル監督。ゴーラン、キション監督の娯楽的な作風とは違い、芸術性・作家性が強く、同時代のフランスにおけるヌーベル・ヴァーグと呼応する作家である。『イスラエル映画史(第一部)』ではデビュー作『月の穴』などが紹介されている。
 
1970年代にかけて、娯楽映画とともに戦争映画も作られるようになる。1967年の六日間戦争(第三次中東戦争)、1973年のヨム・キプール戦争と、戦争を強く意識せざるをえない時代。1980年代になると、パレスチナ人も映画に登場し大きな役割を果たすようになる。『イスラエル映画史(第二部)』で紹介される、ラフィ・ブカイー監督の『アバンチ・ポポロ』(1986)は、六日間戦争を題材に、シナイ半島を敗走する二人のエジプト兵が主人公で様々な事件に遭遇する。イスラエル映画でありながらアラブ人の視点で描き、反戦のメッセージが込められている。現在40~50代のイスラエル人の心に深い傷を残したレバノン戦争(1982年)へのアンチテーゼとして作られた側面もあるが、その上で、砂漠を横断するロードムービーとしてもシンプルに面白く観ることができる作品である。
 
ss05mainS.jpg最後に、今年のフィルメックスの新作群からもイスラエルに関連した作品を紹介。フィルメックスではお馴染みの、イスラエルの巨匠アモス・ギタイ監督の新作『父へのララバイ』(2012)は、今年のベネチア国際映画祭でワールド・プレミア上映された作品。著名な建築家であった監督の父親の生涯を通じて、イスラエルの歴史が見えてくる。第10回東京フィルメックスで上映した、ギタイ監督の母親がテーマの『カルメル』(2009)も再上映する。イランのモフセン・マフマルバフ監督の新作『庭師』(2012)は、イラン発祥のバハーイー教の総本山があるイスラエル・ハイファで撮影された。トークショーの数日前に釜山国際映画祭でワールド・プレミア上映されたばかり。宗教がテーマのドキュメンタリーで、今のイランとイスラエル、宗教と戦争の関係について観客に訴えかける内容となっている。
コンペティション部門に入った『514号室』と『エピローグ』はいずれもイスラエルの新人監督の作品。
 
「今年のフィルメックスは、イスラエル映画がクローズアップされる年になりました。ぜひ会場へ足を運んでいただければと思います」と市山Pディレクターは締めくくった。第13回東京フィルメックスは11月23日(金・祝)から10日間開催される。また、「イスラエル映画傑作選」は、映画祭閉幕後の12月8日、9日にオーディトリウム渋谷でも再上映が行われる。
(報告:大下由美)






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