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『独身男』Q&A


TOKYO FILMeX (2010年11月25日 19:00)

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11月25日、有楽町朝日ホールにて、コンペティション作品『独身男』が上映された。上映後、中国のハオ・ジェ監督と、女優のイェランさん、プロデューサーのケビン・クーさんがQ&Aに登壇した。今作がデビュー作となるハオ監督はまだ20代。黒のスーツに身を包み初々しさを漂わせていた。


「この作品は私の第一作です。お気づきの点があればぜひお話いただければと思います」とハオ監督は観客に対し、謙虚に意見を求めた。客席から「出演者が皆非常にリアル。どう演技を付けていったのか教えてほしい」と質問が挙がった。この作品のロケ地である顧家溝(グージャゴウ)という村は監督の出身地であり、女優のイェランさん以外は全て地元の方々だそうだ。「馴染みの人たちなので、皆で一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりしながら、非常にスムーズに撮影が進みました」とハオ監督。


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そこで、市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターがイェランさんに「唯一のプロの役者として村の人々と共演されて、苦労はあったか」と質問。アマチュアの方々と一緒に演技をすることはとても難しかった、とイェランさん。「プロは訓練を積んできているため、その経験の通りに演じてしまうことがあります。そのために共演者の演技と合わなくなることが多く、一生懸命合わせるよう努力しましたが、改めて作品を観てもう少し努力が足りなかったと思います」。自然さが足りなかったとイェランさんは振り返り、「アマチュアである共演者の皆さんの方がずっと自然に、素晴らしい演技をしていると思います」と村の共演者を称えた。


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今作は、独身の老年男性の性への欲望を、ストレートに、コメディ調に描いた作品である。上映中に客席から度々笑いが起こっていたが、果たしてどの程度中国の現状に即しているのか、質問が挙がった。「ここに描かれたのは中国の農村における独身男性の実態で、特に北部の僻地の村々では普遍的な現象です。この物語の中で、出演者の半分は実際に自分たちの出来事を、もう半分は他の人のものを演じています」とハオ監督は説明した。また監督は、長年孤独で過ごすと性のの問題が生じることを指摘し、そのことにちなんだ中国の言葉を例に挙げた。「例えば中国には『馬を替える』という意味の言葉があります。元来は、馬車の馬が使えなくなった場合、別の馬を補い再び馬車を走らせるようにするという意味ですが、これは性の相手を替えるということを暗示し、独身男性でも性欲にうまく対処できるよう"性の自由生活"がその言葉に表されているのです」。


次に、コメディタッチとなっている意図について、英語での質問が挙がった。ハオ監督は、「独身男たちのグループにはどこか特別なものがありました。彼らを捉えたからこそコメディタッチに仕上がったのです。私自身の主観で、面白いと感じた点を脚本に盛り込み映画にしていきました。その結果エロもあり、コメディもある作品になりました」と答えた。


今作には、独身男が、嫁とするためイェランさん演じる若い娘をお金で買うシーンがある。中国における人身売買について質問が挙がると、ハオ監督は「数年間まではひどい状況だったがだいぶ改善された」と説明した。お金は親のところに入らず、ブローカーがほとんど持っていってしまうという。「私自身は村出身の人間ということで、外の人の見方とは少し違うのです。買った女性に逃げられ、お金も盗られた独身男たちの悲惨な実態もよく知っています」。その一方で、逃げずに村に残っている女性もいる。今作でモデルとなった女性は嫁ぎ先の家族ととても幸せに暮らしていると、ハオ監督は語った。


こうしたQ&Aの経験はあまりないというハオ監督は、大勢の観客の前にして「映画を撮るときは緊張しませんが、実は今とても緊張しています」と話し出す一場面もあった。次回作は、寡婦をテーマにしようと構想中とのこと。「(今作の『Single Man』に対し)『Single Woman』ということですね」という監督の言葉に、客席から笑いが起こった。


(取材・文:大下由美、写真:米村智絵)

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