開会式・『ブンミおじさんの森』舞台挨拶
TOKYO FILMeX ( 2010年11月20日 16:00)
東京国際フォーラムで11月20日、第11回東京フィルメックスの開会式が行われた。大きなホールでの開催となったが、開会宣言に登壇した林 加奈子東京フィルメックスディレクターを、満場の観客からの大きな拍手が包んだ。「ようこそ。熱いお客様がいらしてこそ、映画の未来は続きます」と冒頭で語りかけた林ディレクター。その言葉どおり、セレモニーと、続くオープニング作品上映は、観客のみならず、映画に関わる者すべての情熱を感じさせる内容となった。
力強く開会を宣言した林ディレクターは、続いて「とにかく、とにかく、たくさん(作品を)ご覧ください。そして、積極的に上映後のQ&Aにご参加ください」と呼びかけた。そして観客一同が心待ちにしているオープニング作品『ブンミおじさんの森』について「最高にフレッシュで、素晴らしく自由。どうぞお楽しみください」と述べ、挨拶を締めくくった。
続いて、今年の審査委員長と各審査員が紹介された。香港国際映画祭アーティスティック・ディレクターのリー・チョクトーさん、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督、中国の映画監督ニン・インさん、脚本家・スクリプターの白鳥あかねさんが登壇。最後に、審査委員長であるベルリン映画祭フォーラム部門創設者のウルリッヒ・グレゴールさんが登壇した。
開会宣言で林ディレクターより「あるべき映画祭とは何か、ずっと私たちを導いてくださっている」と紹介されていたグレゴール審査委員長。「この場に立つことができて大変嬉しく、光栄。東京フィルメックスの発展は第1回から見守ってきたので、なおさら気持ちが高まる」と感慨深げに語った。また、「審査員たちと映画について話し合うことを大変楽しみにしている。鑑賞することは大事だが、その後に映画について話し合うこと、考えることも非常に大切。(審査のための)議論は非常に面白くなると思う」と期待の言葉を続けた。そして「映画祭の観客と主催者を結びつけるもの。それは映画への情熱だと思う」と述べ、挨拶を締めくくった。
引き続き、オープニング作品として上映される『ブンミおじさんの森』のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が舞台挨拶を行った。これまで『ブリスフリー・ユアーズ』(02)と『トロピカル・マラディ』(04)で2度最優秀作品賞を受賞するなど、東京フィルメックスとはつながりが深いウィーラセタクン監督。まず「まるで故郷に帰ってきたような感覚」と映画祭参加の喜びを語った。
この日を心待ちにしていた観客から感じ取れる熱気の源は、今年5月に開催されたカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『ブンミおじさんの森』を早く観たい、という思いだろう。日本では来春公開が決まっているが、満員の客席を見た監督は、「商業公開の時に、まだ観ていないお客様が残っているといいのですが・・・」と会場を湧かせた。今年は、さまざまな映画祭で今作を上映して回ったが、各地での反応は、「この映画をドラマだと言う人もいれば、政治映画だと言った人もいる。また、コメディだ、との声も多かった」とのこと。そして東京フィルメックスの観客には「皆さん一人一人の解釈で観てほしい。リラックスして、イメージと音が自分の中に流れこむ体験を楽しんで」と語りかけて微笑んだ。
熱気とともに幕を開けた第11回東京フィルメックス。最終日の11月28日には、コンペティション部門9作品を対象とした最優秀作品賞、審査員特別賞などが発表される。
(取材・文:新田理恵、写真:村田まゆ、関戸あゆみ、中堀正夫)
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