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閉会式


TOKYO FILMeX (2010年11月28日 19:00)

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11月20日(土)から9日間にわたって開催された第11回東京フィルメックス。最終日の11月28日(日)夕刻、有楽町朝日ホールにて閉会式が行われ、観客賞、審査員特別賞(コダックVISIONアワード)、最優秀作品賞など各賞受賞者の表彰が行われた。受賞者たちのスピーチは、いずれも客席の共感を呼び、閉会式にふさわしい感動的なセレモニーとなった。


まず冒頭、今年初めての取り組みとして開催された人材育成プロジェクト「ネクスト・マスターズ2010」の報告が行われた。アジアから映画の未来を担う人材20名が参加、侯孝賢監督など4名のメイン講師による6日間のワークショップを中心に行なわれたこのプロジェクトでは、参加者がプレゼンした企画に対して、2つの賞を授与。最優秀企画賞に輝いたのは、アンソニー・チェン監督の『Ilo Ilo』。続いて、スペシャル・メンションがシャーロット・リム・レイ・クエン監督の『IT MUST BE A CAMEL』に贈られた。


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続いて5名の審査員が登壇し、各賞の表彰へ。最初に発表された観客賞は想田和弘監督の『Peace』が受賞。すでに、ベルリン国際映画祭など世界中の映画祭で評価され、実績十分の想田監督だったが、「観客賞には一生縁がないと思っていたので、すごく驚いています」と、予想外の受賞だったことを明かし、「受賞は出演してくれた猫たちのおかげだと思うので、お土産に好物のアナゴを持って行きます」と、観客の心を掴んだ猫たちへの感謝を示す微笑ましいスピーチで、会場の笑いを誘った。
その後、ウルリッヒ・グレゴール審査委員長が審査の経緯を含めた総評を語った。「コンペティション部門に出品された10本の映画を通して、現代に生きること、社会状況や政治状況、そして人間の暮らしぶりについて、重要な示唆を得ました。いずれも優れた映画であり、審査員同士の立場も考え方も異なるので、結論を出すのは容易ではありませんでした。その中でも、芸術として、表現のメディアとして可能性を持っている作品に賞を贈ることにしました」と議論白熱した審査の様子を述べ、審査結果の発表に移った。


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まず、審査員特別賞「コダックVISIONアワード」が、審査員のリー・チョクトーさんから発表され、中国のハオ・ジェ監督『独身男』が受賞。この作品が初の長編となるハオ監督は受賞スピーチで、すべての関係者に対する感謝の言葉を述べた後、「個人的に1人の人に対して感謝を述べることを許してください」と前置きし、こう続けた。「それは、僕の父です。この映画の脚本は父と母と一緒に家族3人で書きましたが、父は2008年、製作の準備中に亡くなりました。でもそれからも、父は自分のことを見守ってくれています。......お父さん、あなたの息子は大丈夫です。お父さん、一緒に頑張っていきましょう」。天国の父親に向けた最後の言葉は、監督の出身地の方言で語りかけており、感極まった通訳の方が言葉に詰まる場面も。父親への感謝と愛情のこもった言葉に感銘を受けた客席からは、惜しみない拍手が送られた。


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続いて最優秀作品賞を審査員の白鳥あかねさんが発表。内田伸輝監督の『ふゆの獣』がその栄誉に輝いた。登壇した内田監督は「誰がこの受賞を予想したでしょう?僕は予想できませんでした。上映作品はどれもすごい作品ばかりで、自分はただ毎日、楽しく勉強させてもらうばかりでした」と予想外の受賞に対する感想を興奮した面持ちで語った。続けて、本作が製作費110万円の自主映画であることを明かすと、自主映画を製作している仲間たちに向けて、エールを送った。「本当に、日本の自主映画はレベルが高いと思います。これをきっかけにして、皆さんがドンドン出てきてくれたら...と思っています」


その後、内田監督の招きでスタッフ、キャストが登壇。出演者の加藤めぐみさんが代表してスピーチ。感激した加藤さんは、言葉を詰まらせながらも「上映していただけるだけで、本当に嬉しかったんですが...。こんなに素晴らしい賞を頂けて、本当に嬉しく思っています。ありがとうございます」と挨拶。続いてほぼ全編アドリブで構成された映画を見事にまとめ上げた内田監督に感謝を述べた。「この受賞は、監督がここにいる役者4人の演技を信じてくれたおかげだと思っています。私たちを信じてくれて、ありがとう」様々な困難を乗り越えて完成に至ったチームワークの良さを感じさせるコメントに、会場からは割れんばかりの拍手が送られた。
その後、受賞者の写真撮影を経て、林加奈子ディレクターの「見る人と作る人がいて、初めて映画祭が続けられます。刺激的な素晴らしい作品がある限り、フィルメックスは続きます。また来年お会いしましょう」という閉会の挨拶で式は終了した。


今年も世界中の話題作、注目作を紹介してきた第11回東京フィルメックス。今年は新たな試みとして人材育成プロジェクト「ネクスト・マスターズ2010」を開催するとともに、今後の新たなムーブメントを期待させる受賞結果を持って終了となった。今後、ここから世界に羽ばたく映像作家が現れることを期待して、その動向を見守っていただきたい。すでに、来年の開催日程は2011年11月19日~11月27日の予定。また来年、皆様の前に数々の傑作をご紹介いたしますので、楽しみにお待ちください。


(取材・文:井上健一、写真:関戸あゆみ、村田まゆ、米村智絵)

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