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東京フィルメックス in しんゆり『悲しみのミルク』トークショー


TOKYO FILMeX (2010年10月 9日 23:02)

1009milk01.jpg10月9日、KAWASAKIしんゆり映画祭の初日となるこの日、ワーナー・マイカル・シネマズ新百合ケ丘において、第10回東京フィルメックスの特別招待作品『悲しみのミルク』(2008年、クラウディア・リョサ監督)の上映が行われました。
上映後、市山尚三東京フィルメックスプログラム・ディレクターをゲストに迎えてのトークショーが開催されました。聞き手はしんゆり映画祭顧問で、第11回東京フィルメックス・コンペティション部門の審査員を務める白鳥あかねさん。昨年東京フィルメックスでこの作品を見て深く感動したという白鳥さんは、日本でもっと多くの上映機会を設けたい、という熱い思いで今回の上映を実現させたのだそう。




白鳥(以下、白):クラウディア・リョサ監督(以下、監督)は、『悲しみのミルク』が2作目ということでしたが。

市山(以下、市):監督はペルー生れで、リマ大学で情報学を学び、マドリードの芸術大学に留学して映画を学んでいます。つい先日、ノーベル文学賞を受賞したマリオ・バルガス・リョサの姪にあたる人です。学生時代に書いた脚本をハバナ映画祭の脚本コンクールに応募したところ、それが受賞し、その脚本を映画化したのがデビュー作の『マデイヌサ』です。『マデイヌサ』はサンダンス映画祭などで高い評価を受けており、その評価が2作目の『悲しみのミルク』につながったのだと思います。『悲しみのミルク』の製作にあたっては、スペインから製作資金を得るとともに、ベルリン映画祭のワールド・シネマ・ファンド(第三世界の映画製作を助成する基金)の助成も得ています。

1009milk02.jpg白:冒頭で主人公の母親が悲惨な体験を歌にするなど、劇中の歌が印象的でしたが、地域性などはあるのでしょうか。

市山:実際にインディオにそのような風習があるのかどうか詳しいことはわからないのですが、監督のインタビューによると、悲惨な体験やつらい感情を歌にすることで、隠されていた意識を表現できるという意図で主人公たちに歌を歌わせたようです。
本作の素晴らしい点は、画面に悲惨な歴史を直接的に表さないことにあると思います。見せないからこそ、じわじわと実感させられる。この映画を見た後、色々と調べた結果、ペルーで起こった悲惨な出来事を初めて知りました。1980年頃からセンデロ・ルミノソというゲリラが農村地帯で勢力を拡大したことがこの映画の背景になっていますが、インディオたちはゲリラの側からと討伐に来た軍の側からの双方から迫害を受けたと言われています。日本では、1990年に日系のフジモリ氏が大統領に選ばれた、というような形でペルーの話題が入って来ましたが、その頃ペルーで実際に何が起こっているのか、という細部までは十分に報道されていなかったように思います。

白:世界のことを日本の人は知らなければならず、どうしても知ってもらいたくて本作を上映しました。

市:この映画には悲惨な出来事が描かれていますが、同時に様々なところで希望を感じさせます。主人公の叔父が結婚式場を経営しているという設定なので、映画には何度も結婚式のシーンが登場します。過去には悲惨な出来事があったが、それでも人は生き続け、結婚して未来につながってゆく......。悲惨な歴史を描くだけでなく、未来への希望も見せているところが素晴らしいと思います。


1009milk03.jpg白:主人公を演じたマガリ・ソリエさんは歌手だそうですね?
市:ラテンアメリカの音楽には詳しくないので、この映画を見て初めて知ったのですが、歌手として有名な方のようです。リョサ監督のデビュー作『マデイヌサ』で主役に起用され、本作にも続いて主演したのですが、最近は他の監督の作品にも女優として起用されているそうです。ベルリン映画祭の授賞式の時には、最初はスペイン語で挨拶したと思いますが、途中からインディオの言葉であるケチュア語でスピーチを行い、更にアカペラで歌を歌い、場内がスタンディング・オベーションになるという感動的な一幕がありました。

白:最近の中南米の映画事情は?

市:中南米からは、ここ最近多くの面白い映画が生み出されています。ブラジルやアルゼンチンの映画産業は興隆を見せており、またブラジルを除くほとんどの国々はスペイン語圏なので、スペインからの出資を得て多くの映画が作られています。ペルーについては、もともと年に数本の映画しか作られていなかったようですが、『悲しみのミルク』がベルリンで金熊賞をとり、アカデミー外国語映画賞にノミネートされたことが大きな反響を呼び、今年はこれまでよりも多くの映画が製作されたそうです。今年のカンヌ映画祭でも『十月』という題名の作品が上映されていました。



映画の内容について、中南米の映画産業について、また日本でのミニシアター系作品の公開状況について等々、多岐にわたってのトークショーは映画祭オープニングの日に相応しい内容であり、温かい拍手に包まれて終了しました。

なお、『悲しみのミルク』は、今後、川崎市アートセンターでの上映を皮切りに、全国コミュニティシネマ支援センターのネットワークでの上映も予定しています。



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