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審査員会見


TOKYO FILMeX (2010年11月28日 12:30)

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11月28日午後、有楽町朝日ホール11階スクエアにて、審査員会見が行われた。ウルリッヒ・グレゴールさん審査委員長、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、ニン・イン監督、白鳥あかねさん、リー・チョクトーさんの審査員一同が出席し、第11回東京フィルメックス・コンペティションの受賞結果の発表が行われた。


最初にグレゴール審査委員長が登壇し、「10本のコンペ作品だけでなく、他の上映作品も、幅がありバラエティ豊かだった。それだけでなく、それぞれが作品群の中で重要な位置を持ち、選考されたことに正当性を持っていた。各作品は内容やスタイルに大きな違いはあるが、互いに補完し合い、存在価値を高めていた」と総評を述べた。
また、「審査員の職業的な出自はさまざま。映画の作り手、批評家、映画祭の運営に携わる者。さまざまな意見が出て、完全な一致はしませんでした。結果的には2本に絞り込みましたが、受賞しなかった作品にも、賞を与えられるべきものがあった、とここで申し上げておきます」と、審査会で白熱した議論が戦わされたことをうかがわせた。


続いて、審査員特別賞「コダックVISIONアワード」の発表。
ハオ・ジェ監督の『独身男』(中国)に贈られることがアピチャッポン監督から述べられ、リー・チョクトーさんによって「監督と、自身に近い役柄を演じる村人たちとの間のコラボレーションから育った高い有機性と、中国の農村に存在する人間の性欲と社会問題を中立的な視点で描いていることを評価します」との受賞理由が読み上げられた。


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ここで、ハオ監督が呼ばれ、会場は大きな拍手に包まれた。緊張した面持ちでマイクの前に立ったハオ監督は「このような励ましの賞を頂いたことは、僕のような新人監督にとっては次の作品と撮る力となるものです。また、僕らのようなスタイルで映画を作っている人々にも意義のあることだと思います」と受賞の喜びを語った。
次にプロデューサーのケビン・クーさんも登壇し、「東京フィルメックスは、千里馬を見分ける伯楽といえるでしょう。桜の国で、このような素晴らしい友人に出会えたことを嬉しく思います」と中国語で挨拶。続いて英語で「この作品は今村昌平監督に捧げたいと思います。彼の作品は人間の下半身と社会の下層部にカメラを向けることを私たちに教えてくれました」と語った。
続いて主演のイェランさんが「マスコミの皆さん、審査員の皆さん、映画祭の皆さん、ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。


次に最優秀作品賞がニン・イン監督から発表された。受賞したのは内田伸輝監督の『ふゆの獣』(日本)。白鳥さんから「本作は映画的手法を用いて心理ドラマを類いまれなる強烈なレベルへと発展させています。特にカメラの使い方が際立っており、俳優たちの演技も同様に素晴らしいものです。また審査員は、この作品が非常に限られた予算のなかで大きな表現力を極めていることも高く評価します」と受賞理由が述べられた。


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拍手に迎えられて登壇した内田伸輝監督は、「誰がこの結果を予想したでしょうか...僕はまったく予想していなかったので、ただ映画祭の最終日を思い切り楽しもうと思って、フィルメックスTシャツを着てきました(笑)」とアニエスb.から提供されたボーダーのスタッフTシャツを披露。「ほんとうにびっくりしています」と驚きを隠せない様子だった。
また、「この映画は完全な自主映画です。自己資金で作りました。当然配給のことも考えず、自分たちのやりたいことをやろうと思って作りました。これから自分たちで宣伝して、どこかで良い形で上映できれば、と思っています。出演者とスタッフに感謝します。出演者の方々の演技はとてもレベルが高いもので、これから活躍してほしい皆さんです」と語った。


続いて行われた質疑応答では、「この2作品を推した審査員に、選考理由を訊きたい」との質問が上がった。
グレゴール審査委員長は最優秀作品賞について、「『ふゆの獣』はカメラワークが素晴らしく、機動性が際立っていた。そのスタイルと映画的言語が一致した希有な作品」であると説明。『独身男』についてはアピチャッポン監督が、「この映画には発見の喜びがあり、私たちをどこに導いてくれるのだろうかと、いう思いで見ていました。被写体や主題に対する映画作家の情熱が溢れていて、監督が楽しんで作っていることが伝わってきました。私は映画において、コラボレーションということを重要視します。これはプロの俳優ではない人々とのコラボレーションで作り上げた映画で、その意味でとても珍しい作品」と語り、「ハオ監督の次回作が楽しみです」と期待を滲ませた。


内田監督には「制作にこぎつけた経緯、役者集めはどのような方法で行ったのか」という質問が飛んだ。『ふゆの獣』では予算が非常に限られていたため、無料で出てくれる出演者をMixiで募ったという。そうして集められた俳優たちに求められたのは、なんと即興の演技。「用意した脚本はあったのですが、役者さんたちには「それは忘れてください」と言いました。プロットのアウトラインだけ決めて、カメラも即興で動かした」という。制作資金はトータルで110万円ほど、と監督から明かされると、審査員席から驚きの声が漏れた。


今年の作品の特徴・傾向を問う声にグレゴール審査委員長は「ひとつの傾向というものはない」とした上で「いくつかのコンセプトが発見できました。映画の構造にコンセプトが移し替えられ、その過程で新しい映画的言語が作られていく、という試みが見られました。それが必ずしも成功していたというわけではありませんが、既存の語り方を乗り越えていこうという意欲が見られたこと、それが重要なのです。新しいものへの希求、これは東京フィルメックスの第一回目からある傾向だと言えるでしょう」と語った。


最後に白鳥さんが「作品は非常に多様で審査は非常に悩んだが、受賞結果は「映画の未来へ」という東京フィルメックスの理念にふさわしいものになったと思います」と会見を締めくくった。


(取材・文:花房佳代、写真:関戸あゆみ)

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