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丸カフェ・シネマ塾(第3回)「フィルメックスが待ち遠しい! Vol.2」


TOKYO FILMeX (2010年11月17日 22:30)

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11月17日、東京・丸の内カフェにて「丸カフェ・シネマ塾」の第3弾「フィルメックスが待ち遠しい!Part2」が開催された。映画祭直前のカウントダウン企画として毎週水曜3回にわたって行われたイベントもいよいよ最終回。今回は東京フィルメックスとは浅からぬ縁をお持ちの行定勲監督をゲストに迎え、世界の映画祭や今回の見どころなど、聞き手の市山尚三東京フィルメックス プログラム・ディレクターがたっぷりと伺った。

冒頭、市山Pディレクターが「早いものであれからもう11年ですね」と切り出した「あれ」とは、記念すべき第1回東京フィルメックスのこと。そのコンペティション部門で行定監督の『贅沢な骨』が上映された。「『贅沢な骨』は、800万円で作った自主映画なんです。プロの役者さんは出ているけれど、ノーギャラでスタッフを集めて。それを市山さんに観て選んでもらったんで非常に感謝してたんです」と行定監督。同じ第1回で上映された作品の監督のなかには、日本でも『スプリング・フィーバー』が現在公開されているロウ・イエ監督、『イップ・マン 葉問』などで知られ、今や香港の大アクション監督となったウィルソン・イップ監督、そして今回オープニングで上映される『ブンミおじさんの森』がカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督と、娯楽からアートまで「いろいろなタイプのすごい人がいた」と市山Pディレクターは振り返った。行定監督も当時上映されたアピチャッポン監督のデビュー作『真昼の不思議な物体』を観ており「短い映画だったんですけど、ほんとに不思議な映画だと思った。世界は広いなと、こんな自由でいいのかと思った」という。


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また、第8回では審査員も務めた行定監督。海外の映画祭でいくつもの審査員経験を持つ監督にとって「フィルメックスの審査は一番"腑に落ちる"審査会」だったそう。審査の場で自由な意見を戦わせていくうちに「政局」が変わっていく面白さのようなものもあるとか。そもそも映画自体は平等であるという前提の上で、「(コンペティションの結果は)審査員が、映画を観て、その時どういう会話をしたかの結果なんですよね。審査員をやってみると映画をつくる本質みたいなものを、逆に勉強することになる。海外の審査は、それぞれ全然違う思想を持った国の人たち、自分たちの生き方を持った人たちが、ほんとにそれを懸けて語るので。暴言はいても通訳さんがやわらかく言ってくれるんで(笑)、それもいいかなと」。
行定監督は、林海象監督の助監督をしていた時代に『アジアンビート』シリーズで、台湾のエドワード・ヤン監督はじめ、アジア各国の映画人と知り合いになったそうだ。監督の「もっとアジア人が手を組んで映画をつくっていくべき」という10年来の持論はそうした経験によって導かれたものだろうか。「国を越境していろんな人と手を組むということは、新たな自分の本質が見えるし、くつがえしてもくれる」。日本の、国内で生き延びることだけを念頭においたような作品が蔓延することに対する閉塞感、それを打ち破る起爆剤になるのではないか。行定監督が三島由紀夫原作『春の雪』の映画化にあたって、ホウ・シャオシェン監督やウォン・カーウァイ監督の撮影を手がけた名カメラマン、リー・ピンビンを起用したのもそのような意図があったという。
そしてそもそも、そんな発想が湧いたきっかけとなったのは、釜山国際映画祭でホウ・シャオシェン監督と初めて会ったことから始まり、後にホウ監督に台湾の金馬奨の審査員として招待され、その飲み会の席でリー・ピンビンと知り合ったという経緯もあったそうで、「つながり」の場としての映画祭の役割は大きかったようだ。現に、釜山映画祭が企画のゆりかごとなって製作され、行定監督も『かもめ』という一編で参加したオムニバス映画『カメリア』の例もある。
 「国内でそういう交流があるのがフィルメックスかなと。この映画祭のラインナップへの信頼が、そのつながりを作っている気がします。この11年の歩みは、多分フィルメックスのスタッフたちと映画監督たちがつながっている証だろうなと思うんですよね」(行定監督)
 ここで、市山Pディレクターが先週同じ場所で行われたアミール・ナデリ監督と俳優の西島秀俊さんをゲストにお招きしてのトーク・イベントに触れ、「まさにフィルメックスでイランの監督と日本の俳優が出会って、途中紆余曲折はありながらも遂に映画を1本作ってしまった」と、映画祭の出会いのたまものともいうべきエピソードを紹介した。


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続いて、今回の上映作品のなかから何本かの予告編が流れた後、行定監督に「これは面白そう」という作品についていくつか挙げていただいた。
まずは第1回のコンペティションで一緒だったアピチャッポン監督の『ブンミおじさんの森』。クロージング作品で、前作『シークレット・サンシャイン』をも凌ぐとの評判も高いイ・チャンドン監督の『詩』。そしてカンヌ映画祭の批評家週間でも上映された、キム・ギドク監督一派のチャン・チョルス監督による第1作『ビー・デビル』。行定監督がとても好きな作品という『最愛の夏』のチャン・ツォーチ監督作品『愛が訪れる時』。
また、コンペ部門の『夏のない年』は、監督が近年「アジア映画で一番元気」と注目しているマレーシア映画。市山Pディレクターによると「このタン・チュイムイ監督もなんですけれど、残念ながら故人となったヤスミン・アフマド監督の周囲に集まっていた人たちが続々デビューしている感じはありますね」とのこと。行定監督もマレーシア映画の「融合された、民族をちょっと乗り越えたような世界観」が魅力と語る。
最後に取り上げられたのは中国のハオ・ジェ監督のデビュー作『独身男』。行定監督も予告編を観ながら「(劇中に登場する)歌だけで、観たくなる」「むきだしのパワーを感じる」と期待をのぞかせた。

次の話題は「ゴールデン・クラシック1950」と銘打った日本映画の特集上映。今回は1950年代、小津安二郎監督、木下惠介監督らとともに松竹大船の黄金期を築いた渋谷実監督に特にスポットを当てた企画となっている。
行定監督はこれまでに観た渋谷作品について、『本日休診』や『もず』を例に引きながら「小津のようにスタイリッシュじゃないけれど、山本薩夫監督と同じような感じで渋谷も"職人"で、スタイルではなくて物語を的確に伝える・・・そうすると一見こぢんまり見えてしまうんだけど、ある種の豊かさがある。自分も(そういった方向を)目指しているんですが、はみ出したりはしてないんだけど、非常にうまい監督だなと」。
 来年のベルリン国際映画祭での上映も「即決」したという渋谷監督作品。DVD化されている作品も多くはないので、この機会にニュープリントでぜひご覧いただきたいという市山Pディレクターのおすすめは『正義派』。佐田啓二や久我美子が登場するスター映画でありながら、「ジャンルを言い表せないような微妙なニュアンス」が魅力な群像劇なのだそう。

撮影中の肉離れを押して松葉杖での登場となった行定監督だが、時に笑いを誘いながら大いに語っていただいた。監督も「基本的にフィルメックスは全部見たいんです」と期待を寄せる第11回東京フィルメックスは、いよいよ11月20日(土)開幕!


(取材・文:加々良美保、写真:村田まゆ)

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