『冷たい熱帯魚』舞台挨拶・Q&A
TOKYO FILMeX ( 2010年11月27日 18:30)
11月27日、有楽町朝日ホールにて特別招待作品『冷たい熱帯魚』が上映され、園子温監督を始め、出演者の方々も参加して舞台挨拶および上映後のQ&Aが行なわれた。本作は、第9回東京フィルメックスでアニエスベー・アワード(観客賞)を受賞し、翌年の日本映画界の話題をさらった『愛のむきだし』の園子温監督最新作。期待度の高さから多数の観客が詰めかけ、Q&Aでは客席から次々と質問が飛んだ。
上映前の舞台挨拶には園子温監督を始め、出演者の吹越満さん、でんでんさん、黒澤あすかさん、神楽坂恵さん、梶原ひかりさん、渡辺哲さんという総勢7名の豪華ゲストが登壇。それぞれが観客への挨拶と感謝の言葉を述べつつも、作品の内容を想像させる言葉が端々に顔を覗かせる。吹越さんが「今日のような天気の良い銀座の昼下がりに見るにはどうかな...という内容の映画を作りました。」と思わせぶりな言葉で笑いを取ると、渡辺さんからは野太い声で「鑑賞後15分ぐらい経ってから、周りの方に電話やメールして、宣伝してください」との忠告が。ただならぬ作品であることを匂わせる挨拶に続き、園監督が「みんな怖いと言ってますが、娯楽映画です。僕はいい映画だと自信を持ってます」と場を和ませたところで上映がスタート。
そして2時間半後。Q&Aでは、衝撃的な内容に興奮冷めやらない観客からの質問に園監督、吹越さん、でんでんさん、黒沢さんが答えてくれた。
まず、それぞれ凄まじい演技を披露してくれた出演者の方々がキャスティングの裏話を披露。気弱な熱帯魚店の店主、社本役の吹越さんは園監督とは顔見知りで、街角で挨拶した程度で出演が決まったとのこと。続いて、鬼気迫る演技で強烈な印象を残す村田役のでんでんさん。今まで"八百屋のオヤジ"のような役が多かったので、悪役を演じてみたかったというが、「数シーンぐらいの出番だろうと思って脚本を見たら、"あれ?すごい役を頂いちゃったな~"と...」。劇中とは打って変わった朗らかさで、会場の雰囲気を和ませた。園作品初出演となる黒沢さんは村田の妻、愛子役のオーディションに参加。数日待っても返事がなかったそうだが、「この役を演じるには、お腹を引き締める必要があると思って、出演が決まらないうちから"ビリーズブートキャンプ"を引っ張り出して鍛え直しました」と熱演の裏に秘められた意気込みを熱く語ってくれた。
続いて、制作の動機について「日本映画に欠けている、徹底的に救いのない映画を作ってみたいと思った」と語った園監督に質問が。実際の事件にヒントを得た映画だが、この点については、「実際に起きた3つぐらいの犯罪を参考にしました。それと、僕自身も詐欺師に大金を取られたことがあります。その時の経験を思い出しながら脚本を書きました。ただし、実際の事件をそのまま映画化することには、それほど興味が沸かないんですね。そこに、アクション映画としての面白さを加えたいと考えて、このような作品になりました」。
また、終始陰惨な展開が続く物語にもかかわらず、上映中、所々で笑いが起きたことについて、「実際の事件を調べてみると、極限状況のおかしさというものがあります。それを忠実に描けば笑いが起きるだろうとは予想していましたが、意図したものではありません」と、明かしてくれた。
本作は2011年1月29日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー公開。ヴェネチア国際映画祭ほか、世界中の映画祭を震撼させた衝撃的な物語を、ぜひその目で確かめてほしい。
(取材・文:井上健一、写真:村田まゆ)
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