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『翔んだカップル』トーク(ゲスト:鶴見辰吾さん)


TOKYO FILMeX (2011年11月21日 16:00)

1121tsurumi_01.jpg第12回東京フィルメックスの特集上映として東銀座・東劇にて開催中の「相米慎二のすべて〜1980-2001 全作品上映〜」、11月21日には相米慎二監督のデビュー作『翔んだカップル』(1980)の上映が行われた。上映後のトークには主演を務めた鶴見辰吾さんが登場。司会は長年助監督を務めてきた映画監督の榎戸耕史さん。


この作品をスクリーンで観たのは30年ぶりという鶴見さん。「いまだにドキドキしました...無計画というか、何も考えずに演技してるなあ、と」とやや興奮した様子で語った。
撮影当時は15歳。映画出演は初めてだったものの、「3年B組金八先生」などTVドラマで演技の経験を積んでいた鶴見さんだが、「監督には「金八先生」みたいに辛気くさい芝居はするな、と言われました(笑)」。
ソファの上でゴロゴロしたり、制服のネクタイを捻ったり...俳優たちはセットの中におとなしく座ってはいない。鶴見さんは「現場ではどんどん野放図になっていきましたね。たっぷり一日かけて1カットを撮影という現場で、緊張が削ぎ落とされていって、勝手に動けるようになっていきました。監督の指示は、抽象的なことばかり。「俺も分かんないから、お前自分で考えろ」って」と回想する。


1121tsurumi_02.jpg夜、大雨の中、傘を持って歩くシーンでも、求められたのは自由な動き。「若かったから、くるくる回してりゃいいと思って(笑)。監督には「お前、傘の芝居で日本一、ってのをやってみろ」と言われたんです。そういう言い方なんですよね。"ここで何歩歩いて、何秒後に振り返って..."なんていう具体的な指示はなくて、いつも役者に自分からひねり出させていた」


撮影が始まる前、鶴見さんが監督との初めての面談でまず訊かれたことは「お前、飯食うの速いか?」だったそう。「遅いって言ったら役をおろされると思って「はい」と答えた」というが、確かにこの映画には食事シーンが多い。鶴見さんは「今日観ていて、味が蘇ってきました」と懐かしそうに語った。「ラーメンライスの麺が伸びてたこととか、それから石原真理子演じる杉村と一緒に食べたステーキは旨かったな。もやし炒めを食べるシーンでは、最初はたくさんあったのに、延々とテイクを重ねているうちに美術さんが用意したもやしが無くなってしまって...(薬師丸)ひろ子ちゃんが、自分の食べる分をセーブして僕の分を確保しながら演技していたのを覚えていますね。これ食べ終わったらもうもやし無いですよ!って(笑)」と、現場のアットホームな様子を垣間見せるエピソードを披露した。


1121tsurumi_03.jpg時に演じる俳優に苦痛を強いながら、ゆっくりと時間をかけて俳優の演技をひきだしていく相米監督の演出だが、鶴見さんは「これが映画初出演だったから、映画ってこういうもんなんだ、って思った」そうだ。「その後出た映画では、いやにスパスパ撮ってくなあと逆に物足りないくらい。若い俳優がかかってしまう"相米病"ってやつで...あの現場を経験すると、他の現場で消化不良に陥ってしまうんですよね」


"相米病"のいわば最初の患者となった鶴見さんは、その後5作目の『台風クラブ』(85)と、遺作『風花』(01)にも出演している。『風花』では小泉今日子さん演じるヒロインの死んだ夫を演じた。「最初はもっと暴力亭主だったんですが、「お前は最近乱暴者の役が多いから」と、(良い夫役に)書き換えられました(笑)」
「相米作品は年代ごとに変化していったとよく言われますが、初期、中期、後期の3作品に出演されて、変化は感じましたか?」と榎戸さんが問いかけると、「僕自身も演じ手として変わっていったし、監督の僕への接し方も変わっていったから、違いは確かにあった。でも、表現したいこととか作り方とか、根っこの部分は変わってないと感じました」と鶴見さん。


最後に、「ズバリ、相米監督の魅力は?」という榎戸さんの質問に、鶴見さんは「相米さんは、僕の知ってる唯一の芸術家。人間関係において作品作りにおいても裏表がない。信念をがむしゃらに貫いていく、ってところはないんだけど、いつのまにか"自分の作品"をスルッと撮っちゃう人。不思議な人ですよね」と感慨深げに語った。


30年まえのご自分の演技に「今ではこんな自由な動きはできないな...」としきりに感心した様子だった鶴見さん。「亡くなって十年経ちましたが、これからも皆さんに相米作品を観ていってほしい」という榎戸さんの言葉に鶴見さんも深く頷いて、「本当に面白いシーンがたくさんありますからね。今回の13作品上映という企画はほんとうにすごい。みなさん、どんどん他の作品も観てください」と会場に呼びかけ、トークイベントは終了となった。


(取材・文:花房佳代、撮影:永島聡子)

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